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熊本地震を経験した飲食店に話を伺う。営業再開までの道のりと、地震への備え

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2016年4月、熊本は度重なる地震で大きな被害を受けた

4月に熊本地震が発生して、3ヶ月が過ぎようとしている。この地震では飲食店も大きな被害を受け、一時的な営業停止を余儀なくされた店舗も少なくない。

揺れが大きく店舗そのものが全壊、半壊した場合は罹災証明が発行され復興支援の対象となる。しかし、建物が壊れていない多くの店舗もまた、「電気・ガス・水道」が止まり、営業を停止せざるを得なかった。こうした建物被害が少ない店舗は、助成金などの対象にはならない。熊本の繁華街にある飲食店の多くはこれにあてはまるのだが、彼らが自力で店を再開するまで何があったのか、そして危機をどのように乗り切ったのかをご紹介する。

熊本地震が発生した際、どんな問題が起きたのか?

1、電気・ガス・水道が止まった
上通、下通など熊本を代表する商店街も被災し、電気・ガス・水道が止まった。同商店街の場合、電気は止まらなかったところもある。水道は概ね3~4日後には復旧した。しかし、飲食店にとって最も待たれるガスはかなり遅く、4月末~5月にかけて。しかもガス会社の人手は限られるため、一日で再開できるエリアが限定されていた。

2、食器・ボトルが割れ、備品が壊れる
多くの食器やボトルが割れてしまったことも営業再開の大きな障害となった。器の大半が割れてしまったラーメン店には全国の同業者から食器が届いたそうだ。

3、建物やエレベーターが使えなくなった
損傷した建物には「黄色」「赤」の紙が貼られ、「要注意物件」になってしまうと営業ができなくなる。その後営業再開するためには、エレベーター点検や建物診断を待たなければならなかった。

4、ごみ収集が止まった
店の片付けで出る災害ごみ、さらに営業を再開したときのごみも回収できず問題に。回収が再開するまでには商店街で共同の集積場を確保するなどして対処した。

商店街の飲食店はガスが開通したタイミングで営業再開

このように多くの問題が生じるなか、“一刻も早く営業再開を”と心意気をみせた飲食店もある。熊本銀座通りの『白木屋』と『笑笑』は、備蓄していたミネラルウォーターを使って本震の翌日も営業したそうだ。

その他の飲食店の多くは、ガスの復旧待ちだったようだ。復旧の前に「食材販売」「露店営業」「飲み物だけを提供」など、可能な範囲で営業を再開させた店舗もある。

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熊本の繁華街にある商店街「下通」。Photo by Tzuhsun Hsu「Kumamoto」

商店街の飲食店が再開するまでの苦労

商店街・上通にある『すき焼 加茂川』の女将・山下氏に電話で話を伺うことができた。同店は明治14年創業、熊本の食通から長年愛されてきた老舗だ。

「地震の影響ですき焼き店の営業ができなくなりましたが、商店街で一番早く、一階の惣菜店を4月18日より再開させました。水は通っていたので、カセットコンロと電磁調理器をかき集めて惣菜を作って販売。付近一帯、まだコンビニもスーパーも、どこにも食べ物が売っていなかった時期だったので非常に喜ばれました。並行して炊き出しも行い、避難所におにぎりなどを差し入れました。すき焼き店はガスが通った4月28日に再開。お陰さまでゴールデンウィークには多くのお客様を迎えることができ、また災害ボランティアの方たちも食事にいらっしゃいました。今は中国人観光客もかつてのように増えてきています」

同じ商店街にある洋食店にも話を聞けたので紹介しよう。

「地震発生当時は、従業員の家も被災し水をもらいにきていました。営業再開は5月4日。再開に時間がかかったのは建物の損傷がひどかったためです。休業の期間に支払い日がきたのが最も困ったことでした。今は常連さんにも応援していただいて頑張って営業しています」

市内に数店舗を経営する喫茶店ではこのような声も聞けた。

「被災の4~5日後、営業可能な店から順次、飲み物だけで再開しました。ガスがこないと食べ物が出せず、売上を伸ばせないのが苦労した点です。でもコーヒーだけでも多くの人に喜んでいただけました」

ライフライン停止に備えて、飲食店事業主ができることは?

最も重要なことは、できるだけ早く営業を再開すること。お持ち帰りができる惣菜でも、または露店営業でも、何らかの飲食を提供することができれば、お客様からも喜ばれるし、何より現金売上を確保でき、従業員にも給与を支払える。

そのためには調理ができるだけの水、カセットコンロなどを備蓄しておく必要がある。その後はライフライン(特にガス)が復旧したらすぐに再開できるよう準備を進めていく。熊本の場合、過去の「新潟」「東日本」などの経験が生かされ、ライフライン復旧までのスピードが早くなっている。水やガスが止まっても冷静に、できることをしながら復旧を待とう。

今回は熊本地震で被災した飲食店の事例の中から、「ライフライン停止後、自力での営業再開までにすべきこと」をレポートした。このケース以外にも大地震で建物が損壊する場合、火災が発生する場合など、店主はあらゆる事態を想定して日頃から備えておこう。

【Foodist Media編集部より】
このたびの熊本県熊本地方で発生した地震(平成28年熊本地震)でお亡くなりになられた方々に対しまして、心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災をされた方々に心よりお見舞い申し上げます。また、震災からの一日も早い復興をお祈り申し上げます。

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。