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飲食店の二毛作ビジネス。成功の秘訣を3つの名店から探る

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飲食店の「二毛作ビジネス」が広まって久しい。昼はカフェ、夜はバーといった代表的な二毛作から、昼は生花店、夜はバーといった変わり種まで、幅広い組み合わせが誕生している。

定休日や営業時間外の店舗を有効活用でき、尚且つ組み合わせる業態によっては相乗効果も狙える。「二毛作ビジネス」は飲食店にとって大きな武器になり得ると誰もが感じていたが、そう簡単にいかないのが飲食業界の常。二毛作を試みるも、片方が撤退してしまった、または共倒れしてしまった、なんて店舗も多い。

では「二毛作ビジネス」において成功の秘訣とは何なのか? 3つの二毛作店舗を紹介しながら探っていきたい。

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Photo by bark「Mocha」

あの一ツ星店も二毛作!

オープン後、世界最速の2カ月でミシュラン一ツ星を獲得した白金台『ティルプス』。若きシェフ・寺田惠一氏が作る独創的なフランス料理が好評の店舗だが、昼は違った魅力を放つデザートコース専門店へと表情を変える。昼の厨房を率いるのは中村樹里子シェフ。『ティルプス』でシェフパティシエを務めている人物だ。

中村シェフが腕をふるうランチ帯は、店名を『KIRIKO NAKAMURA』と変える。『ティルプス』にぶら下がるランチ企画ではなく、あくまでも別の店。自身の名前を冠にするところからも、中村シェフの本気が窺える。

コースは6品で3,780円。すべてデザートのため、重くなり過ぎないように油脂分や空気量に工夫を凝らしながら作り上げるという。1年間だけの限定オープン(2016年6月まで)らしいが、スイーツシーンにしっかりと足跡を遺す店舗となるだろう。

イタリアン×カレー。どちらも本気!

麹町のイタリア料理店『サロン・ド・カッパ』。三軒茶屋の名店『グッチーナ』のオーナーシェフ・田口昭夫氏の店としても知られるが、2010年のオープン以来、夜はイタリアン、昼はカレーという二毛作を演じ、両方で高い人気を獲得している。

夜のイタリアンは言うまでもないが、昼のカレーも絶品だ。玉ねぎはジャム状になるまでじっくりと炒め、大きな肉塊は旨みが凝縮されるように強火で焼き上げる。そして、赤ワインやスパイスを加えて丹念に煮込む。1週間もの時間を費やして完成するこのカレーは、食べ終えたあとに余韻を残すほどの深い味わいが魅力だ。

昼は手軽に、夜はゆったりと楽しみたい。そんなゲストのニーズにしっかりと応えながらも、提供する料理は一切妥協をしない。名店を率いる田口氏ならではの二毛作である。

妖しげな夜の顔、凛とした昼の顔

最後に紹介するのは、恵比寿『バー トラム』。『トラム』と言えば禁断の酒・アブサンを豊富に揃える知る人ぞ知るバーだが、昼は『珈琲トラム』として別の顔で営業している。

ここのコーヒーがちょっとスゴい。昼の店主である古屋達也氏は、惜しまれつつ閉店した表参道『大坊珈琲店』の出身。手廻しロースター、そしてネルドリップを使用して丁寧に淹れるコーヒーは、深煎りでありながらも苦味が少なく、自然なコクを感じさせる逸品だ。妖しげな夜の顔も良いが、凛とした昼の顔も良い。2つの違う顔を巧みに演出した好例と言えるだろう。

紹介した3店舗に共通していることは、二毛作スタイルではあるものの、両方の手を抜いていないこと。効率化を考えれば、昼と夜は共通の材料を用いながら営業するのが得策だろう。しかしこうしたメリットにとらわれることなく、昼は昼で明確な“売り”を作る。3店舗とも「夜営業のおまけ」とは考えていないのだ。

もともとは空いている時間を有効活用しようとして始まった「二毛作ビジネス」だけに、効率化を考えるのは至極当然とも言える。しかし、そこに惹かれるものがなければゲストの心は掴めない。効率化を考えつつも、アイデアをとことん振り絞る。そんな基本的な姿勢こそが「二毛作ビジネス」を成功の肝となりそうだ。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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