キッチンカー運営、最大の壁は「出店場所」。飲食店オーナーが抱く期待と現実
7月22日

今回、飲食店ドットコムでは、飲食店経営者・運営者358名を対象にアンケートを実施。キッチンカー運営のリアルな実態と、参入における「期待」と「現実」のギャップを探った。
<本調査について>
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)回答数:358
調査期間:2025年6月10日 ~ 2025年6月16日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち70.4%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は49.7%(首都圏の飲食店の割合は66.2%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。<調査結果について>
キッチンカーを運営している飲食店はわずか5.1%だが、潜在的関心は高い
最初に、現在の営業形態について尋ねた。最多は「店舗のみ」で94.4%。「店舗とキッチンカーの両方」と答えた飲食店は4.5%、「キッチンカーのみ」の回答はわずか0.6%で、何らかの形でキッチンカーを運営している飲食店はわずか5.1%にとどまった。
あわせて上記の回答の理由について自由記述で尋ねたところ、以下のようなコメントが寄せられた。
<「店舗のみ」と回答した人>
店舗を持つことが当たり前、夢だった
- 飲食店とはそういうものだと思っていた。(神奈川県/焼肉/1店舗)
- 独立して店舗を構えるのが夢だったから(東京都/イタリア料理/1店舗)
- 地域に根差した店舗を最初にやるため(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
業態やコンセプトがキッチンカーに不向き
- 提供したい料理とサービスが店舗でなければ表現できないから(大阪府/フランス料理/1店舗)
- 炭焼きにこだわりがあるため店舗のみで営業しています。(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
人手や衛生面の懸念
- 人手が足りないのでキッチンカー事業に手が出せない(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 衛生面で、私はキッチンカー営業の店で飲み食いしたくないので、私がキッチンカー営業することは考えられません。(東京都/和食/1店舗)
<「店舗とキッチンカー両方」または「キッチンカーのみ」と回答した人>
初期投資の低さやテストマーケティングとして
- キッチンカーの方が店舗を造作するより費用が安かったから(東京都/その他/51~100店舗)
- 特殊な商品で、私の飲食業経験も浅いため、トライ&エラーをたくさん出来るようにキッチンカーで始めました。(東京都/その他/1店舗)
コロナ禍やイベント出店をきっかけとした販路拡大
- コロナの時に外販を考えた結果行き着いた(東京都/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)
- イベント出店依頼が多く、キッチンカーを導入したほうが売上あがるなと思ったため。(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
その後、キッチンカーを運営していない340名に対し、営業を検討したことがあるか尋ねた。その結果、最も多かったのは「キッチンカー営業を一度も検討したことがない(興味をもったことがない)」で50%と全体の半数を占めた。

次いで「キッチンカー営業を検討したことはあるが、実施に至っていない(39.4%)」、「キッチンカー営業をしたことはあるが、現在は実施していない(7.1%)」が続いた。さらに「キッチンカー営業を検討・準備している」という回答も3.5%あり、合算すると50%と半数の飲食店が、程度の差こそあれキッチンカー営業に関心を持った経験があることがわかる。
あわせて、キッチンカー営業を実施・継続しなかった理由、あるいは検討したことがない理由を自由記述で尋ねたところ、以下のようなコメントが寄せられた。
出店場所の確保が最大のネック
- 良い場所が取れるかなど場所の問題が大きい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗
- 出店場所の確保とマージンに苦慮しそうな印象が圧倒的なため(愛知県/洋食/1店舗)
収益性への疑問とコスト負担
- 実際のコストと利益のバランスが取れない(静岡県/専門料理/3~5店舗)
- 渋谷区恵比寿にて駐車場、月6万円。ドリンクは売れないし、容器代は価格高騰。二度とやらない。(東京都/焼肉/3~5店舗)
人手不足と運営の負担
- 人手が足りず検討で終わった(大阪府/イタリア料理/1店舗)
- 夏は暑く冬は寒い。一人での営業なので、出来るスタッフが揃えばまたやりたい(東京都/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
- ノウハウが分からなかったから。身近に情報を得られる機会がなかったため。(東京都/和食/1店舗)
期待するは「新たな収益源」と「イベント出店」。コスト面の魅力も
では、飲食店はキッチンカーのどこに魅力を感じているのだろうか。キッチンカー営業に興味を持ったことがあると答えた188名に対し、そのきっかけを聞いた。最も多かったのは「新たな収益源の確保(52.1%)」、僅差で「イベント出店への興味(51.6%)」が続き、売上拡大への期待が大きな動機となっているようだ。次いで、「初期投資・維持費の安さ(27.7%)」、「参入の手軽さ(26.1%)」といったコストや参入障壁の低さへの期待が続いた。その他、「店舗の認知度向上(18.1%)」や「顧客接点の拡大(13.3%)」など、既存店舗への相乗効果を期待する声も見られた。

7割が「天候」「出店場所」に不安。運営面の課題を強く意識
キッチンカーに対して飲食店経営者はどのようなイメージを抱いているのだろうか。複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「天候に左右されやすい(70.3%)」で、次いで「出店場所がわかりにくい(46.5%)」「運営が大変そう(45.6%)」「衛生面が心配(44.1%)」と続き、運営面の課題やリスクに関するネガティブなイメージが上位を占めた。
さらに、キッチンカー営業に関する不安な点や課題について、より具体的に聞くと、イメージ調査の結果を裏付ける結果となった。圧倒的に多かったのは「出店場所の確保・交渉(75.9%)」で、4人に3人が最大の課題と感じていることがわかる。次いで「天候に左右される(57.1%)」、「集客・販売戦略(49.1%)」、「収益性・安定性(46.8%)」と、事業の継続性に関わる項目が上位に並んだ。

経験者が語るリアル。最大の苦労はやはり「出店場所」と「天候」
ここからは、実際にキッチンカーを運営している18名の回答を見ていこう。経験年数は「3年~5年未満」が33.3%と最も多く、比較的長く続けている事業者がいる一方、「6ヶ月未満」も27.8%存在した。
彼らが営業をして「良かったこと」は、「新たな収益源の確保(55.6%)」がトップ。これは、未経験者が興味を持つきっかけの1位と一致しており、期待が実現されている側面があるようだ。次いで「初期投資・維持費の安さ(44.4%)」「出店場所を選べる(44.4%)」が続いた。

一方で、「苦労した点」を尋ねると、「天候に左右される(61.1%)」、「出店場所の確保・交渉(55.6%)」が半数を超え、未経験者が抱く不安が的中していることがわかる。「収益性・安定性」「体力的な負担」もそれぞれ33.3%と、運営の厳しさが浮き彫りになった。

参入の鍵は「出店場所の情報」。成功・失敗事例へのニーズも
最後に、キッチンカー営業を検討する上で、どのような情報があれば役立つかを尋ねた。結果は、これまでの調査結果を反映するように、「出店場所に関する情報」が75.0%で最多となった。次いで「成功・失敗事例(57.4%)」、「許認可・法規制に関する情報(52.9%)」、「初期投資に関する情報(52.6%)」と、参入前の情報収集に高いニーズがあることが示された。
多くの飲食店経営者がキッチンカーを「新たな収益源」として期待する一方、「出店場所の確保」や「収益の安定性」といった運営面の課題を強く感じ、参入に二の足を踏んでいる実態が明らかになった。
このギャップを埋めるためには、出店場所のマッチングサービスや、具体的な収支モデルを含むリアルな成功・失敗事例の共有が、今後の市場拡大の鍵となりそうだ。参入障壁が下がれば、キッチンカーは飲食事業においてより重要な役割を担う存在へと進化するだろう。
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