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飲食業界の魅力を「働く意欲」につなげるために
今、多くの業界が「働き方改革」を進めており、職場環境や待遇の改善が大きく進んでいます。しかし飲食業界では、こうした波が大企業のみにとどまっているのが現状です。 飲食業が薄利多売の商売であること、また一時的に繁盛していても社会情勢や流行などによって売上が左右されやすいことから、安定した賞与の支給や昇給制度の導入が難しいとなってしまう傾向にあります。一方で、飲食業界においても、他業種に比べて額は少なくとも、ボーナスを支給する企業、店舗は増え始めています。転職サイトやエージェントの中には「ボーナス支給」を強みに求職者にアピールするケースも出てきました。労働条件的に苦しい企業・店舗はますます人材不足が加速する可能性があります。
飲食業は他の業種よりも、短期間で責任ある仕事を任されるケースが多く、未経験からでも活躍できるチャンスが多い業界です。また一人ひとりに任される裁量も大きいので、やりがいを感じやすいという魅力があります。その魅力を「就職したい」「働きたい」という熱意につなげるためにも、待遇面の見直し・改善は必須といえるでしょう。
給与面の見直し…まずはここから着目してみよう!
経営者としては「売上維持も精一杯なのに、ここからボーナスを捻出するなんて…」との思いの方もいらっしゃるでしょう。そこで、現状を大きく変えることなく、ボーナスを導入するための見直し・検討ポイントをご紹介します。◆明確な売上目標を提示し「特別手当」を導入する
まずはお店の現状を分析し、「ちょっと頑張れば達成できる」範囲での売上目標を設定しましょう。そしてその目標を社員・スタッフと共有し、目標達成時に賞与として「特別手当」を支給する方法があります。
目標が明確な分、従業員のモチベーションは上がりやすいので、売上アップを実現しやすいことが大きな特長です。目標額は3~6ヶ月ごと、前年比●%アップなど具体的に設定するとよいでしょう。
◆シフトの徹底的な見直しを
ボーナスや特別手当の支給を検討する場合には、現状の「人件費の内訳」を確認し、無駄になっている部分がないか精査することも重要なポイントです。例えば「フロアには2、3人必要だろう…」といった“慣例”でシフトを決めていませんか?日ごと、時間ごとの売り上げをしっかりチェックし、お客様が比較的少ない時間だけ人数を減らす、シフトを短くするなどの調整にも取り組んでみましょう。
◆お客様やスタッフからの評価を査定に加える
スタッフ全員に一律に特別手当を支給することが難しいなら、思い切ってテーブル担当制を導入するなどして、スタッフごとの売上を集計、結果に応じて手当を支給するという方法も考えられます。お客様やスタッフへのアンケートやヒアリングを実施し、評価の高いスタッフには特別手当を設けるのもいいでしょう。金額が潤沢でなくても「頑張った分はしっかり評価してもらえる」ことが伝われば、スタッフのモチベーションアップにもながります。
昇給は従業員の定着につながる
ボーナスが単発的に支給する金品であるのに対し、昇給は給与の金額を引き上げることです。古くからある仕組みは、勤続年数や職務遂行能力の向上に伴い、毎年昇給を行う定期昇給と呼ばれるもの。その他に、時期は定めず会社ごとの就業規則の中で定める臨時昇給、実績や勤務態度などへの評価(考課)を基準とした考課昇給などもあります。昇給は法律上の義務ではないので、必ずしも導入する必要はありません。しかし「ボーナスも昇給もない」では従業員は自分の将来がまったく見えません。離職を検討する人もでてくるでしょう。
「あなたの働きぶりを常にしっかりと見ています」という経営層の思いを従業員に伝え、人材の定着やモチベーションアップにつなげるため、経営状況を鑑みながら自社にあった仕組みを柔軟に導入することも検討してみるとよいでしょう。
手に職を付けたい、食を通じてお客様に笑顔を届けたい――そんな思いを持って働く人材に「こんなはずでは…」と思わせないためにも、できる範囲で待遇改善に取り組み、飲食業界に対する世間のネガティブなイメージを払拭していきましょう!
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