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1 給与の「デジタル払い」が解禁へ
厚生労働省は2022年10月、給与をデジタルマネーで支払う制度の導入を盛り込んだ労働基準法省令改正案を了承しました。2023年4月より、労働者側の同意がある場合などに限り、企業は給与を「デジタル払い」できるようになります。給与のデジタル払いとは、企業が銀行口座を介さず、スマホ決済アプリや電子マネーを利用して給与を振り込める制度のこと。利用すれば、従業員は給与をPayPay、LINE Pay、メルペイなどといったキャッシュレス決済サービスの残高として扱えるようになります。
給与のデジタル払いが実現すれば、従業員がATMで現金を引き出す手間を省けるほか、銀行口座開設のハードルが高い外国人労働者もスムーズに報酬を受け取れるようになります。また、日雇いスタッフやアルバイトなど、都度払いを好む非正規従業員の利便性もアップします。
企業側は、銀行に毎月給与振り込みをせずに済むため、業務効率化、手数料削減効果が期待できます。ただし、給与のデジタル払いでの振り込みには100万円の上限が設定されており、デジタル給与払いが利用できないケースも出てくると考えられます。また、給与のデジタル払いと賃金払いの両方を求める従業員が出てきた場合、二重運用の手間がかかります。デメリットも知った上でデジタル払いの導入を検討することが大事です。
2 副業がさらに広まり、働き方の多様化が進む
昨今、副業・兼業が推奨されています。新型コロナの影響により、企業の合理化やワークシェアリングの拡大、正社員の非正規化が進み、副業を始める人はますます増加し、飲食業界での副業への関心も高まっています。事業主が他に仕事を持つ副業従業員を雇用する際は、法律・契約などの観点から注意すべき点があります。例えば、労働時間についてです。法律では「1日8時間、1週間40時間を超える労働は原則不可」ですが、「労使間で『36協定』を締結している場合、協定で定められた上限時間まで、例外的に労働者に時間外労働をさせることができる」とされています。また、時間外労働に対して25%以上の割増賃金を支払う必要があると定められています。
副業従業員の場合、このルールは全勤務先における労働時間の通算に対して適用されます。そのため、本業で働いた後に副業先である自店で働き、1日の労働時間が8時間を超えた場合は、割増賃金を自店で支払わなければなりません。本業・副業のいずれかが正規雇用でなく、アルバイト雇用である場合も同様です。
もちろん、副業人材の雇用にはメリットもあります。新型コロナの自粛ムードが落ち着いた現在。営業を本格化したいけれど、休んでもらっていた従業員が他業種でもアルバイトを始め、従業員の人数は足りているのにシフトが埋まらない……といった店舗は少なくないでしょう。そんなときも、副業従業員を雇えばシフトの隙間時間を埋められる可能性があります。
ただし、同業の場合はノウハウの流出に注意が必要です。競合他社との兼業は禁止とし、副業先の届け出を義務付けるなどの対策が有効です。
3 政府が特別休暇制度の導入を推進
企業が従業員に与えることが義務とされている法定休暇の他に、企業が設けるものは「特別休暇」と呼ばれます。近年、政府は「働き方・休み方改善ポータルサイト」を運用し、特別休暇の導入・普及を推進しています。特別休暇は、結婚や配偶者の出産、忌引きに係る休暇などの広く知られたものから、裁判員休暇やボランティア休暇、新型コロナに係る休暇などの目新しいものまでさまざまです。福利厚生の一環として、こうした休暇の導入もすることは採用面で他社との差別化につながるでしょう。
多くの飲食店が慢性的な人手不足に悩む中、新たな制度やシステムの情報を積極的に収集し、自店にあったものを取り入れることは、人材確保成功のひとつのカギと言えそうです。今後もぜひ、採用・労務にかかわる制度の最新情報にご注目ください。
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