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『初場所 中目黒』50席が昼も夜も満席! 現代版「普通の居酒屋」成功の道筋

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スタッフは常時5~6人。客層は一人客からグループ客まで幅広く、世代もさまざま

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「一番ではなく、日常の店になりたい」

「王道の居酒屋」で、勝つために必要なものは何か。『初場所 中目黒』の場合、「風通しのよい交差点の一角で、間口が広く、いろいろな方向からお客さんを集められるという物件の強みに加えて、料理が美味しい、サービスも金額もそこそこ、という総合評価の高さ」だと吉利氏は説明する。

「一個の強力な強みはないが、細かいものの積み重ねがうちの強み。居酒屋の需要は絶対になくならないと思っていますが、映えの要素はないので(笑)、苦戦するのはわかっていたし難しい挑戦をしていると自覚しています」。それでも居酒屋にこだわるのは、人が集う酒場が発するエネルギーに惹かれるからだという。

「傍から見て『面倒なことやってるな』って店にお客さんは集まると思うんです。『初場所 中目黒』は、ハコが大きいからこそスタッフをまかなうことができて、多くのお客さんを集められる。いわば未来への投資です。『今年、一番よかった店どこ?』って聞かれたときに答えるのはうちじゃなくていいけど、『なんだかんだ一番行ったな』という店になりたい」

頻繁に替えのきかないメニュー札は「これで勝負する」という覚悟の表れでもある

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『初場所 中目黒』の強みは、人材でもある。近藤商会では創業当初から労働環境をしっかり整え、店長に依存しないオペレーションを磨き上げてきた。

「従業員は年間100日以上の休日を確保し、シフトは2勤制で、店長も休憩含めて1日9時間労働を徹底。時間外手当も出しています」。毎年、アルバイトから社員になるスタッフも多く、いまは1店舗に社員が5人くらいと手厚い状態。この人材があるからこそ、さらなる出店も可能になるという。

「コースのみ&シェフとバイト1人」の会員制レストランで新たな挑戦も

「居酒屋業態にとって、昨今の物価高騰や人件費の負担は大きく、これまでのような薄利多売のビジネスモデルは成立しません。弊社も、この先の居酒屋のスタンダードな利益の出し方を再設計しているところです」と吉利氏。

そうした改革の一つとして、2023年4月には、渋谷に会員制のレストラン『capovoro(カポボロ)』をオープンさせた。メニューはおまかせコースのみ、シェフとアルバイト1人で運営するので食材ロスもなく、生産性が高い。さらに、6月に出店した『初場所 祐天寺』では、同じ屋号ながら席数をぐっと絞り、本格的な日本料理を主軸に客単価5,000円で勝負する。「今後は、既存店をスリム化して利益構造を高めつつ、新しいチャレンジも続けていきたい」と吉利氏。居酒屋の未来を占う、近藤商会の新たな店づくりから今後も目が離せない。

『初場所 中目黒』
住所/東京都目黒区青葉台1-27-1 青葉台Aハウス101
電話/03-6770-3354
営業時間/昼の部11:30〜15:00(L.O.14:30)、夜の部15:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日/なし
席数/50

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/