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鶏肉の生食による食中毒が増加中。規制は? 南九州はなぜ生食ができるか基準を解説
飲食店で発生する食中毒は、コロナ禍で一旦は減少していたものの、活気が戻った昨今、再び増加中。飲食店での食中毒で特に多いのが、鶏肉の不十分な加熱や生食によって生じるカンピロバクターです。鶏肉は、加熱調理してカンピロバクターの被害を防ぐのが一般的ですが、鹿児島県など南九州では鶏を日常的に生食しています。どのような基準があり、どのような対策を施しているのか解説します。

画像素材:PIXTA
鶏肉の生食はカンピロバクター食中毒の危険性が高い
飲食店で起こる食中毒の中で特に多いのは、鶏肉などの生食や不十分な加熱によるカンピロバクターです。カンピロバクター食中毒が引き起こす症状は、嘔吐、下痢、腹痛や頭痛、発熱など。1~2%の割合で、ギラン・バレー症候群を発症する恐れもあります。
飲食店で食中毒が発生すると、保健所から営業停止を命じられる事態にもなりかねず、お客様からの信用も大幅にダウン。民事上の損害賠償を請求される可能性もあり、お客様への被害が大きいほど金額も高くなってしまいます。また、状況によっては刑事罰が科される恐れもあるため、日々の調理や保存には細心の注意を払いましょう。
生の鶏肉の提供に規制なし。中心までしっかり加熱を
鶏肉はたとえ新鮮な状態でも、生ではカンピロバクター食中毒のリスクが高く、安心して食べられません。鶏肉を生で提供することは法律で禁止されていないため、加熱用の鶏肉を生で出す事例も目立ちますが、特に加熱用は必ず火を通したうえでお客様に提供してください。色が中心部まで白く変わるよう、しっかり加熱(75℃で1分以上)することが大切です。鶏肉に触れた手や調理器具は、石鹸や洗剤でよく洗浄し、消毒や殺菌もお忘れなく。

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鹿児島県や宮崎県には鶏肉を生食する独自の文化が
鶏肉は中までよく加熱してから味わうのが一般的ですが、南九州では古くから現在でも、鶏肉を鳥刺しや鶏たたきなどの生で味わう文化が根付いています。鶏の生食を将来的にも安全に継続していくために、鹿児島県では2000年、宮崎県では2007年に、県独自のガイドラインを設けています。
食肉加工時には検査基準や殺菌工程が含まれ、調理時にも専用の器具などを定めています。ここでは最初に策定された鹿児島県のガイドライン(生食用食鳥肉の衛生基準)をもとに、どのような基準があり、生食のためにどのような対策を施しているのか、ご紹介します。
■鶏肉の加工時には中抜と体を十分に洗浄し焼烙殺菌
鹿児島県では、食中毒の危険性が高い筋胃(砂肝、砂のう、砂ずり)やレバーは、生食の対象外です。生食用の鶏肉は、サルモネラ属菌や糞便系大腸菌群、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター属菌に汚染されていないものを使用します。生食する部分(モモやムネなど)は、消化管内容物の付着や、寄生虫、傷がないか確認したうえで、中抜と体にし、腹腔内をよく洗浄して消毒。十分に水切りしたあと、表面を焼烙殺菌します。■加工や調理の際は専用の器具を使用
飲食店で調理する時や食肉処理場で鶏肉を分割・細切にする際、包丁・まな板・処理台は専用のものを使います。手指や調理器具は汚れる度に洗浄剤で洗って消毒。調理器具の洗浄・殺菌には、83℃以上のお湯を使用します。■保存や運搬時の温度管理
鶏肉を生食用に加工したら、ただちに冷却処理することが重要。冷蔵なら10℃以下(できる限り4℃以下)、冷凍なら-15℃以下(-18℃以下が最適)になるよう、温度を管理します。生食用の鶏肉を入れる容器として望ましいのは、衛生的で清潔な合成樹脂製などの蓋つき容器です。■提供時にリスクについて注意喚起
提供時には「食肉の生食は、安全性に気をつけても食中毒を完全に防げるわけではない」ことや「高齢者や子どもなど抵抗力が低い方は、生食を避ける」ことなどを周知。生食に伴いさまざまなリスクが生じる恐れもあることを、十分に理解してもらえるよう、注意喚起も徹底します。優良店やマイスターを認証して安全性の高い店舗を選べる工夫も
鹿児島県や宮崎県には鶏肉の生食文化の発展を目指す「とりさし協会」があり、勉強会などが行われています。厳しい基準をクリアした店舗や人には「鳥刺し優良店証」や「鳥刺しマイスター証」を発行。安心して鶏肉を生食できるお店をお客様が選ぶ際の、指標としても役立っています。こうしたさまざまな努力があるからこそ、南九州での生食文化は現在でも守られているのです。
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