ユッケは良いが、牛レバーはNG。飲食店が生食用として提供できる肉の種類とは？

鮮やかな色合いが、食欲をそそる生肉メニュー。SNS映えすることもあり、取り入れたいと考えている飲食店も多いのではないでしょうか。しかし肉の種類や部位によっては、そもそも生食用として提供することが禁止されているものがあります。そこで今回は、改めて飲食店が生食用として提供できる食肉の種類や部位、提供時の注意点を解説します。

日本では、2011年に発生した焼肉店の食中毒事件を受け、生食用食肉の法規制が行われました。食品衛生法により、2012年から牛レバー、2015年から豚肉の生食用としての提供・販売が禁止されています。違反した場合は罰則（2年以下の懲役または200万円以下の罰金）があり、実際に生レバーを提供した焼肉店の経営者が逮捕される事件もありました。

しかし、全ての生肉の提供が禁じられているわけではありません。肉の種類や部位によっては、生食用としての提供ができます。例えば、牛肉（内臓を除く）は、生食用として販売・提供するための基準があり、基準を満たしたものについては、飲食店でも提供が可能です。つまり、飲食店がユッケや牛刺し、牛タタキ、タルタルステーキといった生肉メニューを出したい場合、生食用として提供するための規則を遵守しなければなりません。また、馬肉や馬レバーも生食用の衛生基準があり、それに従っているものは飲食店でも提供できます。

鶏肉については、鹿児島県や宮崎県といった鳥刺しを食べる文化のある一部の自治体では生食のための衛生基準が定められています。しかし、国として何らかの規制があるわけではありません。生の鶏肉には、カンピロバクターなど食中毒の原因となる菌が付着している可能性があり、たとえ新鮮であっても安全に食べられるわけではありません。生食による食中毒の危険性が高いことから、自治体などが鶏肉を生食や半生で提供するのを控えるよう注意喚起をしている状況です。

飲食店が生食用として、牛肉（内臓を除く）や馬肉、馬レバーをお客様に提供する際は、定められた基準に則る必要があります。ここからは、生食用食肉を提供するときに飲食店が気を付けたいポイントをいくつかご紹介します。

■仕入れ

そもそも飲食店が生食用として提供する食肉は、「生食用食肉」である必要があります。生食用ではない食肉を生食用として出すことはできません。生食用食肉としての規格が満たされているものを仕入れ、提供してください。

■調理

生食用食肉の調理には、専用の調理スペースや消毒設備が必要です。専用の包丁やまな板などを使って調理をし、すぐに提供するようにしましょう。調理に使用した器具は、83℃以上のお湯で消毒してください。また、生食用食肉の調理は、食品衛生管理者など生食用食肉の調理を許可された資格を持つ人が行います。資格保有者の監督下であればほかの人も調理できますが、監督者が不在の場合は調理することができません。

■保存

生食用食肉を保存は、4℃以下で行います。冷凍のものは、-15℃以下で保存をしてください。

■店舗への表示

飲食店が生食用食肉を提供する際は、食中毒のリスク等を店舗に表示しなければなりません。「肉を生で食べることは食中毒の危険性が伴う」、「子供や高齢者など、食中毒への抵抗力が弱い方は肉を生で食べることを控えるべき」ということについて、店頭やメニューなどわかりやすい場所に表示してください。

食肉の生食は、根強いファンが多く、人気もあります。一方で、飲食店が提供するにはさまざまなルールを守る必要があるのです。安易な気持ちで規則を破ると、罰則を受けるのはもちろん、大切なお客様を危険にさらしてしまうことにもなります。これから食肉の生食提供を行いたいと考えている飲食店は、改めて食の安全を守るということを意識し、規則を十分に把握した上で提供するようにしましょう。

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