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「営業利益率」30%超の飲食店から高収益の秘密を探った。大切なのは「固定概念を捨てる」こと?

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経済産業省の計算によると、飲食店の営業利益率は、平均で8.6%。上場企業であっても、10%を超えるところはなかなかない。そんな中、営業利益率30%をたたき出す繁盛店も存在する。今回は営業利益率30%超の店に着目し、高収益の秘密を探った。

お一人様向けの「立ち食い焼き肉」が大ヒット

広さ4坪、最大12名収容の小さな店だが、一日の客数は180人という集客力を誇る『立喰い焼肉 治郎丸(西武新宿)』。営業利益率は驚異の30%だ。

繁盛の秘密は“焼き肉といえば家族や仲間などのグループで”という固定概念を捨てたこと。大都市圏内で商品の少量多品種化が進んでいるのを受けて、スタンディングで牛肉を一枚ずつ提供する焼肉店を展開。A4~A5ランクの上質な和牛のみ扱い、正肉は原価率50%にして値打ち感を打ち出す一方、ホルモンは業界水準に設定してバランスをとっている。客単価は3000円だが「上質な肉をリーズナブルに堪能できた」と客の満足度は高く、リピーターも多い。行列を次々に飲み込む、立ち食いならではの高回転で利益を積み上げている。

女性客を取り込んだ立ち飲み店

18坪の店内は連日お客で溢れかえり、月商1000万円を売り上げる大阪の『魚屋ひでぞう 立ち呑み店』。クオリティが高いと評判の鮮魚料理は原価率40%におよぶが、刺身の端材やあら、キモなども巧みに商品化し歩留まりのよいメニューも用意している。

立ち飲みという業態は男性客のイメージが強い。しかし同店は、洋食の調理経験のあるシェフが、ズワイガニのマカロニクリームグラタンや、鶏レバーのリエットなど女性受けするメニューを開発し、女性客比率も約5割という高さを誇っている。もう一つの特徴としてアルコール売上比率が極めて高いこと。その秘密は「少量グラス」にある。30種類前後常備している地酒を110mlのグラスで提供することで、“お酒を少しだけ飲みたい人”や、数種類の飲み比べニーズを引き出している。

立地特性を読み切り、効率的に利益を上げる

350円&550円のお手頃タパスや、生麺のパスタが人気のワイン酒場『五感 一号店』。10坪という広さながら、月商500万円を上げている繁盛店だ。繁盛の理由はこの店が立地特性を読み切り、効率的に稼ぐスタイルを作り上げたからだ。店の近辺には夜間営業の店が多く、そこで働く人たちが仕事終わりに飲食できる店の需要が潜在的に高かった。同店はそこに目をつけ、閉店時間を朝7時に延長。「深夜でも本格的なイタリアンが楽しめる」ということで評判を呼び、朝まで賑わう店となった。

早朝営業は、総売上げの30%を占めるという。また、お酒だけを提供するバーにフードをデリバリーすることで、利益のポテンシャルを引き上げた。デリバリーは徒歩か自転車で運べる範囲に限定するが、配達料金は無料。周辺に深夜営業の店が多い池袋だからこそ、ハイリターンが得られている。

揚げ時間1分のカツで、高回転を実現

昨年に大ブレイクした『京都勝牛』。京都駅前店の営業利益率は39.8%という驚異的な数字を誇る。その決め手は提供時間にあるようだ。柔らかさが特徴の希少部位「ハネシタ」を使用した牛かつは、ミディアムレアに仕上げるため、揚げ時間はたったの60秒。さらに、揚げる、切る、盛りつける、提供するという厨房での作業導線を単純化することにより極めて早く提供できる体制を整えた。

ランチ需要の高い立地を選んで出店し、高単価&高回転で圧倒的な売上げを実現しているのも特徴だ。出来たての牛カツを食べられる上、4種類のソースにつけて味の違いを楽しめるため、リピーターも多く、また客の2割が外国人観光客だというのもいかにも現代の繁盛店らしい。

“無料”で惹きつけ、ドリンクで稼ぐ

今年、東証一部に上場した『コメダ珈琲店』は、居心地の良さを提供するカフェチェーンだ。大手競合と比較しても30%という営業利益率の高さは群を抜いている。その秘密はどこにあるのだろうか。

注目したいのはモーニングサービスだ。開店から11時までにドリンクメニューを頼むと、トーストとゆで卵が無料でプラスになる。一見お得なようだが、一番価格の低い「ブレンドコーヒー」でも420円のため決して安くはない。パンやコーヒーは自社グループから直接取り入れているため、原価はかなり抑えることができる。つまり“無料”と謳いつつも、十分に利益を確保できるだけの体制が整えられているのだ。また、大手競合がこぞって「ビジネスパーソンのためのおしゃれなカフェ」を演出する中、昔ながらの喫茶店の居心地の良さを追求し、シニア層やファミリー層を取り込んだポジショニングも絶妙だったといえる。

強みを生かして高付加価値店に育てよう

高い利益を稼ぐお店は、「焼き肉といえばグループで」とか「立ち飲み客といえば男性」といった固定概念を捨てることで、潜在的な需要を取り込んだ。店の立地や顧客層を見直し、取りこぼしている客はいないかもう一度考えてみよう。そこに高い利益の望める、ブルーオーシャンがあるかもしれない。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。