食の安全を守る「HACCP」の認知度や導入率を調査。飲食業界は、まず周知が課題に

2019年7月3日

画像素材:PIXTA
国際的な食の衛生基準として、近年話題となっている「HACCP」。飲食店への義務化も決定し、ますます注目を集めている。実際に飲食店経営者やスタッフは、HACCPについてどれくらい把握し、どのように実践しているのだろうか。今回「飲食店リサーチ」では、「HACCP」に関するアンケート調査を行った。結果とそこからわかった実態をお伝えする。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:324名
調査期間: 2019年5月9日~2019年5月24日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「HACCP」に関するアンケート調査

■回答者について
回答者のうち69.1%が1店舗のみを運営している。また、東京にある飲食店の割合は56.8%(首都圏の飲食店の割合は75.9%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

そもそも「HACCP(ハサップ)」とは?


まず、今回のキーワードである「HACCP」を知っているだろうか? HACCPとは「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の頭文字からつくられた言葉だ。

厚生労働省ホームページには、「食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法」とある。簡単に言えば、食に関わる人たちが皆で連続して監視し、食品の安全性を高めていくシステムを指す。

このシステムは、国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格委員会から発表されており、国際的にも認められている。日本ではこれまで、HACCP の整備を主に食品製造業者で進めてきたが、飲食店にもHACCP の考え方を導入することで、衛生管理を見える化し、より効果的に衛生管理ができるようになると期待されている。

「HACCP」に沿った衛生管理の義務化を約6割が知らない


アンケート調査でははじめに、「2018年6月に公布された食品衛生法の一部改正により、原則として飲食店にも『HACCP』に沿った衛生管理が義務化されたことを知っているか」尋ねた。結果は、「知っている(43.2%)」を「知らない(56.8%)」が上回り、HACCPの義務化が飲食業界にまだまだ浸透していないことが明らかになった。

続いて、「『HACCP』の対策状況」について尋ねた。「対策している」は21.6%に留まった。「現段階で対策していないが、対策する予定はある」(41%)と「現段階で対策していないし、対策する予定もない」(37.3%)は約半々という結果になった。

「対策をしていない理由」を尋ねてみると、「知らなかった」「アンケートでHACCPを初めて知った」「理解していない」といった回答がかなり多く見られた。複数店舗を経営する経営者の回答にも「知らない」は目立った。周知徹底が今の課題と言えそうだ。

ただ、「食品衛生法の改正について何で知ったか」という質問に対する回答からは、その難しさが見えてきた。回答の中で一番少なったのは、「テレビニュース」の8.6%だった。

「食品衛生法」という特定の人だけが普段気にかける法律の改正であったため、情報がマスメディアで取り上げられる機会は圧倒的に少なく、耳や目にしづらかったのではないかと想像できる。一方、一番多かった回答は「インターネットニュース」だった。日々、アンテナを張って情報収集をしている人は情報に触れることができたのだと考えられる。

多くの飲食店は、HACCPに通じる「一般的衛生管理」には熱心


次に、厚生労働省が公開している「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」を読んだ上で、「既に取り組まれている「HACCP」の項目」を回答してもらった。「庫内温度の確認(冷蔵庫・冷凍庫)」が78.6%で1位、「トイレの洗浄・消毒」と「手洗いの実施」は共に75.7%で、同率2位だった。

結果からは、多くの飲食店において、「一般的衛生管理」が適切に実施されていることが明らかになった。HACCPの概要を見ると、自分たちは何ができるのか、何をすべきなのかわからなくなってしまうかもしれない。しかし、日々の一般的衛生管理はHACCPに通じる。まったく新しいことではないことが分かれば、さらなる一歩を踏み出しやすくなるだろう。

食中毒の時期に向け、各店舗で意識は高まっている


最後に、「『HACCP』対策はいつ頃から実施予定か」を尋ねた。一番多いのは「夏」(35.3%)で、全体の1/3を占めた。梅雨や夏季は湿度や温度が高まるため食中毒の危険性も高まる。各店舗での食品の管理が重要であることを認識していることがわかる結果になった。

食品の管理の重要性や方法をわかっているのが経営者や店舗責任者だけでは不十分だ。衛生管理をしっかりと見える化し、店舗全体の意識を高めていくことで、万が一の事態を防げるようになるはずだ。

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