飲食店DXのリアルを調査。予算や人材不足などがデジタルツール導入の障壁に
2023年1月6日
画像素材:PIXTA
新型コロナの影響が続く中、飲食業界では慢性的な人手不足や食材費の高騰といった厳しい状況に対応すべく、デジタルツールを活用したIT化(DX)が進みつつある。しかし、一口にデジタルツールと言ってもさまざまな種類があり、取り組みの範疇は広い。そこで今回は、飲食店経営者や運営者に対し、デジタルツールの活用状況についてアンケートを実施。実際に何を活用し、どのような影響を受けているのか、飲食店のリアルな現状をお伝えする。<本調査について>
■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)回答数:379名
調査期間:2022年11月22日~2022年11月29日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち72.8%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は47.5%(首都圏の飲食店の割合は65.2%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。<調査結果について>
飲食店の約8割が何らかのデジタルツールを活用
はじめに、店舗で使っているデジタルツールを答えてもらったところ、54.4%が「会計・売上管理に関するシステム(※1)」と回答し、最多となった。次いで、「予約・集客・販促に関するシステム(※2)(43.0%)」、「テイクアウト・デリバリーに関するシステム(27.2%)」との回答が続く。対して、「デジタルツールを活用していない」との回答は、23.7%。つまり、76.3%の飲食店が何らかのデジタルツールを活用している。複数のデジタルツールを活用している店舗も見られるなど、飲食店のIT化が進みつつあると言える状況だ。
※1:POSレジ、セルフレジ、キャッシュレス決済など
※2:公式ホームページ・アプリ、グルメサイト、SNS、予約・顧客台帳システムなど
次に、現在活用しているデジタルツールの中から、業務効率化や売上、集客率向上などといった好影響を特に実感できたものを尋ねたところ、最も多かったのは、「会計・売上管理に関するシステム(37.7%)」との回答。次いで、「予約・集客・販促に関するシステム(26.6%)」、「テイクアウト・デリバリーに関するシステム(13.5%)」が続く。
さらに、前問で特に好影響を受けたとして選んだデジタルツールについて、具体的にどのようなシステムやサービスを利用し、どのような好影響があったのか尋ねたところ、業務の効率化や客数増加、売上アップなどさまざまな好影響があったことが分かった。以下に、いくつかの回答を紹介する。
■会計・売上管理に関するシステム
- POSレジの導入により売れ行きの把握や収益の管理が飛躍的に省力化できた(愛媛県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- レジをPOSレジにしたり、キャッシュレス決済にしたりして、会計のスムーズさや売上の管理が簡単になった(愛知県/焼肉/1店舗)
- キャッシュレス導入により顧客が増加した(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
■予約・集客・販促に関するシステム
- SNSでの発信で興味を持ってくださった方の来店が増えた。特に遠方(他県)からの来訪が多くなった(神奈川県/バー/1店舗)
- インターネットのグルメサイトに掲載し、ネット予約を受けるようにしてあり、予約件数が大きく上昇した(愛知県/和食/1店舗)
- ウェブ予約に関するシステムを導入。営業中や休日の電話対応や予約の取りこぼしがなくなった(大阪府/イタリア料理/1店舗)
■テイクアウト・デリバリーに関するシステム
- Uber Eatsを活用。コロナ禍にかなり売上面で支えられました(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- 出前館、Uber Eatsを活用。売上が5%アップした(東京都/ラーメン/2店舗)
- デリバリーサービスでのバーチャルレストランを始めてから、諸経費は現状のままで売上アップできた(大阪府/そば・うどん/1店舗)
■予算や管理の問題が、デジタルツールを導入する障壁に
デジタルツールの導入が、課題解決に役立つことも多い。そこで現在、飲食店が課題に感じていることを尋ねたところ、最も多かったのは「売上の低さ」との回答で、50.9%。長引くコロナ禍の影響などもあり、半数以上の店舗が売上の低い現状に悩んでいるようだ。さらに、「新規客の獲得、店舗の認知拡大(44.1%)」、「売上に占める食材費の割合(38.3%)」、「従業員が足りないことによるリソース不足(29.6%)」との回答も目立った。今回の調査では、「課題に感じていることはない」との回答を選んだ店舗はわずか3.7%。ほとんどの店舗で何らかの課題を抱えている様子が明らかとなった。続いて、何らかの課題を抱えている店舗に、それらの課題を新たなデジタルツールを導入することで、おおむね解決できると思うか回答してもらったところ、約4割の店舗が「解決はできない(41.4%)」と回答。デジタルツールの導入が課題解決の糸口にはならないと考えている店舗が多いようだ。対して、「解決できると思う」と回答したのは3.8%。「部分的に解決できると思う(26.8%)」との回答と合わせると、30.6%の店舗はデジタルツールの導入が、課題解決に役立つと考えている。
「解決できると思う」、「部分的に解決できると思う」と回答した方に、そのデジタルツールを新たに導入する予定があるか尋ねたところ、最も多かったのは「いずれ導入する予定(53.6%)」との回答。半数を超える店舗が課題解決のためのデジタルツール導入に前向きな姿勢を見せている。一方で、23.2%は「導入する予定はない」と回答し、課題解決のためのデジタルツールの導入に消極的だ。
そこで「導入する予定はない」と答えた方に、新たにデジタルツールを導入しない理由を答えてもらった。「小規模経営であることから必要性を感じない」といった意見のほか、「資金不足」や「人材不足」、「管理への懸念」などを理由に挙げる店舗もあった。ここでは、実際に飲食店から寄せられた声をいくつか抜粋して紹介する。
■小さい店のため、導入する必要性を感じない
- 店の規模が小さく、導入する労力に対してのメリットが少ないように思う(福井県/洋食/1店舗)
- そこまでの規模ではない(東京都/バー/1店舗)
■資金的余裕がなく、導入が難しい
- コスト増の問題、コロナ禍でコストを増やす体力と勇気がない(東京都/そば・うどん/1店舗)
- デジタルツールは固定費が掛かる場合が多いので(大阪府/中華/1店舗)
■人材不足でデジタルツールが導入できない
- デジタルツールを扱える人員不足です(東京都/和食/1店舗)
- 集客をデジタルツールで行い客が増えた場合、現状のスタッフ数ではこなせないため(東京都/フランス料理/1店舗)
■導入後の管理に対して懸念がある
- 覚えたり、管理をしたりするのが大変(静岡県/専門料理/1店舗)
- 管理を煩雑にしたくないため(東京都/和食/1店舗)
上記で挙げられた、資金や人材不足の現状、管理への懸念は、飲食店DXがある一定のレベルから進まないひとつの原因でもある。飲食業界がさらにIT化やDXを進めていくためには、こうした課題から解決していく必要がありそうだ。
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