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「飲食店は値上げすべき」。繁盛店『一歩一歩』に聞く食材高騰時代を生き抜くヒント
東京、沖縄に9店舗を展開する人気店
昨今、飲食業界では値上げの話題があとを絶ちません。最近は天候不順による野菜の高騰が注目を集めていましたが、慢性的な人手不足による人件費の高騰、酒税法の改正によるビール類の価格上昇に加えて、業務用の米や牛肉、天然魚などの価格も右肩上がりの兆候があります。値上げや営業時間短縮に踏み切る企業も増えてきましたが、デリケートな問題のため、二の足を踏んでいる経営者も少なくないのではないでしょうか。この厳しい時代をどう生き抜いていけばいいのか、そのヒントを東京(北千住)と沖縄(那覇・石垣)で現在9店舗の飲食店を経営している株式会社一歩一歩の代表取締役・大谷順一さんに教えていただきました。
大谷さんが舵を取る株式会社一歩一歩の飲食店は、化学調味料を一切使用せず作り上げる手作り料理が評判です。食材の高騰の影響はあったのでしょうか。
「実はあんまり気にしてないんですよ(笑)。スタッフから 『白菜が高い』って話が出てくるんですけど、調べてみたら、うちでは白菜は一カ月に10個しかとっていなかったんです。1個700円だったとしても7000円。例えばですけど『700万の売り上げに対して7000円だったら原価率は何パーセントだと思う?』って聞きます。0.1パーセントですよね。だから『気にするな、ビビらなくていいよ。あとから儲けさせてもらえるから大丈夫』って言ってます」
「気にしなくていい」には、ワケがある
株式会社一歩一歩の代表取締役・大谷順一さん
一過性の高騰には戸惑わない。だから「代替品なんて、今、言われるまで考えたこともなかった」と笑います。
「少しいやらしい言い方ですけど、食材の高騰などで一時的に原価率が高くなってしまうものがあるなら、上がりのいいモノも入れたらいいじゃないですか。ただ『儲かるものを考えろ』って言われて、すぐに考えられる人なんていませんから。そういう場合は、過去のデータをすべて見直すんです。2年前に売れたのもが1年で売れなくなることもあるし、その逆もある。その理由を徹底的に追求していくようにしています」
大谷さんは売り上げのデータ管理を徹底。内訳までをスタッフで共有して、原価率安定のための取り組みを常に行っています。厳しい風に動じない理由は、ここにありました。
「うちの場合は、いつ、何が売れたか、その内訳まで全部残すんです。内訳が分からないと、計算原価と理論原価がズレてしまう場合がある。そもそも、ポーション、原価率、売価、この3つのバランスを見て、価格を決めてから販売しているのだから、量を守っていれば絶対に原価率は上がらないはずじゃないですか」
一歩一歩が経営している飲食店には、和食を中心に、炉端焼き、寿司屋、カフェ……とさまざまな業態がありますが、店舗ごとではなく、全体で考えたときに目標原価32%を割っていなければ「問題ない。それ以上は何も言わない」という方針なんだそうです。
「店舗ごとで考えるようにしてしまうと、店長の負担が大き過ぎると思うんです。なので、僕からは数字については一切言いません。従業員たちが立てた売り上げ目標が未達でも達成でも何も言わない。一生懸命やってれば売り上げは伸びると思っていますから。実際に、昨対を割ったことは一度もないですね」
値上げは「していくべき」
原価率安定のため売り上げのデータ管理を徹底する
また、昨今の値上げの問題についての見解を聞くと「飲食店は、どんどん値上げしていくべきなのでは」とキッパリ。
「実際にうちもレモンサワーを420円から480円に値上げしてます。その代わり、サワーグラスを全部捨てて、60円分価値のあるグラスに変えてお客さまが『こんなグラスでサワーが飲めるの?』ってビックリされるようなものにしたんです。その結果、売り上げは変わってないですね。ビールの値段は変える予定は、今のところはないです。今の時代、とりあえず生を頼む人って少ないですから、だったら『そのままでいいんじゃない』って」
上記のサワーで使用するレモンは、国産の減農薬のみとこだわりを発揮(ライムも同様)。値上げ後の料金設定でも “むしろ安いのでは”とよぎってしまう、贅沢なサワーです。
「本来、皮の部分に香り・おいしさが閉じ込められてるのに、普通の飲食店だと農薬の問題で使えないことが多いんですよね。うちでは皮まで問題なく使えます。香りも含めて楽しんでほしいんですよ」
原材料にこだわる理由は、足を運んでくれた方が、どれだけ満足して帰ってもらえるかを大谷さんが常に意識しているから。「結局、おいしいものを腹いっぱい食べてほしいだけなんですよ」と、大きな笑顔で語ります。
「さっきも話した通り、売り上げの具体的な数字については何も言わないんですけど、レシートの長さを徹底的に見ろって指示してるんです。レシートが長ければたくさん注文をされていて、短ければあまり食べてないってことですから。レシートを見る方ってそう多くはないかもしれないんですけど、長いと『結構食べたな』って思いませんか?(笑)同じ値段でもたくさん食べられたってことは、それだけ満足してもらえたのかなって考えてるんです。忙しいときでも、レシートの長さだけなら、直感的に分かりますから」。
徹底したデータ管理と、顧客満足度の追求に加えて、従業員への心遣いも忘れない。それらを大切にしながら前進してきた大谷さん。「店長の記憶ではなく、店舗全体の記録を大切にしてるんです」という言葉が印象的でした。
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