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坪月商65万円を売る“街外れ”の居酒屋『新宿 六』。不利な立地も「SNS」をきっかけに繁盛店に

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予約客のテーブルには、それぞれの名前を記した歓迎の札を用意。2回目以降の予約客は紙が大判になるユニークなサービスを行う。過去の札はカウンター上部に張り出している

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悔しさをバネに多店舗展開へ挑む

中村さんと小林さんの出会いは、前職のグローバルダイニング時代。中村さんは渋谷地区のエリアマネージャー、小林さんは『カフェ ラ・ボエム』麻布十番店の店長にまで昇進した。

しかし、2010年代後半に飲食業界にも「働き方改革」の波が訪れる。これまでどれだけ売上を上げられるのかを重要視されてきたが、そうした「成果主義」は次第に影を潜めるようになってきた。“売上こそが最も大事”だと日々の業務に取り組んできた中村さんたちは困惑したという。そこで二人で話し合い「もう独立して自分たちで店を開くしかない!」と腹をくくった。

現在の物件を内見1軒目で即決。二人で『カフェ ラ・ボエム』新宿御苑店に働いていたこともあり、このあたりには土地勘があった。「元はイタリアンレストランの居抜きで綺麗でした。壁などは塗り直しましたが、カウンター周りはイメージ通りだったのでそのままです」(中村さん)。契約して2か月ほどの急ピッチで開業に漕ぎ着ける。

開業前から現在まで、独自のサービスや料理を二人三脚で試行錯誤してきた。「最初はテイクアウト需要を見越して『もつ煮込み専門店』にする案もありました。でも、やっぱり単一商品は飽きられると怖い」(小林さん)

メニューのラインアップは「あえて変えていない」と中村さん。「すべてのメニューにある程度の出数がある。ABCでいうと、すべてがA商品です」。

その半面、見えないところで味の改善も進める。昨年12月からは小林さんの郷里、福島県矢吹町で実父が精米するコシヒカリに仕入れを切り替えた。「冷えてもご飯が美味しい」と評判で、すぐさまゲストたちに味の良さが伝わった。

人気メニュー「明太生パスタ」(890円)に、白ワイン「スモーキングルーンシャルドネ」(グラス800円)を添えて

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目を引いたメニューが「明太生パスタ」。前職で小林さんが使っていた明太子を卸してもらった、いわば「完コピ」の商品。そこに合わせるのは中村さんがセレクトしたワイン。二人の歴史とプライドを感じる組み合わせだ。

「いろんな業態の店に挑戦して5店舗、いや6店舗まで持つのが夢です。やっぱり僕らは『洋食あがり』の飲食人。いつかは格好いい店もやりたい」(中村さん)

「以前は怖くてできなかった単一商品にも再挑戦したいです。夜の前菜にある『しっとりよだれ鶏』を使って、週替わりランチで『よだれ丼』(800円)を販売すると驚くほど注文が入るので、手応えを感じています」(小林さん)

週末は4人で回す『新宿 六』。店内の様子が見やすい大きな開口部は、新宿に不慣れな女性グループが初めて訪問した際も安心感をもたらす

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インタビュー時や接客のほがらかさと打って変わって、開業前のスタッフミーティングでは売上目標を共有してピシッと締める二人の真剣さが印象的だった。2024年2月には東高円寺駅前に4.3坪の『東高円寺呑場 ニコロク』(2個目の『六』の意)をオープン。多店舗展開の夢へ向け、着実な歩みを進めている。

『新宿 六』
住所/東京都新宿区新宿6-4-2 コスモス新宿18 M1F
電話番号/03-6384-1748
営業時間/ランチ:月〜金 11:30〜15:00 (L.O. 14:30)、ディナー:月〜日17:00〜23:00 (L.O. 22:00)
定休日/年末年始
坪数・席数/12.3坪25席(うちカウンター9、個室4)
https://www.instagram.com/shinjuku_roku/

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神吉弘邦

ライター: 神吉弘邦

経済誌『Forbes JAPAN』、デザイン誌『AXIS』、建築誌『商店建築』、カルチャー誌『BRUTUS』などに寄稿するフリーランス編集者。コロナ禍で飲食店のありがたさに気づき、料理の奥深さにも開眼。メディア取材や企業コンサルティングのかたわら、現在「あて巻き」発祥の寿司居酒屋でも修行中。実家は仕出し屋。