飲食店の約9割が営業時間短縮要請に応じる。 緊急事態宣言再発令中の経営状況を調査

2021年3月4日

画像素材:PIXTA
政府は1月7日、新型コロナウイルスの感染拡大により、1都3県に対し2度目となる緊急事態宣言を発令。これに伴い、対象エリアの飲食店には営業時間の短縮が要請されている。さらに1月13日には、11都府県へと対象地域を拡大。その後、一部地域は宣言解除に至ったものの、現在も1都3県に対し緊急事態宣言が出ている状況だ。

「飲食店リサーチ」では、栃木県を除く10都府県に緊急事態宣言が出されていた期間中の2月10日~15日に、飲食店の経営状況に関するアンケートを実施。再びの緊急事態宣言下における飲食店のリアルな声をお届けする。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:595名
調査期間:2021年2月10日~2021年2月15日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:緊急事態宣言再発令中の経営状況に関するアンケート

■回答者について
回答者のうち67.2%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は52.4%(首都圏の飲食店の割合は70.8%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

飲食店の95%が時短要請に応じるも、経営状況は悪化傾向に

まず、2021年1月の経営状況を調査した。1月の売上における昨年対比を尋ねたとろ、半数以上の飲食店が「前年同月より50%以上減った(55%)」と回答。次に、「40%減った(13.6%)」、「30%減った(12.9%)」という回答が続く。

なお、2020年12月に同様の質問をした際は、「前年同月より50%以上減った」という回答が最多で、38.5%。「40%減った」は15.1%、「30%減った」は16.2%となっており、「30%以上減った」と回答した人は合わせて69.8%だった。一方で、1月の経営状況について「30%以上減った」と回答した人は81.5%となっており、今年に入り経営状況が悪化している様子が明らかとなった。


続いて、営業時間短縮要請地域(緊急事態宣言の対象地域、または各自治体で独自の営業時間短縮要請を出している地域)の飲食店を対象に、営業時間短縮要請の実施状況を尋ねた。最も多かったのが「時短営業をしている(71%)」という回答。「臨時休業をしている」という店舗も24%おり、95%の飲食店が営業時間短縮要請に応じていることが明らかとなった。一方で、「応じていない」と回答した店舗は、0.9%にとどまった。

次に、先ほど「要請に応じている」と回答した人に対し、協力金が十分な補償になり得るかどうか尋ねたところ、最多となったのは「ある程度補償になる(52%)」という回答。次いで、「十分な補償になる(27.1%)」という回答が続く。本調査の回答者の67.2%が1店舗のみの運営であることは考慮しなければならないが、約8割の飲食店が概ね協力金に満足しているようだ。一方で、「ほとんど補償にならない(13.1%)」、「まったく補償にならない(7.9%)」と、協力金が十分でないと考える飲食店も見られた。


さらに、営業に関する今後の意向について尋ねたところ、最も多かったのが「従来のまま営業を継続する(79.0%)」という回答。次いで、「業態の変更を検討中(14.1%)」、「業態の変更をした(6.1%)」という回答が続く。営業を継続する店舗が多いなか、「閉店を検討中(5.7%)」、「居抜きやM&A等、店の売却を検討中(5.4%)」、「閉店した(2.5%)」など、店を手放す選択を考えている飲食店もいるようだ。

また、2月3日には、行政罰などが盛り込まれた新型コロナ対策の改正特別措置法が可決した。そこで飲食店として、改正特別措置法に対して懸念点があるか尋ねた。25.9%が「とくに懸念点はない」としているが、やはり「行政罰としての過料が科せられること(38.7%)」や、「『まん延防止等重点措置』により、緊急事態宣言下でなくても時短営業の要請や命令が可能になること(37%)」、「緊急事態宣言下で『要請』に加え『命令』が可能になること(30.9%)」といった項目に関し、懸念を抱いている飲食店は多かった。

利益アップのため、通販事業の推進や経費の見直しなどを実施

続いて、コロナ禍でもお客様が安心して飲食店を利用できるように、力を入れている対策について尋ねた。とくに目立ったのが、「アルコール消毒」や「換気」といった、基本的な感染症対策に対する取り組み。さらに、感染症対策の実施をお客様にアピールしたり、入店人数の制限をしたりと、各店様々な工夫を行っているようだ。以下に、アンケートで寄せられた回答をいくつか抜粋していく。

■徹底した感染症対策

・感染対策の徹底。とくに消毒はお客様が帰った後は必ず念入りにしています(神奈川県/カフェ/1店舗)

・消毒やパーテーション、換気といった基本的な安全対策(大阪府/バー/1店舗)

■入店人数の調整

・混雑を避けるため、入店を規制する(東京都/イタリア料理/1店舗)

・ピーク時間でも、お客様の来店人数の制限などを行い、密にならないようにしている(兵庫県/専門料理/1店舗)

■店の感染症対策をアピール

・換気の案内、POP等で安心安全のアピール(兵庫県/その他/1店舗)

・安心、安全へのアピール。感染予防に取り組んでいてもアピールできていなければ元も子もない(大阪府/イタリア料理/1店舗)

■感染症対策になるシステムの推進や設備の導入

・非接触型オーダーシステムや決済の推進(東京都/カフェ/1店舗)

・店内環境の整備、除菌加湿器や空気清浄機を導入して店内の環境を整えている(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)

新型コロナの影響で売上減少に悩む飲食店は多いが、利益アップのために行っていることや心がけていることはあるのだろうか。最後に、コロナ禍で各店が行っている売上を上げるための取り組みを尋ねたところ、「販路拡大」や「集客」といった新たな利益確保を狙う店舗のほか、「見直し」を行い、経費や食材ロスを抑えている店舗も見られた。

■利益を確保する工夫

・テイクアウト、デリバリーに力を入れる。通販サイトの構築(東京都/アジア料理/3~5店舗)

・デリバリーサービスの活用、時短に伴うランチ営業(大阪府/アジア料理/1店舗)

・来て頂いた方にリピートして頂くために、心を込めて接客をする(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・こんな時に来店して頂いたお客様には普段以上の満足感を得て頂く努力をしています。仕入れる材料もランクを上げ、量と質をグレードアップする。回数を減らすなか、選んで来店された行為に敬意を示すことが次回に繋がると思います(大阪府/イタリア料理/1店舗)

・インターネットの検索エンジン対策に力を入れております(東京都/ラーメン/2店舗)

・SNSでの集客に力を入れている(愛知県/和食/1店舗)

■経費や食材の見直し

・人件費の削減です。食材は、業務用スーパーや安売り広告などを利用しています(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・購入先の見直しなどを行い、無駄な経費の削減(東京都/カフェ/1店舗)

・こまめに仕入れをし、食材の廃棄をゼロにする。平日は予約がなければ休み、経費削減する(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・食材の無駄を減らすこと。予約のない日の早じまい(長野県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・食材ロスを避けるため、メニューを絞っての営業を行っています(大阪府/その他/1店舗)

緊急事態宣言下でも、多くの飲食店が工夫や努力をしながら営業を続けている。現在発令されている緊急事態宣言は、3月7日が期限となるが、新規感染者数の“リバウンド”が懸念されるなど、状況は芳しくない。今後も飲食店は、お客様が安心して過ごせる環境づくりをするとともに、利益を上げるための工夫を積極的に取り入れていく必要がありそうだ。

飲食店経営者が集う「飲食店リサーチ」
アンケート調査結果が見れる!店舗経営に役立つ!

Img hajimete keyvisual
アンケートにご回答いただいた方へ 毎月謝礼の商品券を抽選でプレゼント!
最近のアンケート調査結果
始めての方へ

実施アンケートの目的、種類、利用者の声など、飲食店リサーチの特徴をご紹介。

飲食店リサーチマガジンについて

『飲食店リサーチ』で実施した調査によって得られたデータなど、『飲食店ドットコム』が保有するデータに対し様々な考察を加えて記事を作成。飲食店の経営に役立つ情報を毎月定期配信しています。

ページトップへ↑

飲食店リサーチ