飲食店の開業・出店について調査。約45%が店舗拡大に意欲も、悩みのトップは「物件探し」
2024年3月18日

<本調査について>
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)回答数:368
調査期間:2024年2月15日~2024年2月22日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち71.2%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は49.7%(首都圏の飲食店の割合は67.7%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。<調査結果について>
初出店時の自己資金、飲食店の4割超が「500万円未満」
はじめに、現在運営中の店舗の物件探しにかかった期間を尋ねたところ、最多は「3ヶ月以上~6ヶ月未満」との回答で、25.0%。次いで「1ヶ月以上~3ヶ月未満(23.6%)」、「6ヶ月以上~1年未満(21.2%)」との回答が続いた。全体では63.9%の飲食店が、3ヶ月以上かけて物件を決定していることがわかる。

次に、初出店時の自己資金額を答えてもらったところ、44.9%が「500万円未満」と回答。「500万円以上~1,000万円未満」は27%、「1,000万円以上」は28.3%となっており、500万円未満で初出店をする店舗が多いことがわかる。

また、飲食店出店時の悩みや課題について尋ねた質問では、「物件探し」が67.7%で最多。このほか、「厨房・内装工事(44.3%)」、「開業・運営資金の調達(39.4%)」との回答も目立つ結果となった。

続いて、飲食店出店時の資金調達方法について尋ねたところ、「負債を増やす(金融機関から融資を受ける)」との回答が最も多く63.0%。「補助金・助成金を活用する」という店舗も27.4%見られたが、金融機関からの融資が資金調達の定番となっているようだ。

さらに、物件情報の収集について答えてもらった。すると、最も多かったのは「不動産仲介業者」との回答で65.5%。次いで、「オンライン不動産ポータルサイト(飲食店ドットコム・テンポスマートなど)(42.4%)」、「他の店舗経営者や業界関係者とのネットワーク(34.5%)」との回答が続いており、複数の収集方法を活用している店舗も見られた。

人材不足を理由に店舗拡大を断念する店舗も
また現在、店舗の拡大を検討しているか質問したところ、45.1%が「検討している」と回答。一方で、40.5%が「これ以上の拡大は検討していない」と回答しており、全体的には店舗拡大に意欲的な飲食店がやや多い状況だ。

そこで、なぜそのような回答を選んだか理由を尋ねると、店舗拡大を検討している店舗からは、「売上の拡大」を期待する声が多く寄せられた。一方で、これ以上の拡大は検討していないという店舗からは、「人材不足」や「経営方針」などの課題が見えてきた。
<「店舗拡大を検討している」理由>
■利益を伸ばしたい
- 今よりももっと売上と収入を増やしたいから(福岡県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 利益をさらに増やし、スタッフに還元したいから(東京都/イタリア料理/1店舗)
- 1店舗利益だとやはり限界があり、店舗数を増やしていかないと増益しない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
■従業員の育成や給与への還元のため
- 既存店舗の集客が溢れかえっており、かつ既存スタッフの成長があるため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/11~30店舗)
- 若いスタッフに新しい現場を体験させたいとの欲求もある(愛媛県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 社員の給与アップのため(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
■その他
- 1店舗目が安定しているから(東京都/和食/1店舗)
- もう少し店舗を増やせば規模のメリットが活かせると思うから(大阪府/焼肉/6~10店舗)
- 好立地物件が空いてきているため(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 一つの業態では不安定だと、物価の高騰を受けてつくづく思い知ったので(神奈川県/ラーメン/1店舗)
<「これ以上の拡大を検討していない」理由>
■人材不足のため
- 人材確保が難しいため拡大路線を保留(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 人員不足。現在の1店舗でも厳しい状況である(長野県/中華/1店舗)
- 信頼してお店を任せられるような人が他にいないため(広島県/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
■目の届く範囲で経営をしたい
- 自分の手の届く範囲の中で事業をしたいため(大阪府/カフェ/1店舗)
- 全て自分の手の内でお客様をお迎えしたいため(東京都/バー/1店舗)
- 自分の目の届く範囲で責任ある仕事を完結したいから(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
■拡大のメリットを見いだせない、既存店舗を安定的に運営したい
- 現在の店舗での売上を成長・安定化させることが当面の課題であるため(大阪府/カフェ/1店舗)
- 家族経営で、これ以上の拡大は不必要と思っているため(新潟県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 2店舗で利益が十分に出ていて、これ以上店舗を増やすと力の分散になると予想しているから(東京都/フランス料理/2店舗)
- 店舗を増やすと店のクオリティが落ちる(東京都/フランス料理/1店舗)
フランチャイズ加盟検討率は約1割。自由度の低さやロイヤリティ負担などが理由
続いて、2店舗目以降の出店を考えた際に、「出店したいと思う立地・業態の条件」を2つ選んでもらったところ、最も多かったのが「未出店エリア&既に展開している同業態」との回答で60.6%。次いで、「出店済エリア&新たに展開する業態(51.9%)」、「出店済みエリア&既に展開している同業態(46.5%)」、「未出店エリア&新たに展開する業態(41.0%)」との回答が続いた。

また、次回出店時にフランチャイズ加盟で出店したいと思うか尋ねた質問では、「はい」が13.6%、「いいえ」が86.4%と、8割を超える店舗がフランチャイズ加盟ではなく、自分のお店を出したいと考えていることが明らかとなった。

次にその理由を教えてもらったところ、フランチャイズ加盟で出店したいという店舗からは、「確実な経営ノウハウがある」という声が目立った。これに対し、自分のお店を出したいという店舗からは、「経営の自由度が下がる」点や、「ロイヤリティ支払いの負担」などを懸念するコメントが寄せられた。
<「フランチャイズ加盟で出店したいと思う」理由>
■確かな経営ノウハウを活用できる
- パッケージが出来上がっているから(東京都/カフェ/1店舗)
- ノウハウを知りたい(大阪府/ラーメン/1店舗)
- 経営モデルが確立しているため(東京都/カフェ/2店舗)
<「フランチャイズ加盟ではなく、自分のお店を出したいと思う」理由>
■自由に経営をしたい
- フランチャイズは制約が多いから(兵庫県/専門料理/1店舗)
- 自由度が減る為。条件良ければ検討はできます(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 自由度が少なく個性を出しづらい(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
■ロイヤリティの負担が懸念される
- ロイヤリティがもったいないと思うから(福岡県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- ロイヤリティなどの事を考えると、難しいと思うので(東京都/フランス料理/1店舗)
- ロイヤリティがかかるので、自分でやった方が利益率が高いかと(神奈川県/イタリア料理/1店舗)
■オリジナルの経営ノウハウを確立できている
- 自社でノウハウを保有している(東京都/イタリア料理/3~5店舗)
- 自社でブランドを作り出す力があるため(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
- 自身のやっている業態に自信がある。他でやって事業拡大は考えていない(東京都/和食/2店舗)
飲食店の法人化準備、対応が二極化する結果に
また、これまでに法人化の準備をしたことがあるか答えてもらったところ、最多は「準備したことがない」との回答で44.6%。続く、「準備したことがあり、法人化をした」との回答も43.5%と、二極化する結果となった。また、「準備はしたことはあるが、法人化はしなかった」との回答も12.0%見られた。

最後に、それぞれの回答を選択した理由について尋ねたところ、以下のようなコメントが寄せらせた。
<「準備をしたことがない」理由>
■法人化する規模ではない
- 今の規模や状態でメリットを感じない(東京都/イタリア料理/1店舗)
- 法人化のメリットが発生する売上規模にまだ到達していない(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 法人化してもメリットのない売上規模だから(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
■個人事業主でいたい
- 個人事業主の方が気楽だと思う(東京都/専門料理/1店舗)
- 個人事業主の方が様々な考えや決断、行動がしやすいと感じているため(大阪府/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
- 個人自営業でこじんまりしたい(大阪府/アジア料理/2店舗)
<「準備をしたことはあるが、法人化はしなかった」理由>
■タイミングを見計らっている段階
- 法人化のタイミングは検討中のため(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- タイミングを図っている(東京都/イタリア料理/2店舗)
- 今回の移転を機に法人化する予定(福井県/洋食/1店舗)
<「準備をしたことがあり、法人化をした」理由>
■将来を見据えて
- 事業拡大をするつもりだったため(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 今後を見据えて知人に法人化を頼める方がいたのでお願いしました(東京都/中華/1店舗)
- 会社をある程度の大きさまで大きくしたいから(東京都/フランス料理/2店舗)
■節税のため
- 税金対策です!(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 金融機関に対しての信用、税法上のメリット(新潟県/洋食/1店舗)
- 税制の面でそうしました(神奈川県/ラーメン/1店舗)
■その他
- 営業譲渡を考えた信用度を高めたかった、ゆくゆくは特定の個人に頼らない経営にしたい(東京都/和食/1店舗)
- 業績が伸びてきたので法人化にした方が都合が良かったため(埼玉県/ラーメン/3~5店舗)
- 最初に法人を作ってから店舗をオープンさせた(千葉県/バー/1店舗)
- 社員の福利厚生のため(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
飲食店を出店するには、資金調達や物件探し、内装工事などさまざまな準備をしなければならないが、事業規模や業態などによって必要な準備は異なる。今回のアンケートでも、店舗ごとに回答が割れる場面が見られた。出店を考えている飲食店は、今後どのような店をつくりたいのか、イメージを具体化していく作業から始めたい。
飲食店経営者が集う「飲食店リサーチ」
アンケート調査結果が見れる!店舗経営に役立つ!


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