飲食店のアルバイトなど人材確保の現状を調査。賃上げの動き進むも4割超の店舗が人手不足を実感

2023年3月28日

画像素材:PIXTA
慢性的な人手不足が続いている飲食業界。コロナ禍以前から多くの店舗が直面している課題だが、経済活動が再開し始めるなかで、人材獲得競争が激化。従業員の確保に苦戦を強いられている店舗も少なくない。そこで今回は、飲食店経営者や運営者に対し、人材確保の現状を調査するためアンケートを実施。人員の充足感や、具体的な補填手段について、飲食店のリアルな声をお届けする。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:415名
調査期間:2023年1月26日~2023年2月2日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち69.4%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は50.1%(首都圏の飲食店の割合は66.2%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

人手が足りない飲食店のうち84.3%は、アルバイト・パートが不足


まず、従業員の過不足状況について尋ねたところ、「足りている」(充分足りている=23.4%、何とか足りている=33.7%)が57.1%、「不足している」(やや不足している=31.8%、とても不足している=11.1%)が42.9%との結果が得られた。不足している店舗は4割を超えており、決して少ないとは言えない状況だ。また、従業員が足りている店舗も3割が「何とか足りている」状況であることから、多くの飲食店が人材確保に苦戦している様子が読み取れる。
従業員数が「不足している」(やや不足している、とても不足している)と回答した方に、特に従業員が足りていない雇用形態を質問したところ、最も多かったのは「アルバイト・パート」との回答で51.7%。「アルバイト・パートと正社員の両方(32.6%)」との回答と合わせると、84.3%もの店舗で「アルバイト・パート」が足りていない。「正社員」についても、48.3%(正社員=15.7%、アルバイト・パートと正社員の両方=32.6%)の店舗で不足している。
次に、特に従業員が足りていない職種を尋ねると、65.2%が「接客・配膳・清掃などのホール業務」と回答し、最多に。「調理・仕込みなどのキッチン業務(50.6%)」も半数を超える店舗で不足している状況だ。「管理職(店長・マネージャーなど)」との回答は、15.2%にとどまった。

さらに、どの時間帯が特に従業員が足りていないか答えてもらったところ、最多となったのは「土・日・祝日の夕方~夜(52.8%)」との回答。次いで多かったのは「平日の夕方~夜(48.3%)」との回答で、曜日に関わらずディナータイムの人手不足が目立つ結果となった。

飲食店の人材確保手段、「求人サイト・アプリ」に次いで「店頭の張り紙」も人気


続いて、人材確保のために使っている手段やサービスを答えてもらった。最も多かったのは、「求人サイト・アプリ」との回答で34.5%。「店頭の張り紙(30.4%)」、「SNS(26.0%)」、「求人誌・フリーペーパー(21.7%)」、「自社サイト(20.0%)」との回答も目立っており、デジタル・アナログを問わず、さまざまな手段を用いているようだ。また、約半数の店舗では、2つ以上の手段やサービスを組み合わせて人材確保を行っていることもわかった。
さらに、特に人材確保に役立っているものについて尋ねたところ、「特に役立っているものはない(32.3%)」との回答が最多となったが、これは前問で「従業員を募集していない」と回答した人の影響が大きいと見られる。具体的な手段やサービスを見ると、最も多かったのは、「求人サイト・アプリ(22.4%)」との回答。次いで、「SNS(11.3%)」、「求人誌・フリーペーパー(9.6%)」、「店頭の張り紙(8.4%)」と続く。
次に、求人活動を行うときに特に意識していることを答えてもらったところ、「近隣の店舗より時給を高めに設定する」という声が多く寄せられた。ほかにも、「柔軟なシフト体制」や「働きやすい環境」など、各店さまざまな事柄を意識しつつ採用を行っているようだ。以下にいくつかの回答を抜粋して紹介する。

■高時給やインセンティブ制度などの給与制度

  • 近隣より少しだけ時給を高くする(千葉県/ラーメン/1店舗)
  • 時給高め設定と、売上に応じてボーナス支給をしています(東京都/焼肉/1店舗)
  • 頑張った分、きちんと報酬に反映される給料体制(東京都/イタリア料理/1店舗)

■柔軟性の高いシフト体制

  • 短時間のシフト(静岡県/和食/1店舗)
  • 曜日や時間帯は毎月自由に選べるようにしています。シフトを組むのは大変ですが、学生の試験直前や、家族の予定に合わせる主婦も働きやすいようにしています(東京都/カフェ/2店舗)

■まかないなど福利厚生の充実

  • まかないをアピールして、一人暮らしの学生、フリーターを取り込む(愛知県/和食/1店舗)
  • 福利厚生のアピール(大阪府/ラーメン/1店舗)

■働きやすい雰囲気の良い職場

  • 楽しい職場であるということ(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 個人店であることを全面に出し、働きやすい環境をアピール、また他店との差別化を図っています(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■採用後のミスマッチを減らす

  • 相手側の条件や要望をしっかりと聞く。こちら側の条件や希望もしっかりと伝えることで、双方の食い違いを防ぎ、離職率を下げている(石川県/その他/1店舗)
  • 当店に合わない、合わなさそうな人は入れない(三重県/その他/1店舗)

■その他

  • 可能な限り、交通費のかからない近隣住人のなかからスタッフを雇用する(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
  • 知人、友人を介して紹介してもらっている。人柄重視で採用する(神奈川県/カフェ/1店舗)

人材不足が深刻も、人手を補うテクノロジーの導入は進まず

人材不足を補う目的で導入したテクノロジーを尋ねたところ、最も多かったのは「特になし(64.3%)」との回答。実際の導入状況を見ても、「食洗機・ロボット掃除機」が17.1%、「予約台帳・予約管理システム」が16.6%と、人材不足を補うテクノロジーの導入はあまり進んでいない様子がうかがえる。

最後に、従業員のモチベーションや定着率アップのために行っていること、もしくはやめたことを答えてもらった。行っていることについては、定期的に面談を実施したり、こまめにコミュニケーションを取ったりしているという声があがったほか、日々のシフトや評価制度などの仕組みを工夫している店舗も見られた。

■行っていること

定期的に面談を行う
  • 定期的に食事会兼面談を行い、仕事に対しての習熟度合いの確認や給料増などの話し合いを行うようにしている(神奈川県/バー/1店舗)
  • 定期的に面談をするように心掛けている(東京都/イタリア料理/51~100店舗)
こまめにコミュニケーションを取る
  • コミュニケーションを取る機会を設けている(東京都/イタリア料理/1店舗)
  • 正社員との対話を通じてのモチベーションアップなどをしております(東京都/イタリア料理/6~10店舗)
従業員の希望に沿ったシフト対応
  • 従業員のシフト変更や有給休暇にできるだけ対応する(東京都/カフェ/1店舗)
  • シフトは基本的に希望通りにする(愛知県/洋食/3~5店舗)
その他
  • 話しやすい、相談しやすい環境づくり(大阪府/中華/3~5店舗)
  • 親睦会や給与など待遇の充実を行っている(東京都/和食/1店舗)
  • 評価シートを用いて平等に評価する(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
また、従業員のモチベーションや定着率アップのためにやめたことについては、「懇親会や歓迎会の廃止」という声が複数の店舗からあがった。親睦会等を積極的に行う店舗も多いが、「プライベートを優先したい人が多い」、「すぐにやめるアルバイトがいる」などの理由からやめた店舗もいるようだ。

■やめたこと

レクリエーションや親睦会
  • 以前はレクリエーションなどや他店の視察ツアーなどもやっていたがプライベートを優先するものが増えてきたためやめた(愛知県/和食/1店舗)
  • 懇親会などをやめた(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
過度な指示や強い指導
  • 以前は非常に細かいマニュアルを作成して、時に箸の上げ下げまで指定するような状態だった。その方が未経験者に寄り添えると思っていたがやめた。現在はある程度の型を説明して都度修正を入れるような教育に変えた(東京都/イタリア料理/51~100店舗)
  • 厳しくしない(東京都/フランス料理/1店舗)
その他
  • 無理にシフトに入るのをお願いしない(東京都/専門料理/1店舗)
  • 良い人材が欲しいため、広告業者を使わない事にした(東京都/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
アフターコロナに向けた動きが活発化するなか、人材の確保が急務となっている店舗も多い。今回のアンケートでは、各店さまざまな工夫をしながら人材確保をしている様子がうかがえた。人手不足に悩んでいる店舗は、他店の様子も参考にしながら、改めて自店舗の対策を見直してみてはどうだろうか。

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