あと画像 焼肉屋の開業資金はいくら?繁盛店を作る仕入れの極意と失敗回避の全知識
2025年12月25日
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焼肉業態は強力なダクト設備や専用の厨房機器が必要なため、他の飲食店よりも開業ハードルが高くなりがちです。ただし、長期的に安定した高収益を狙える魅力的なビジネスでもあります。
この記事では、具体的な収支シミュレーションと必須設備リストをもとに、あなたの開業を成功へ導くロードマップを解説します。
この記事は、焼肉店開業に向けて具体的に動き出したい以下の人におすすめです。
・焼肉店の開業資金(初期費用・運転資金)の相場を知りたい方
・「一人焼肉」や「小規模店」での独立を検討している方
・失敗しないための物件選びや、肉の仕入れルート確保の方法を知りたい方
・飲食店経営に必要な資格や許可申請の流れを把握したい方
目次
焼肉屋開業までに必要な期間と流れ
焼肉屋の開業における一般的な準備期間は、物件探しからオープンまで含めて6ヶ月から1年程度を見込んでおきましょう。
焼肉店は物件取得と設備選定、特にダクトやロースターの決定を同時並行で進めることが求められ、通常の飲食店以上に複雑な設備計画が必要です。特に重飲食可能な物件は競争率が高く、理想の箱が見つかるまでに時間がかかるケースも少なくありません。
ここでは構想からオープンまでの標準的な流れを解説します。
コンセプトとターゲットの明確化
まずは「誰に」「どんな商品(お肉)を」「どう楽しんでもらうか」というコンセプトを固めます。これが内装デザインや必要な坪数、設備投資額を決定づける土台となります。
ファミリー層をターゲットにするなら、子供連れでも安心できるボックス席や広い動線が必要となり、20坪以上の広さが求められます。一方、ビジネス街で会社員を狙うなら、個室重視や高級感のある内装が好まれます。
コンセプトが曖昧なまま物件を探すと、後から「席が作れない」「排気が追いつかない」といったトラブルに直結するため注意が必要です。
■需要急増中!「ひとり焼肉」特有の開業ポイント
近年トレンドとなっている「一人焼肉専門店」は、アフターコロナ時代や個食ニーズの高まりにより注目されています。一般的な焼肉店と比較して、省スペース・高回転で、カウンター席メインのため10坪程度の小規模物件でも開業可能。回転率を上げることで薄利多売モデルが成立します。
一人焼肉の場合、2席で1つのロースターを共有するペアシート型にするか、完全個食型にするかでダクト工事の費用も変わってきます。ターゲットに合わせて慎重に設計しましょう。
物件探しと資金調達のタイミング
物件探しと資金調達は密接に関係しています。日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けるには、具体的な創業計画書とともに「内装・設備の見積もり」が必要になるからです。
つまり、物件を仮押さえした段階で、すぐに内装業者や厨房機器メーカーに入ってもらい、見積もりを作成する必要があります。特に焼肉店の場合、物件契約前に必ず確認すべきなのが「排気許容量」と「電気・ガス容量」です。排煙設備を屋上に設置できるか、近隣への臭い対策は可能かなど、専門業者による現地調査なしに契約を進めるのは危険です。
また、資金調達においては融資だけでなく補助金・助成金の活用も検討しましょう。
・事業再構築補助金
業態転換などで大規模な投資を行う場合。
・小規模事業者持続化補助金
販路開拓や広告宣伝費に使える場合も。
これらは募集タイミングや要件が細かく定められているため、早めに専門家(税理士や行政書士)へ相談することをおすすめします。
飲食店の開業に使える補助金・助成金については以下の記事でも詳しく解説しています。
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焼肉屋の開業資金と収支シミュレーション
最も気になる「お金」の話です。初期費用だけでなく、実際に営業を始めた後の月次の利益構造(PL)を具体的なモデルケースで算出しました。
焼肉店の初期投資額は、物件の状態に大きく左右されます。ここでは、15坪程度の小規模店を想定した初期費用の内訳目安を紹介します。
【初期費用内訳目安(15坪・小規模店の場合)】
| 項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 200万〜300万円 | 保証金(10ヶ月分)、礼金、仲介手数料など |
| 内装工事費 | 500万〜800万円 | 坪単価50万〜80万円(排気ダクト工事含む)※居抜きなら圧縮可 |
| 厨房機器・設備費 | 200万〜300万円 | ロースター、コールドテーブル、ストッカー等 |
| 備品・広告費 | 50万〜100万円 | 看板、メニュー表、食器、レジシステム等 |
| 運転資金 | 150万〜300万円 | 開業後3〜6ヶ月分の固定費 |
| 合計 | 1,100万〜1,800万円 | ※物件状態により大きく変動します |
次に、実際に営業を開始してからの月間収支モデルを見てみましょう。
「15坪・20席・客単価5,000円」の小規模焼肉店を想定しています。
【月間収支シミュレーションモデル(25日営業)】
| 項目 | 金額・比率 | 解説 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,750,000円 | 20席 × 1.5回転 × 5,000円 × 25日 |
| 売上原価 | 1,425,000円 (38%) | 焼肉は肉の原価が高いため35〜40%が目安 |
| 人件費 | 825,000円 (22%) | 客が調理するため20〜25%に抑制可能 |
| 家賃・共益費 | 300,000円 (8%) | 坪単価2万円と想定 |
| 水道光熱費 | 262,500円 (7%) | ロースターや空調稼働のため高め |
| その他経費 | 187,500円 (5%) | 広告宣伝費、消耗品費など |
| 営業利益 | 750,000円 (20%) | FLコスト(※)60%でも利益確保が可能 |
このシミュレーションから分かる通り、焼肉ビジネスの最大の特徴は「原価率が高くても利益が出る」という点です。通常、飲食店の原価率は30%が目安ですが、焼肉店は35〜40%かけて質の良い肉を提供しても、お客様が自分で焼くスタイルのため厨房スタッフやホールスタッフの手間が減り、人件費を低く抑えることができます。
※FLコスト…「Food(食材費)」と「Labor(人件費)」の合計金額のことで、店舗の収益性を測る主要指標
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失敗しない厨房機器・設備選び
焼肉屋の命運を分けるのが設備選びです。ここでは、無煙ロースターをはじめとする焼肉店特有の必須アイテムをリストアップし、選び方のポイントを解説します。
特にロースターの種類(ダクト式か無煙式か)によって、必要な工事費や選べる物件の条件が激変します。
焼肉店特有の「必須設備チェックリスト」
これがないと営業できない主要機器を一覧にしました。見積もりを取る際の参考にしてください。
【焼肉店 必須設備リスト】
・無煙ロースター(上引き・下引き):煙を吸い込む焼肉店の心臓部。
・コールドテーブル:肉を適温で保管しながら作業台としても使用。
・ストッカー(冷凍庫):仕入れたブロック肉などを保管するために必須。
・ミートスライサー:肉を均一な厚さに素早くカットするための専用機器。
・真空包装機:余った肉の酸化を防ぎ、ロスを削減するために重要。
・グリーストラップ:脂を多く使うため、重飲食対応の容量が必要。
ロースターの種類とコストの違い
ロースターには主に炭火、ガス、電気の3種類があり、それぞれコストや味に特徴があります。
1.炭火式(七輪など)
遠赤外線効果で肉が美味しく焼けるため、集客面で有利です。しかし、炭の火起こしや後片付けの手間がかかるほか、炭代というランニングコストが発生します。
2.ガス式
火力が安定しており、点火や温度調整が簡単でオペレーションが楽です。ランニングコストも比較的安価で、多くの焼肉チェーンで採用されています。
3.電気式
ガスや炭火が使えない物件でも導入可能です。熱源が安定していますが、火力や「焼き味」の面でガスや炭に劣ると感じる顧客もいます。
読者の中には「炭火の方が美味しいけれど、管理が大変そう」と迷う方もいるでしょう。開業初心者の場合、オペレーションを簡素化できるガス式や、炭火風のガスロースターを選ぶのも賢い選択です。
質の高い肉を安定して仕入れるルート開拓
設備と同じくらい重要なのが「肉の仕入れ」です。どんなに良い店を作っても、肉の質が悪ければ客は離れます。安定的な仕入れルートの確保方法を解説します。
結論から言うと、個人がいきなり牧場と直接契約(牧場直送)を結ぶのは非常にハードルが高いです。まずは信頼できる「食肉卸業者」との関係構築がカギとなります。
どうやって業者を探せばいいのか迷う場合は、以下の方法を検討してみましょう。
1.フード系の展示会に参加する
多くの卸業者がブースを出しており、試食をしながら商談ができます。
2.地域の卸業者リストを活用する
地元のタウンページやネット検索で食肉卸を探し、直接問い合わせて「開業予定であること」を伝えます。
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焼き肉店は個人開業か、フランチャイズ(FC)加盟か?
仕入れや経営ノウハウに不安がある場合、フランチャイズ(FC)への加盟も有力な選択肢です。それぞれの特徴を比較しました。
| 比較項目 | 個人開業 | フランチャイズ(FC)加盟 |
|---|---|---|
| 開業資金 | 比較的抑えやすい | 加盟金・保証金が必要なため高くなる傾向 |
| 仕入れ | 自分で開拓・交渉が必要 | 本部の一括仕入れを利用可能(安定品質・価格) |
| メニュー開発 | 自由(独自性を出せる) | 本部指定(自由度は低い) |
| 経営ノウハウ | 自分で学ぶ必要がある | 研修制度やマニュアルが完備されている |
| ロイヤリティ | なし | 売上の数%を毎月支払う必要あり |
| 向いている人 | オリジナリティを追求したい人 | 未経験から手堅く経営したい人 |
FC加盟の最大のメリットは「仕入れルートの確保」と「ブランド力」ですが、毎月のロイヤリティが発生するため、利益率は個人店より低くなる傾向があります。自身の資金力と目指すスタイルに合わせて選びましょう。
焼肉屋向け物件の選び方と家賃相場
焼肉屋は「重飲食」に分類され、出店できる物件が限られます。ここでは「飲食店ドットコム」のデータに基づき、狙い目のエリアや家賃の目安を解説します。
焼肉店は煙や臭い、油汚れが発生しやすいため、軽飲食(カフェ等)に比べて物件の選択肢が狭まります。排煙・排臭トラブルを避けるため、排気ダクトを屋上まで上げられる物件や、近隣への影響が少ない空中階などが狙い目です。
都内や主要都市の重飲食可能物件の相場感としては、エリアにもよりますが坪単価2万円〜3万円前後が一つの目安となります。もちろん、一等地であればそれ以上になりますが、焼肉は「目的来店型(その店に行くことを目的に来る)」の要素が強いため、必ずしも駅前1階の超一等地である必要はありません。少し駅から離れていても、家賃を抑えて肉の質にお金をかける戦略が有効です。
(※最新のエリア別平均坪単価や物件情報は、物件タイムズの検索機能をご活用ください)
「居抜き物件」のメリットと注意点
焼肉店の開業において、「居抜き物件」は初期費用を数百万単位で節約できる強力な選択肢です。以前の店が残したダクト、防水床、グリーストラップなどがそのまま使えれば、スケルトンからの工事に比べて大幅にコストダウンできます。
ただし、「前の店が潰れた場所でも大丈夫?」と不安に思うかもしれません。前の店が撤退した理由が「立地の悪さ」ではなく、「味やサービス、コンセプトの問題」であれば、十分に勝機はあります。
注意点として、居抜き物件の場合はダクトやファンといった設備の状態を必ずチェックしてください。油が蓄積して機能が低下している場合、高額な洗浄費用や交換費用がかかることがあります。
失敗事例から学ぶ、廃業しないための鉄則
多くの飲食店が開業から3年以内に廃業しています。ここでは、特に焼肉屋が陥りやすい典型的な失敗パターンとその対策を学びます。生存のカギは「資金管理」と「コンセプトの整合性」にあります。
初期投資をかけすぎて回収不能になる
内装にお金をかけすぎて初期費用が膨らみ、毎月の返済額が大きくなって首が回らなくなるのが典型的な失敗パターンです。
豪華な内装は魅力的ですが、売上予測を甘く見積もるのは危険です。FLコスト(食材費+人件費)に家賃と返済額を加えたトータルコストで利益が出るかをシビアに計算しましょう。一般的に、FLコストが売上の60%を超え、さらに家賃比率が高いと経営危機に陥りやすくなります。無理のない資金計画のために、見栄を張らずに居抜き物件を活用することも検討してください。
コンセプトと立地のミスマッチ
「ターゲットがいない場所」に出店してしまうのも飲食店の致命傷になります。
例えば、学生が多い安価な飲食店街に「高級和牛専門店」を出しても飛び込みの集客は見込めませんし、ファミリー層を狙っているのに「駐車場がない」「席が狭い」という物件ではリピーターがつきません。
自分の売りたい肉やお店の雰囲気と、そのエリアにいる人々の属性が合致しているか、徹底的な商圏分析が必要です。
開業に必要な資格と届出
お店を開くために法的に必要な許可や資格をまとめました。漏れがあるとオープン日が遅れるため、早めの確認が必要です。特に焼肉店は火を扱うため、消防署への届出が非常に重要になります。
【主な届出・資格一覧】
| 届出・資格名 | 提出先・取得方法 | タイミング・備考 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者 | 保健所(講習受講) | 開業までに1名以上取得が必要。 |
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 内装工事完了後、検査を受けて取得。 |
| 防火対象物使用開始届 | 消防署 | 使用開始の7日前までに提出。 |
| 火を使用する設備等の設置届 | 消防署 | 厨房機器設置前に届け出が必要な場合あり。 |
| 深夜酒類提供飲食店営業届 | 警察署 | 深夜0時以降にお酒を提供する場合に必要。 |
【参照】厚生労働省「食品衛生法の改正について」、総務省消防庁「防火対象物の使用開始の届出をしよう」
Q&A
Q1. 焼肉店の開業に調理師免許は必要ですか?
A1. 必須ではありません。開業に最低限必要なのは「食品衛生責任者」の資格です。これは1日程度の講習を受ければ取得可能です。ただし、肉のカットや筋切りなど専門的な技術は必要となるため、経験がない場合は修行や研修をおすすめします。
Q2. 自己資金はどれくらい用意すればよいですか?
A2. 一般的に、総開業資金の1/3から1/2程度は自己資金で用意するのが理想です。例えば1,000万円で開業する場合、300万〜500万円が目安です。日本政策金融公庫などの融資を受ける際も、自己資金の有無は審査の重要なポイントになります。
Q3. 一人焼肉(ワンオペ)で開業する場合の注意点は?
A3. オペレーションの効率化が最優先です。券売機やセルフオーダーシステムの導入、カウンター越しにすぐ提供できる動線設計など、一人でも回せる仕組み作りが不可欠です。また、片付けの手間を減らす使い捨て網の利用なども検討しましょう。
Q4. 居抜き物件とスケルトン、どちらがおすすめですか?
A4. 資金に余裕があり、内装やレイアウトにこだわりたいならスケルトンですが、初期費用を抑えて早期回収を目指すなら居抜き物件がおすすめです。特に初めての開業では、リスクヘッジの観点から居抜き物件を選ぶ方が安全と言えます。
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