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東北沢『ジビヱ 岸井家』、イタリアンの名手が住宅街にワンオペレストランを開業するまで

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「猪バラのグリル」。岸井シェフのスペシャリテ

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ワンオペでやるならば、必要な厨房備品をしっかりと揃える

冷蔵庫も食洗機も製氷機も前オーナーが設置してから10年以上が経っていた。オーブン内蔵のガスコンロは前の前のスペイン料理のオーナーが付けたものだ。モロッコ料理のオーナーシェフはオーブンを使っていなかった。その証拠に、ガスオーブンは書類入れになっていた。銀行に提出した見積もりには、スチコンの費用も入っていた。しかし、物理的に置けないことから断念した。

「スチコンは蒸気が出るため、ダクトが必要。スチコン用にダクトを設置できないことから諦めました」

その代わりに一般家庭用のオーブンレンジを購入。これでパンやアンクルートを焼いている。

注文後10分程で提供できる「猪バラのグリル」にもワンオペで回せるように考えたノウハウが生かさせている

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「そのほか、ワインセラーとスライサーに加え、ワンオペに欠かせない低温調理器、真空梱包機を導入しました。猪のロースハムやウサギのコンフィは低温調理器で調理しています」

たとえば、「ウサギのコンフィ」は、一晩冷蔵庫でマリネしたウサギのもも肉を香草などと一緒に真空パック。低温調理器で火入れしている。「猪バラのグリル」はソミュール液に一晩漬けたものを、ゆでて角煮のようにしたものを真空パック後、冷凍する。オーダーが入ったら袋ごと湯煎し、解凍。バーナーで炙って提供する。

「真空梱包機と低温調理器があれば仕込みの間、ほかの仕事をすることができるので、ワンオペでも十分やっていけます」

「低温調理器は、電源があればどこでも使えるので重宝しています」と岸井シェフ

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効率よりもお客に寛いでもらうことを優先させた

平日は18時から、土日祝日は17時から営業。ともにコース料理でもアラカルトでも頼める。取材に伺ったのは、オープンから2か月目の11月上旬。まだワンオペに慣れていないこともあり、「1回転しかできない」と告白する。

食洗機にかけられる丈夫なワイングラスを50脚揃えた。とはいえ洗浄後、グラスを拭き上げなければならないし、カウンターを掃除しなければならない。2回転目のお客を迎え入れるまでに1時間程度かかる。2回転させたいところだが、効率よりももっと優先させなければならないことがあるという。

「パテアンクルート」。アライグマ、鴨、猪を用いた岸井シェフのスペシャリテ

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「ジビエをゆっくり召し上がってもらうには、滞在時間は3時間を超えます。2回転させるよりももっと寛いで食事をしていただき、『肉が美味しいからワインをもう1本開けようか』と思ってもらえるような店にしていくつもりです」

より寛いでもらえるように、11席だったところを8席にしたというのだ。住宅街にあり、飛び込み客はまず見込めない。地元客や2軒目にも使ってほしいと思っていることからコース料理だけでなく、アラカルトも出そうと考え、オープンさせた。

狩猟期間は、11月15日から2月15日まで。その間予約が入っていなければ、千葉か埼玉へ狩猟に出かける。だから不定休にした。

「ジビエは面白いです。棲んでいた地域や環境で個体差があります。一番美味しく食べてもらえる料理はなにか。答えは一つではありません。自分なりに探していこうと思っています」

『ジビヱ岸井家』
住所/東京都世田谷区北沢3-1-15 プレジオ北沢
電話番号/090-1423-3115
営業時間/18:00〜23:00、土日祝17:00〜23:00
定休日/不定休
席数/8
https://www.instagram.com/gibierkishiiya

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。