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急なシフト変更は違法?飲食店経営者が知るべき法的ルールとトラブル回避術

2021-02-15 13:20:42.0( 更新) 人材採用コラム

目次

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「アルバイトから急に『休みたい』と言われた」、「最近、売上が落ちているので、スタッフのシフトを減らしたい」。飲食店経営において、シフトに関する悩みは尽きません。しかし、安易な対応は「違法」と判断され、スタッフとの重大なトラブルに発展する可能性があります。この記事では、シフト変更において気をつけるべきポイントを紹介します。

この記事は、こんな方におすすめです。

  • ・シフトの変更について詳しく知りたい
  • ・シフト変更の正しい手続きがわからない
  • ・シフト変更で気をつけるべきことを確認したい

画像素材:PIXTA

会社都合のシフト変更は違法?

シフト制(シフト勤務)とは、交代制の勤務形態を指す言葉です。厚労省のリーフレットでは、「労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態」と説明されています。

シフト制は、飲食店ではアルバイトやパート従業員の勤務形態としてよく使われています。一般的には、スタッフ各々が提出した希望のシフトと、曜日や予約状況、人件費などを考慮し、店側が勤務スケジュールを確定します。

「売上が厳しい」「予約がキャンセルになった」などの店側の都合だけで安易にシフトを変更するのはご法度です。強引なシフト変更は、違法になる恐れがあります。

シフトは労働契約。一方的な変更はできない

いったん確定したシフトは、労働契約法上、労使間での労働契約と見なされます。労働契約とは、「労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの」(労働契約法第3条第1項)。そのため双方の合意なしに、決まったシフトをどちらかが一方的に動かすことは労働契約法上無効となる可能性や、労働基準法第26条(休業手当)の問題となる恐れがあります。

こんなシフト変更にはどう対応する?

シフトを組んだとしても、それはあくまでも予定であるため、その通りに運用できるとは限りません。スタッフから「急に休みたい」と連絡が来る日があれば、店の都合で「休み」や「急遽出勤」をお願いすることもあるでしょう。そういった場合、どのように対応すべきか、ケース別に解説します。

ケース1:従業員から「急に休みたい」と連絡があった場合

スタッフから、病気や怪我、忌引きなどの事情で、急にシフトを休みたいと言われることがあります。

病気や怪我を訴えている場合、無理やり働かせることはできません。企業には、労働契約法第5条(※1)により「労働者の安全への配慮」が義務付けられているためです。

例えば、伝染病にかかったスタッフを無理に出勤させれば、本人はもちろんのこと、ほかのスタッフの健康も害してしまう恐れがあります。「労働者の安全への配慮」を欠いた対応は労働契約法違反となるのです。

忌引きの場合、労働基準法などの法律上の規定はありません。しかし「慣例」や「人道的配慮」から欠勤を認める職場がほとんどでしょう。

代わりにシフトを埋めてくれるスタッフを見つけやすくするため、「メール連絡ではなく、まずは電話連絡をする」など最低限のルールを定めておくと良いです。

一方、「テスト勉強が間に合わないから、やっぱり今日は休みたい」といった「自己都合」で、就業時間近くになって休みを申し出た場合は、スタッフ側の契約不履行にあたる可能性があります。なるべくなら出社するように話し合いましょう。

休みを申し出たスタッフに「代わりにシフトに入ってくれる人を探すのがルール」と店側が強制する場合、労働契約上の義務ではないことや、従業員に過度な負担を強いることから、違法行為となり得ます。いざという時のために余裕を持って人員を配置しておくか、代替要員として働いてもらえる従業員の確保などを日頃から行っておくと安心です。

有給休暇が付与されているパートやアルバイトから取得の申請があった場合、店側が申請を断ることは原則できません。急なシフト変更が発生しないように、提出期限などのルールを設け、周知しておくとよいでしょう。

また、有給休暇に関し、労働基準法第39条5項において「時季変更権(請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる)」が定められています。ただし、多くの裁判例では繁忙期を理由にした時季変更権の行使を認めていません。つまり「今は忘新年会シーズンだから、店が落ち着いてから有給休暇はとって」は通用しないのです。

時季変更権の行使が認められるのは、『事業の正常な運営を妨げる場合』に限られます。代替要員の確保が著しく困難であるなど、ごく限られた具体的な事情がある場合です。飲食店の使用者と従業員の間で労働紛争が起こった事例もあるため、繁忙期がわかっている店であれば、そのシーズンは避けて申請をするように促しておくのがよい方法です。

ケース2:店舗都合で「休み」になってもらう場合

経営不振や予期せぬ閑散期などの理由から、元々入っていたシフトを店舗都合で休んでもらう、いわゆる「シフトカット」をする場合もあるでしょう。スタッフ側に収入の減少などのデメリットが生じるため、早急に真摯な説明をして納得してもらうことが第一です。

スタッフ側に責任がないにもかかわらず店の都合でシフトカットした場合は、原則として労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」と見なされ、休業手当を支払う義務が生じる可能性があります。どういった場合に支払う必要があるのかは、次章の「【シフトカット】休業手当の支払い義務と計算方法を完全理解」で解説します。

ケース3:店舗都合で「急遽出勤」をお願いする場合

ケース1のように、急な休みを取るスタッフが出た場合などには、状況によっては別のスタッフに急な出勤を要請する必要が出てきます。その際に快く対応してくれれば良いのですが、代替要員がなかなか見つからないケースもあり得ます。

その場合、あくまでも「お願い」レベルで出社を要請することが求められます。「予定を入れてしまったから行けない」などと相手が断っているのに強要することはできません。前述の通り、労働契約は、労働者と使用者の双方が対等の立場で合意した場合に締結されるためです。強要することは、パワーハラスメントに該当してしまう恐れがありますので、注意が必要です。
(※1)「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

【シフトカット】休業手当の支払い義務と計算方法を完全理解

店側の都合でシフトカットをしてしまうと、スタッフに休業手当を支払う義務が生じます。店が被災した場合など、不可抗力でシフトカットするケースでは例外とされますが、原則的には平均賃金の6割以上が休業手当として計算されます。

どのようなケースが支払い対象になるのか、また、例外とされるのか見ていきましょう。

休業手当が必要になるのは「会社都合」のとき

労働基準法第26条では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と、休業手当について定めています。

「使用者の責めに帰すべき事由による休業」とは会社都合を指します。つまり予定していたシフトを店の都合で急遽休みにしてもらい、スタッフが働くことができなかったときには、店側は「平均賃金の6割以上の休業手当」を支払う必要があるということです。

会社都合とされる理由には、閑散期や経営難で元々入っていたシフトを減らしたいという他に、
・原材料の不足などで営業が困難
・機械が故障するなどのトラブル、検査のための休業
などが該当します。

また、「半日休業」や「時間短縮営業」も労働基準法第26条で「休業」に含まれるとされています。「急な機械故障でランチタイムの営業を取りやめた」場合、ランチタイム分が休業手当支給の対象になります。

天災など、休業手当が不要になるケースとは

会社都合には当たらず、休業手当を支払わなくてもよいケースも一部あります。それは「不可抗力」、つまりやむを得ない状況のことです。

一例として、
・地震や洪水のような自然災害などで被災した
・健康診断の結果が思わしくなく、労働安全衛生法の観点から従業員を休ませる必要がある
が考えられます。こういった場合は「会社都合」とはみなされず、休業手当を支払わなくても良いとされています。

休業手当の計算方法

スタッフに会社都合で休んでもらう場合、「平均賃金の6割以上の休業手当」を支払う必要が出てくると説明しました。

労働基準法第24条によると、「平均賃金」とは、「これを算定すべき事由の発生した日(賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日)以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額をいう」とされています。

平均賃金と休業手当の計算方法は以下の通りです。

平均賃金の計算方法
・平均賃金=算定期間中(直前3ヶ月)の賃金総額(※2)÷直前3ヶ月間の総日数
ただし、労働日数や労働時間に変動のあるパート・アルバイトで、労働日数や労働時間が少ない場合、以下の計算を行うと良いでしょう。支払う休業手当が、以下の金額を下回ってはいけません。(※3)
・算定期間中(直前3ヶ月)の賃金総額÷直前3ヶ月間に労働した日数×60%

休業手当の計算方法
・休業手当=平均賃金×休業日数×60%以上
なお、60%以上とされているのは、60%払えばよいという意味ではなく、あくまでも最低保証を意味するものです。
(※2)交通費、残業代など各種手当含む
(※3)一般的なパート・アルバイトの場合も原則として労働基準法第12条第1項による計算を行います。

画像素材:PIXTA

シフト変更時に必ず確認すべき3つの注意点

急にシフトに入ってもらうことになった結果、総労働時間が長くなってしまったり、休日に働いてもらったりすることなどが考えられます。シフト変更時には、休日や割増賃金、扶養内控除の所得制限など、労務面でのチェックは欠かせません。

どういったポイントを確認するべきか、3つに分けてご紹介します。

① 法定休日・割増賃金は正しく適用されているか?


・法定休日とは
労働基準法第35条で規定されている、使用者が労働者に必ず与えなければならない休日のことです。毎週少なくとも1回、または特定の条件(※4)を満たす場合は4週間の間に4日以上と定められています。シフト制であっても、これに従います。

この法定休日にスタッフを働かせると、「休日労働」にあたります。使用者は35%以上の割増賃金を支払わなくてはいけません。

・割増賃金とは
シフト制の場合、1日8時間以内、1週40時間以内を法定労働時間、それを超えて働くと、時間外勤務手当の対象となり25%の割増賃金が必要になります。

さらに、働く時間帯にも注意しましょう。22時~翌日5時までは「深夜労働」として25%の割増賃金が発生します。

② 扶養内で働くスタッフの所得制限を超えないか?

主婦や学生など、扶養家族として扶養内で働く従業員の場合は、所得制限、いわゆる「年収の壁」を超えて働かせないように配慮しましょう。

大きく分けて、
・住民税や所得税を免除される扶養内で働くのであれば、年収103万
・社会保険料を免除される扶養内で働くのであれば、年収130万
これらを超えてしまうと扶養内から外れます。

シフト変更の際には労働時間が増えすぎないようにしてください。

③ 労働基準法や自社の就業規則に違反していないか?

シフト変更をする際は、その都度変更後のシフトが、労働時間(原則1日8時間、週40時間)、法定休日(週1日以上、4週4日以上)など、労働基準法に違反していないかについて確認します。

そのためには、自社の就業規則を見返して、就業規則の不利益変更に当たらないか、変更ルールに沿った運用ができているかについてチェックしましょう。
(※4)変形労働時間制で採用される、例外規定。

急なシフト変更を未然に防ぐための運用術

急なシフト変更に慌てないためには、未然に防ぐためのポイントを抑えておくことが大切です。

必ずすべきはシフトの「変更期限」をあらかじめルールとして明確にしておくことです。代わりの従業員を探すなどの対応が余裕を持ってできます。

また、スポットワークなどの単発アルバイトを活用して急な人員補充に対応したり、良好な職場環境づくりしたりしておくことも日頃からできる「備え」になります。

シフトの提出・確定・変更の期限を明確にする

シフトの提出や確定、変更するための期限や手続き方法を曖昧にするのではなく、就業規則に明記し、店舗のルールとしてスタッフへの周知を徹底します。

すでに確定したものを変更する場合は、少なくとも1週間前までには申し出るなど、具体的な期限を決めておき、急な変更をなるべく減らすようにします。

急な欠員は「スポットワーク」の活用も視野に

短期間・数時間単位で働く単発のアルバイト「スポットワーク」は、スマホアプリを使用して気軽に働けるので、利用する人が増えています。一時的な人手確保の手段として、飲食店では重宝するでしょう。急に人手がほしい、1日だけでもシフトに入れる人がいれば助かるという場合は、スポットワークを活用することも視野に入れてみると良さそうです。

日頃のコミュニケーションと良好な関係構築が重要

急なシフト変更が起きてしまう要因の一つには、スタッフがなかなか「休みたい」と言い出せないこと、事前に言ったら店に断られるのではないかと不安に感じてしまうことなどが考えられます。それを防ぐためには、スタッフが安心して働けるような心理的安全性の高い職場づくりをすることが重要です。そうすることで、何でも相談しやすい社内風土が生まれます。

日頃から双方でコミュニケーションを取りながら、店舗とスタッフの間に良好な関係を築いておくことが、安定したシフト運用をするための鍵となるでしょう。

まとめ

急なシフト変更は、店舗を運営していく上では起こりがちなことです。ただ、シフトは店とスタッフの間で締結された労働条件の契約であり、変更は容易なことではありません。

やむを得ず変更する場合は、変更後の労働条件が労働基準法に沿っていることなどを確認し、違法にならないようにすることが望まれます。

ただ、急な変更は発生しないに越したことはありません。できれば未然に防ぐための方法をあらかじめ考えて、日頃から備えておくこともおすすめです。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談には応じられません。具体的なケースについては、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

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この記事の著者
笹倉有起

笹倉有起

ライター

コピーライター、出版社の編集などを経てフリーライターに。紙媒体とWeb媒体の両方で、ワインやコーヒーなどの嗜好系、ビジネス系、日用品や化粧品の業界紙などいろいろ執筆。長野県への旅行にハマっていて、その土地の食べ物を食べるのが好きです。

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