1年間で賃金を増額した飲食店は40.8%。しかし人材の確保には不安の声も

7月13日

画像素材:PIXTA
新型コロナウイルス感染防止規制の緩和にともない、飲食店を利用する客足は増えつつある。そんな中、再び問題となっているのが「人材不足」だ。飲食店においては、業務オペレーションの見直しや、従業員への賃金額を再考する店舗も少なくないと予測される。

そこで今回は、従業員の給与に関係する飲食店の実情を調査するため、アンケートを実施。人件費の変化や、従業員を確保するためにどのような工夫を行っているかなど、飲食店のリアルな現状をお伝えする。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:458名
調査期間:2022年5月27日~2022年6月1日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち70.3%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は52.4%(首都圏の飲食店の割合は69%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

飲食店の67%以上が人材不足を実感。求人募集に対する応募数も減少傾向に


はじめに、アンケート回答者の店舗における従業員数の充足状況を尋ねたところ、現状は「やや不足している」が最も多く、48.9%。次いで、「充分である(32.5%)」、「不足している(13.3%)」、「かなり不足している(5.2%)」との結果になった。集計すると、67%以上が人材不足を実感していることがわかる。
そのうえで直近1ヶ月間の求人募集とその応募状況を聞くと、最多は「直近1ヶ月は募集していない」で47.4%。求人募集を行っている飲食店(n=241)のうち、56.8%は応募数が少ないと感じており、35.7%は応募自体がないことも明らかとなった。
次に、正社員(または月給契約の従業員)の平均月給を聞いたところ、最多は「正社員を雇用していない」との回答で、26.9%だった。一方、正社員を雇用している店舗では「21万円〜25万円(23.6%)」が最も多く、次いで「26万〜30万(22.7%)」、「31万〜35万(12.2%)」と続いた。
アルバイト(または時給契約の従業員)の平均時給については、「1,000円〜1,100円未満」が最も多く35.2%。次いで「1,100円〜1,200円未満」が20.1%となった。これは、本アンケートの回答者が経営する飲食店の52.4%が東京都にあること、東京都の最低賃金時間額が1,041円(2022年7月現在)であることなどを鑑みると、妥当な結果と捉えられる。
さらに、職種別の平均月給について尋ねると、「料理長・シェフ」、「店長・マネージャー」では、「26万〜30万円(22.8%、21.7%)」が最も多い結果に。同様に「調理・キッチンスタッフ」では「21万〜25万円(35.4%)」、「ホール・サービススタッフ」では「20万円以下(39.8%)」が最多となった。

約4割の店舗が賃金を増額も、「賃上げ促進税制」が適用されるのは3割に満たず


次に、直近1年間で雇用者に支払う賃金の総額に変化があったかを尋ねたところ、最多は「上がった」との回答で、40.8%。次いで、「変わらない(36.2%)」、「減った(10.7%)」と続いた。
「変わらない」、「減った」と答えた方に、今後1年以内に賃金を上げる予定があるか聞いてみると、「一部雇用者の賃金を上げる予定」が最も多く、34.9%との結果に。さらに、「上げる予定はない(33.5%)」、「わからない(24.2%)」と続いた。ちなみに、賃金を上げる予定はないとした72店舗のうち、51.4%が「正社員の平均月給21万円以上」、83.3%が「アルバイトの平均時給1,000円以上」と回答しており(いずれも本アンケートの最多以上)、現状で可能な限りの支払いがなされている結果とも読み取れた。
また、「上がった」と回答した方におおよその増額率を尋ねたところ、「5%以上」が最も多く32.6%。続いて「1.0〜1.4%(19.8%)」、「0.5%〜0.9%(13.4%)」となり、地域や業態の差が顕著に示される結果となった。
現在、政府が実施する政策のひとつに、飲食店経営者にも関わりのある「賃上げ促進税制」がある。これは賃上げに取り組む企業や個人事業主を支援するための制度で、従業員への給与支払い額が前年度より1.5~2.5%以上増加すれば、15~30%の税額控除が認められるというものだ(中小企業の場合)。

そこで、この「賃上げ促進税制」の認知状況について尋ねたところ、最多は「知らない」で、49.1%。概要まで含めると、8割以上が認識していないという結果になった。さらに、前述した賃金の総額の変化や増額率に関する回答をみると、適用要件に当てはまる店舗は26%と、3割にも満たないことがわかった。

資金を賃金に回すため、業務の効率化や少人数営業を行う飲食店も


次に人手不足の解消や、『従業員の賃金を上げるために工夫していること、導入しているもの』について聞くと、以下のような声が寄せられた。

<人手不足を解消するための工夫>

報酬による還元で従業員のモチベーションを上げ、離職を防ぐ
  • 土日祝日や繁忙期にプラスアルファで時給を上乗せする(愛知県/和食/1店舗)
  • インセンティブ制を導入。店舗売上が基準額を越えた場合に、越えた分の10%を正社員の人数で割ってインセンティブとして月給の他に支給している(新潟県/洋食/1店舗)

<従業員の賃金を上げるための工夫>

業務を効率化し、人件費以外のコストを下げる
  • メニュー品数を減らし、券売機・ネット注文などを導入。業務の簡素化を徹底している(東京都/ラーメン/1店舗)
  • 機械化できるものは機械化しながら効率化を行い、コストを削減しながら賃金に反映するように努力している(愛知県/和食/1店舗)
売上を上げる
  • 賃金を上げるためには売上も上げなければいけないので、客単価が上がるような接客を目指している(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 新たな収益を上げて雇用体制を整えるため、キッチンカーを導入した(神奈川県/カフェ/1店舗)
少人数で店を回せるよう従業員教育を行い、過分な人件費を削減
  • 利益率の向上のため、シフト管理を徹底。無駄なシフトを減らし、賃金に反映する(奈良県/フランス料理/1店舗)
  • スタッフを教育し、オペレーションを工夫。少数精鋭で一人当たりの月収を上げる(埼玉県/フランス料理・イタリア料理・専門料理/1店舗)

最後に、雇用について最も困っていることや懸念していることを尋ねると、「飲食業で働きたい人が少なく、募集しても来ない」、「若い社員(後継者)が不足している」など、業界自体が抱える課題のほか、以下のようなコメントも寄せられた。

良い人材がなかなか集まらない
  • 求人サイトを通して志望してくる求職者の質が低い(神奈川県/専門料理/1店舗)
  • リーダーとなる人材が不足していると感じます(東京都/和食/3~5店舗)
現在の従業員の離職
  • 現在経験豊富なスタッフに恵まれており、辞められてしまうとお店が成り立たない部分がある(神奈川県/イタリア料理/1店舗)
  • 現在のアルバイトが退職する時に、また新たに一から教育することの不安。その間のオペレーションの低下や、フォローによるこちらのパフォーマンス低下など、様々な課題がある(京都府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
資金を人件費に回せない
  • 人は足りているが、十分な給料を払うためには客足が戻ってこないと厳しい(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 売上が上がらないことには、雇用を増やすこともできない(福岡県/洋食/1店舗)

より少ない人材で店舗をまわすため、賃金の増額を考える飲食店経営者は多い。しかし、売上の伸び悩みや食材費の高騰といったさまざまな理由により、人件費にかける十分な資金が確保されにくいのも事実。飲食店においては、今後もコストカットなどの地道な努力が求められるだろう。

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