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入職者が増える一方、離職者も増加している
厚生労働省が公表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、令和4年1年間の入職者数は7798万人、離職者数は7656万7000人で、入職者が離職者を141万3000人上回っています。年初の常用労働者数に対する割合である入職率、離職率をみると、入職率は15.2%、離職率は15.0%。前年と比べると、男女とも一般労働者とパートタイム労働者の両方で入職率、離職率ともに上昇しました。採用活動を活発に行っているものの、人材が定着せず離職も多いという労働市場の現状が見えてきます。
人間関係が原因で退職する人は多い
先の調査結果によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した人は、転職入職者男性の8.3%、女性では10.4%にのぼります。一見するとそれほど多い数字ではないようにも思えますが「労働時間、休日等の労働条件が悪かった(男性:9.1%、女性:10.8%)」に続く数字であり、「給料等収入が少なかった(男性:7.6%、女性:6.8%)」を上回ると考えると、決して見過ごすことはできない離職理由と言えるでしょう。
労働環境の問題が「大人のいじめ」を引きおこす
職場の人間関係の問題として代表的なのが「大人のいじめ」です。飲食業界に限らず、さまざまな職場でみられます。そんな職場でのいじめや嫌がらせの背景には、一般的に次のような原因があると言われています。・労働環境によるストレス
・立場が上の人が下の人に価値観を押し付け、周りの人がそれに加担するような空気
・スタッフ個人が抱える問題
忙しい、業務の負荷が重い、長時間労働が続いている、給与が低い、ミスが決して許されないといった職場では、スタッフが慢性的なストレスを抱えがちになります。その結果、立場が弱い新規スタッフやミスの多いスタッフなどをいじめることで、ストレスを解消しようとするのです。
「立場が上の人が言うことは絶対」という空気がある職場では、上の人が下の人のさまざまな言動を指摘し、周囲の人が上の人の意見に加担することで、いじめに発展しやすくなる傾向があります。そのほか、スタッフが個人的な問題を抱えている場合も、いじめでストレスを発散しようとすることがあります。
いじめのない組織にするためのポイント
職場でのいじめを防いで人材の定着を図るには、労働環境を改善し、スタッフがストレスを溜めこむような要素を取り除いていくことが大切です。無駄な長時間労働、給料や待遇における差別、人事考課権の濫用などはないか組織内を見回してみましょう。スタッフにアンケートを取り、集まった意見を労働環境改善に活かすのもよい方法です。立場に関係なく意見を言い合えるような、風通しのいい職場をつくることも大切です。定期的なミーティングなどでフラットに意見を交換し合える風土をつくるとともに、パワハラ研修などを導入するのもおすすめです。また、スタッフが個人的な問題を抱えているときは、話を聞くなどして心のケアをしましょう。
職場の人間関係の悪さにはさまざまな原因がありますが、常に仕事に追われている状況だと誰もが気持ちに余裕がなくなり、殺伐とした雰囲気になったり、ストレスを溜めたりして、仲間に寄り添うことができなくなっていくのは明らかです。十分な数のスタッフを確保することで、一人ひとりがゆとりをもって働けるような職場にすることも非常に重要です。
「うちでいじめが起きるわけない」こう考えがちですが、会社の意識改革は何より重要です。職場のいじめや嫌がらせの原因の根本に会社の問題があるかもしれません。活力のある組織づくりを進め、定着率を上げていきましょう。
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