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飲食店の評価法めぐる食べログ訴訟、カカクコムが逆転勝訴。アルゴリズム変更に合理性を認める

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グルメサイト「食べログ」において、店舗の評価が不当に下がり売上減少につながったとして、焼き肉チェーン運営会社の韓流村が「食べログ」運営会社のカカクコムを提訴した訴訟について、控訴審ではカカクコム側の逆転勝訴となった。一審の判決もふまえ、今回の判決の概要を紹介する。

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韓流村がカカクコムを提訴した経緯

2019年5月、グルメサイト「食べログ」が評価点算出のアルゴリズムを変更し、焼き肉チェーン運営会社・韓流村が経営する焼き肉店『KollaBo(コラボ)』を含む、“チェーン店認定”された飲食店の評価が下がった。これによって売上が減少したとして、韓流村は2020年5月にカカクコムを提訴した。

韓流村の資料によれば、国内最大のグルメサイト「食べログ」の2019年3月時点での月間サイト訪問者数は7,000万人超えであり、「食べログ」のアルゴリズム変更により『KollaBo』の食べログ経由の月間平均来客数は変更前より6,000人以上減少したという。韓流村は「食べログ」のアルゴリズム変更が、独占禁止法が禁じる「差別的取り扱い」や「優越的地位の乱用」に当たると主張し、カカクコム側に約6億3900万円の損害賠償や、変更後のアルゴリズムの使用差し止めなどを求めた。

一方、カカクコムは、「食べログ」のアルゴリズムの変更はチェーン店を飲食店市場から締め出すほどの効果はなく、独占禁止法が禁じる「差別的取り扱い」の違反には当たらないと反論。「優越的地位の乱用」についても、カカクコムが韓流村より優位にあるとはいえないと主張した。

2022年6月の一審で東京地裁は、アルゴリズム変更は「優越的な地位の乱用」にあたると認定し、カカクコムに対して3,840万円の賠償を命じた。ただし、「評点は消費者による店選びにおける唯一の指標ではない」として、変更後のアルゴリズムの使用差し止めは認めなかった。

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一転、控訴審ではカカクコムが逆転勝訴

一審の判決に対して、カカクコムは即日控訴。2024年1月19日に行われた控訴審判決で、高裁は一審判決を取り消し、カカクコムの逆転勝訴となった。

一審・二審ともに、争点はアルゴリズム変更の妥当性。控訴審では、アルゴリズムの変更は韓流村にとって不利な扱いだったとしながらも、不正な口コミなどへの対処として合理性があり、独占禁止法違反には当たらないと判断された。

一方で、カカクコム側は優越的な地位を利用して不利益な取引を実施したとも認定された。ただ、アルゴリズムの変更や評価点の変動があることはサイト上で公表されていることから、飲食店側で認識できたとも指摘しており、独禁法違反となる「正常な商習慣に照らして不当な不利益」には当たらないという判決となった。

敗訴した韓流村側は、社長の任和彬氏が会見を行い、「衝撃的な判決」と話した。控訴審判決は健全な市場競争を著しく困難にするとし、最高裁に上告する方針も示している。

今回の控訴審では、アルゴリズムの変更に合理性はあるとしつつ、飲食店にとって不利益な取引だとも認められた。韓流村が上告した場合の最高裁判決が注目される。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com