食品期限表示ガイドライン改正、6割の飲食店が「影響なし」と回答。食品ロスに関する現場の本音を調査
5月20日

このガイドラインの改正により、数多くの食品の消費期限や賞味期限が延びる可能性があり、飲食店の食品廃棄ルールについても少なからず影響を及ぼすと考えられる。そこで今回は、飲食店経営者や運営者に対してアンケートを実施し、食品ロスや廃棄の現状についてお伝えする。
<本調査について>
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)回答数:316
調査期間:2025年4月17日 ~ 2025年4月21日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち71.8%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は50.6%(首都圏の飲食店の割合は68%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。<調査結果について>
82.3%の飲食店が「仕入れ量の最適化」で食品ロスを対策
最初に、食品ロスを削減するために、現在行っている取り組みについて複数回答で尋ねた。最多は「仕入れ量の最適化」で82.3%。次いで「食材の適切な保存方法の実施(60.4%)」「ひとつの食材を複数のメニューに使う(48.1%)」「調理方法の工夫(44.3%)」「メニューの見直し(37.7%)」と続き、「特に何も行っていない」と答えた飲食店は1.9%だった。
次に、経営する店舗で廃棄量を最も減らしたいものについて尋ねた。その結果、最も多かったのは「保管中に鮮度が落ちた・傷んだと感じた食品(40.2%)」で、次いで「消費・賞味期限内に使いきれなかった食品(28.2%)」「提供後にお客によって残された料理(10.8%)」と多く、全体回答の79.2%を占めた。

食品在庫管理の課題は「手間」と「従業員の意識改革」
食品の在庫を管理する上での課題について聞くと、「特にない」と答えた飲食店が32.6%で最多であった。次いで「管理に手間がかかる」が31.6%で多く、「従業員の意識改革が難しい(17.7%)」「どの食材がロスになりやすいか把握しきれない(12.0%)」と続いた。
その上で、食品の鮮度を保ち安全に提供するための工夫について複数回答可で尋ねたところ、「冷蔵・冷凍保存の徹底(80.7%)」が最も多く、「加熱殺菌処理(16.8%)」「乾燥・脱水処理(9.2%)」と続いた。

食品期限表示ガイドラインの見直し、6割が「影響しない」
こうした背景がある中で、2025年3月に消費者庁が見直しを発表した「食品期限表示の設定のためのガイドライン」について認識があるかを尋ねた。結果は「聞いたことはあるが、詳細な見直しについて知らない」が43.0%で最多に。次に「見直しについて、知らなかった(28.5%)」「そもそもガイドラインについて知らない(20.6%)」が続き、「詳細な見直し内容を知っている」との回答は7.9%に留まった。
さらに、食品の消費・賞味期限をこれまでより長くするというガイドライン変更が店舗の業務に影響があるか尋ねたところ、「大きく影響する(9.2%)」「やや影響する(29.4%)」に対し、「あまり影響しない(48.4%)」「まったく影響しない(13.0%)」と影響はないという回答が約6割を占めた。

あわせて上記の回答の理由について自由記述で尋ねたところ、以下のようなコメントが寄せられた。
<「大きく影響する」(9.2%)「やや影響する」(29.4%)と答えた人>
食材ロスの削減とコストメリットへの強い期待
- 食材高騰で賞味期限が長くなればロスを少しでも減らすことができるので、助かる (東京都/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 大きいロットで注文できるので、コストが下がる (京都府/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)
仕入れ・在庫管理の大きな変化と業務効率化への期待
- 消費賞味期限が延びれば仕入が抑えられるものがある。ただ、なぜ延ばせるのか知りたい。 (埼玉県/バー/1店舗)
- 期限が延長するということで、仕入れサイクルも変わるため。 (神奈川県/洋食/3~5店舗)
衛生管理、品質への注意、従業員教育の必要性
- ロスが減るが食中毒の危険性も増す為。 (大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 従業員の意識も薄れるためその点に対する意識の改善に時間、手間がかかる (東京都/イタリア料理/1店舗)
- 賞味期限と消費期限の理解度を高めていく必要がある。もっと自分の判断が必要になる。 (東京都/イタリア料理/1店舗)
<あまり影響しない(48.4%)まったく影響しない(13.0%)と答えた人>
現状の食材管理体制でロスが少ない、またはコントロールできているため
- 客数を予測した仕入れがある程度うまく行っているため (東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 常に予約件数に合わせて食材発注と管理を行っているので、コロナのような事が無ければ今のところは大丈夫と感じている為。 (東京都/その他/3~5店舗)
独自の鮮度基準や判断軸があり、表示上の期限に大きく左右されないため
- 賞味期間はあくまでも目安で、結局はその食材は確認しなければいけないので、あまり変わらない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 期限はもちろんだが自分の嗅覚や見た色味などで判断するのは変わらないから (東京都/イタリア料理/1店舗)
また「大きく影響する」「やや影響する」と回答した飲食店に、具体的にどのような業務に影響が出そうか尋ねたところ、「食材の仕入れ判断」が62.3%と最も多く、次いで「在庫管理・棚卸し(41.8%)」「廃棄ロス削減対応(32.0%)」「メニュー設計・表示対応(18.9%)」と続いた。

これらを踏まえて、ガイドラインの変更によって食品の管理ルールを変更する予定があるか尋ねたところ、「すでに変更した」という回答は2.8%だった。また、「変更する予定がある」も27.9%に留まり、「変更する予定がない」と答えた69.3%が最も多い回答となった。

食材価格の高騰が続いている昨今、食品ロスの削減はコスト管理の観点からもますます重要性を増している。今回改正されたガイドラインの趣旨でもある「食品ロスの削減」は、社会全体の課題であると同時に、飲食店の経営安定化にも寄与するものだ。
飲食店においては、改めて自店の食材管理方法や廃棄状況を見直し、本ガイドラインへの理解を深めながら、より一層効果的な食品ロス削減策を検討していくことが求められるだろう。
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