飲食店ドットコムのサービス

「食べること」のこれからを考える。EAT GOODは飲食店の新たなトレンドになるのか!?

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

日々進化し続ける「食べること」の意味

かつて、人は生きるために食べていた。しかし、溢れるほど物に囲まれた現代社会において、「食べること」の意味はもはやひとつではなくなってきた。健康や美容をはじめとした、さまざまな要素と絡み合いながら、食文化はいくつもの進化を繰り返し、こうしている今も新たな流行が生まれ続けている。

大量生産と大量消費のうねりの中で、幾度となく行われてきた“食の再考”。今回はここ数年話題になっている食にまつわるキーワードを辿りながら、今新たなタームを迎えつつある「食べること」について考えてみたい。

社会問題によって変化する食の価値観

まずはここ数年の間で話題となり、食文化として定着してきたキーワードを紹介していきたい。

■食育
現在では耳なじみの良い「食育」という言葉だがその起源は古い。明治時代の医師・石塚左玄が自らの著書の中で「体育知育才育は即ち食育なり」と記し、さまざまな“学び”の基礎として、食の重要性を説いたことが始まりだとされている。

現代の「食育」もこの考えを基本としており、2005年に施工された食育基本法では、“食は、知育・徳育・体育の基礎となるべきもの”と説明。また“健全な食生活を実践できる人間を育てる”ことを「食育」の大きな目的として掲げ、国をあげて対策に取り組んでいるのも特徴だ。そのため「食育」には、食品の安全性や、食品表示、食と農との関わりなど、食にまつわる知識を身につけるという教育的な意味合いが強く含まれている。

■フードロス、フードバンク
2011年にFAO国際連合食糧農業機関が発表した『世界の食料ロスと食料廃棄-その規模、原因および防止策-』によると、世界の食糧生産量のおよそ3分の1が何らかの理由で廃棄されているという。このショッキングな結果は“フードロス”という言葉とともに社会に警鐘を鳴らし、問題提起や改善への取り組みなど、今日にいたるまでさまざまな試みがなされている。

一方フードバンクは、2000年頃から普及し始めた活動で、まだ食べられるのに廃棄される食品を個人や食品関連企業から集め、福祉団体や経済的理由で食料を必要としている家庭に届けることでフードロス軽減を目指している。

ライフスタイルを表現するための「食」

■マクロビオティック
東洋の陰陽医学をベースとした食事法。玄米や雑穀など精製されていない主食、有機農法や自然農法による野菜の使用、嗜好品や肉類、卵、乳製品の摂取を避けるなど、食生活と食事法について具体的な指針がある。そのなかには、地元で採れたものを地元で消費する「地産地消」の考え方や、旬の食材を摂取することの推奨なども含まれ、健康を目的とした食事法である一方、食をとりまく環境や自然との融和を目指すという精神的な側面もある。

■ロハス
「Lifestyles of Health and Sustainability」の略。食生活に限ったものではなく、心と体、そしてそれをとりまく環境にとってよりよい生活を送ることを指す概念。日本では2000年代に入ってから注目され始めた。そのライフスタイルの中に食生活の側面もあり、例えば、オーガニック食品を積極的に摂取することや、スローフード、地産地消などを推奨している。

「EAT GOOD」が飲食業界の新たなトレンドに?

ここ数年の間に話題となった食文化をいくつか紹介したが、ここからは今後の飲食業界のトレンドになり得る、新たな価値観を紹介したい。

■EAT GOOD
現在、“食の再考”のキーワードとして注目を集めているのがこの言葉。“良いを食べる”というシンプルかつ分かりやすい考え方を提唱したのは、飲食企業の株式会社エピエリだ。具体的にはどのような考え方なのだろうか? 同社のHPから「EAT GOOD」を実現するための取り組みについていくつか抜粋して紹介したい。

・丹誠込めて作られた生産者の方、そして物事の背景を想像する
・おいしい一皿への出発地点となる食材に対して感謝のこころを持つ
・素材を大切に扱い、素材そのものが生かされる調理法、プレゼンテーションをもって料理を提供する
・毎日食べ続けられる安全な食材にこだわり、作り手の顔が見える農園から仕入れを行う
・既製品に頼ることなく、出来る限り手作りのものを提供する

生産者の顔が見える食材を扱い、丁寧に調理してゲストに提供する。その過程で生まれる人と人との繋がりを大切にし、食材へのリスペクトを忘れない。エピエリの提唱する「EAT GOOD」とは、このようなことを指すのだろう。

これらの考え方・取り組みをすでに実践している飲食店も多いはずだ。しかし「EAT GOOD」というわかりやすい言葉を掲げ、それを深く実践するエピエリの存在は、飲食業界のみならずメディアにも強い影響を与え始めている。これまで一部の飲食店で実践されていたこの考え方は、多くの人から共感を得られる価値観となる、そんな予感を感じずにはいられない。

こうして「食べること」をとりまく考え方を挙げてみると、2000年代に入る頃から、健康や美容といった自己改善だけでなく、社会や自然、次世代へ残したい未来への責任といった環境改善へと目的意識が高まってきているように感じる。それぞれが提唱してきた「食べること」への考え方が、より現代的な進歩を遂げ、いま最もシンプルかつ無理のないかたちとして「EAT GOOD」に辿り着いたことは、ある意味自然な流れなのかもしれない。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。