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溝の口『中ノ食堂』、ナチュラルワインを武器に客単価1.5倍に【連載:居酒屋の輪】

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溝の口『中ノ食堂』など3店舗を運営する株式会社ビックスルー代表の佐藤大介さん

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繁盛している居酒屋はどこかで必ずつながっている。名店誕生までのストーリーを探りつつ、また別の新しい名店を紹介してもらう連載企画。前回登場『串かつ男/男おでん』伊藤守さんが尊敬する株式会社ベイシックスの代表・岩澤博社長の思いを受け継ぐ経営者がいると聞き、今回は東急田園都市線の溝の口駅へと向かった。

岩澤社長と言えば『ジョウモン』『ごりょんさん』『oh 釜 bar』など、居酒屋ブランドを次々とヒットさせているトップランナーのひとり。多くの若手経営者も輩出しており、なかでも暖簾分け1号店を任されたというのが、今回お話をうかがう佐藤大介さんなのだ。

【注目記事】「こんな店が欲しかった」を追求する繁盛店。経堂『今日どう?』の店づくり戦略

駅前ランドマーク『ノクティプラザ』裏手にある駐車場。その更に裏手のビルの中心に『中ノ食堂』がある

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繁盛店を経営しながらの原点回帰

2015年に『ジョウモン 溝の口店』で独立を果たし、坪月商60万円を売り上げる繁盛店にまで成長させた佐藤さん。2018年には、炉端焼きを軸に古き良き田舎の魅力を再現した2店舗目『炉ばた 灯台』をオープン。親子三世代でくつろげる空間でありながら、上質な料理で食通たちからも評判を集め、食べログの星3.5以上を獲得するなど、こちらも溝の口を代表する人気居酒屋となっている。

コロナ禍である2021年に誕生した3店舗目『中ノ食堂』は、約1年間の休業を経て2024年1月にリニューアルオープンしたばかり。そこには蒸す、焼く、炊くと、洗練された所作で調理すべてを担当しながら、ゲストたちとナチュラルワインの話題で盛り上がる佐藤さんの姿があった。

かまど型の蒸し器やコンパクトな炭焼き台などが並ぶオープンキッチン

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「きちんとスタッフが育てば、次第に僕がいなくても現場は回るようになります。今後は経営者としての仕事に注力する道もありましたが、やはり現場に立ち返って、本当にやりたいことを実現したかったんです」

そう語る佐藤さんの大きな転機となったのが、山形県のワイナリー「Grape Republic(グレープ リパブリック)」での収穫体験だ。除草剤や殺虫剤だけでなく肥料も不使用という自然農園には、ワインに人生をかける生産者の姿があった。

「現場で畑仕事の手伝いをしたのですが、生産者さんが、もう、たまらなく素敵なんです。葡萄一粒にかける情熱がものすごくて、例えば農薬を使用していないから虫を取るのも手作業で『このワイン1本のためにどれだけの労力がかかっているだ』と感銘を受けました」

生産者へのリスペクトと共に、現場に立ち返って「こういった素晴らしいナチュラルワインを溝の口にも広めたい」という思いがこみ上げてきたという。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。