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飲食店スタッフの給与実態は? 東京、大阪、愛知、福岡の4都府県の平均給与を調査

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飲食業界は少しずつ賑わいを取り戻しつつあるが、引き続き課題となっているのが「人手不足」問題だ。居酒屋など採用難易度の高い業態では、給与を引き上げるなどの対策をとっている店舗もあるが、業界全体の賃金が上昇傾向にある中で、他店と差をつけるだけの給与を提示するのはなかなか難しいようだ。では、実際のところ飲食業界の平均給与はどのように推移しているのだろうか。今回は、弊社が実施した調査の結果から、2023年度上期の飲食店の平均給与について紹介する。

■調査概要
調査対象:「求人飲食店ドットコム」掲載の、東京都・大阪府・愛知県・福岡県における求人案件(63,119件)※データ数が500件以下の場合は除外
調査期間:2023年4月〜2023年10月
給与算出方法:求人募集時の給与下限額より算出。少数点以下は四捨五入
※詳しい調査結果はこちらから

調査した4都府県すべてで平均月給・平均時給が上昇

今回の調査では、東京都・大阪府・愛知県・福岡県における求人案件が対象となっており、平均月給は、東京都が285,379円で2022年度下期から+5,815円(前半期比102%)、大阪府は272,563円で同比+4,710円(前半期比102%)、愛知県は263,668円で同比+7,214円(前半期比103%)、福岡県は257,487円で同比+7,579円(前半期比103%)となった。

平均時給は、東京都が1,234円で2022年度下期から+21円(前半期比102%)、大阪府は1,131円で同比+24円(前半期比102%)、愛知県は1,055円で同比+11円(前半期比101%)、福岡県は1,026円で同比+32円(前半期比103%)となった。福岡県では初めて時給が1,000円を超え、すべての都府県で月給・時給とも上昇している。

4都府県の平均給与

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平均月給・平均時給が上昇した理由は、深刻な人手不足だ。新型コロナウイルス感染症が5類に移行してインバウンド顧客も増えたことで、人手不足が深刻化したともいえる。人手不足の改善策として、多くの飲食店で給与の引き上げ(ベースアップ)を行っており、それが平均月給・平均時給の上昇につながっているとみられる。

なお、10月には最低賃金が改定され、東京都の最低賃金は1,113円、大阪府は1,064円、愛知県は1,027円、福岡県は941円となった。いずれも上期の時点で10月に改定された最低賃金を上回っており、下期はさらに上昇するものと考えられる。

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業態別ではイタリアンが対2022年度下期で+7,442円

続いて、業態別の平均給与(東京都)では、「イタリアン」「和食」「居酒屋・ダイニングバー」「カフェ・喫茶店」「洋食・西洋料理」の5業態すべてで2022年度下期を上回った。2022年度下期との差では、「イタリアン」が+7,442円で最も高く、最も低い「カフェ・喫茶店」は+850円となっている。

「カフェ・喫茶店」は平均給与自体も5業態の中で最低となっているが、これは採用の難易度が関係していると考えられる。採用が難しい業態は給与が高く、採用しやすい業態は給与が低めという傾向だ。

業態別の平均給与

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「サービス・ホール」「調理スタッフ」ともに平均給与が上昇

また、職種別平均給与額の調査結果でも、「サービス・ホール」「調理スタッフ」ともに2022年度下期を上回っていることがわかる。ただ、給与の上がり幅としては、2022年度下期は東京都・大阪府ともに「調理スタッフ」の方が高くなっていたが、今回の調査では大阪府では、「サービス・ホール」のほうが大きく上昇した結果となった。

実際に、2023年9月時点の有効求人倍率を見てみると、飲食物調理従事者(調理スタッフ)は2.91倍、接客・給仕職業従事者(サービス・ホール)は3.11倍となっており、サービス・ホールの人手不足も深刻になっているのがわかる。

職種別の平均給与

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有効求人倍率は全業種で見てみると1.29倍だが、飲食業においては3倍前後となっており、数字の上でも飲食業の人手不足が際立っている。人手不足はまだまだ続くとみられ、平均給与は上昇していくと考えられる。人員を確保するためには、給与アップなどの待遇改善施策が必要になるだろう。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com