飲食店の「インボイス」準備状況を調査。64.4%の店舗が対応予定も、準備完了は未だ2割

2023年9月27日

画像素材:PIXTA
2023年10月1日からスタートする、インボイス制度。制度の開始を間近に控え、準備を進めている飲食店も多いのではないだろうか。そこで今回は、飲食店経営者や運営者に対し、インボイス制度の準備状況を調査するためアンケートを実施。インボイス制度への対応状況や、制度開始に伴う懸念点など、飲食店のリアルな声をお伝えする。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:386名
調査期間:2023年8月28日~2023年9月5日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち69.7%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は52.1%(首都圏の飲食店の割合は68.7%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

10月開始のインボイス制度、対応完了はわずか25.1%


はじめに、インボイス制度の認知度を調査したところ、61.7%が「概要を知っている」、22.3%が「具体的な内容まで知っている」と回答。合わせると84%もの店舗が、インボイス制度の大まかな内容について把握していることがわかった。


続いて、回答時点でのインボイス制度への準備状況について尋ねたところ、「すでに準備を終えている」と回答した店舗は、わずか25.1%。制度開始まで1か月を切るなか、準備を終えていない店舗も目立つ。一方で、「5割以上は準備を終えている(21.2%)」、「準備を始めたところ(7.5%)」、「対応する予定だが、準備はまだ始めていない(10.6%)」との回答も加えると、インボイス制度対応予定の店舗は64.4%にものぼる。制度開始までには、準備を終える店舗が増えるだろう。


次に、インボイス制度に対応予定の店舗に対し、今回インボイス制度へ対応するにあたり、新たに課税事業者となった、またはなる予定があるかどうかを質問した。すると、「新たに課税事業者となった(もしくはなる予定)」との回答は、21.3%にとどまった。一方、74.3%は「もともと課税事業者だった」と回答しており、インボイス制度に対応予定の飲食店の多くが課税事業者だったことがわかる。


さらに、インボイス制度に対応予定の店舗に対し、補助金の活用状況(申請予定も含む)について尋ねたところ、「IT導入補助金」が10.0%、「小規模事業者持続化補助金」が11.6%と、約2割が補助金を活用していたことが明らかとなった。76.7%の店舗は、「活用しておらず、今後も申請予定がない」としている。



インボイス制度対応のため、59.6%の飲食店が専門家へ相談


また、インボイス制度の準備をすでに始めている店舗に対し、どのような準備(インボイス発行事業者の登録申請は除く)を行ったか答えてもらったところ、最も多かったのが「税理士など専門家への相談」との回答で59.6%。次いで、「取引先との取引状況の確認(36.1%)」、「レジや経理システムをインボイス制度対応のモデルに変更(26.4%)」との回答が続く。


続いて、インボイス制度に「対応する予定はない」と回答した店舗に、その理由を尋ねたところ、最多は「免税事業者のままでいたい(64.2%)」との回答。やはり多くの店舗で、課税事業者となることによる税負担の増加がネックになっていると考えられる。さらに、「インボイスを必要としないお客様(消費者や免税事業者)が多い」との回答も59.7%見られ、自店舗の客層を見てインボイス制度に対応する必要がないと判断しているようだ。


また、食品卸会社など、仕入取引先の対応意向状況についても質問したところ、64.2%が「対応する意向」と回答。「対応しない意向」との回答は、わずか4.7%だった。対して、31.1%は「わからない」と回答しており、取引先の対応状況を把握できていない店舗も一定数いることが読み取れる。



対応予定の飲食店からは「事務作業の増加」を不安視する声


最後に、インボイス制度開始にあたり、現在懸念していることを答えてもらったところ、インボイス制度に対応予定がある、予定がないに関わらず、さまざまな意見が寄せられた。

インボイス制度に対応する予定の店舗からは、「事務作業の負担が増える」ことを懸念する声が目立った。このほか、「税負担の増加」や「仕入れ先の対応状況」などについても不安を感じているようだ。

▼事務作業の負担増加
  • インボイスに対応することで、事務作業の負担が増えることを懸念している(神奈川県/その他/3~5店舗)
  • 経理が煩雑になりそう(東京都/イタリア料理/1店舗)

▼納税の負担増加
  • 課税事業者となるため、納税負担が増える(熊本県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 課税事業者となり、納税負担、作業負担が増えることが懸念される(和歌山県/カフェ/1店舗)

▼仕入先の対応状況
  • 個人から食材の仕入れをしている部分があるので、先方の対応次第では取引を停止する可能性が出てきている(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
  • 仕入れ先には個人商店もあるので、今後の仕入れを悩んでいる(東京都/バー/店舗)

一方で、インボイス制度への対応を検討中、または対応予定はないとしている店舗からは、対応しないことによる「客足の減少」が懸念されているほか、そもそも制度について「よくわからず不安を感じている」との声もあがっている。

▼飲み会や接待など、社用利用の減少
  • 社用での利用が減るのではないかと懸念している(大阪府/イタリア料理/1店舗)
  • インボイス発行事業者にならないため、会社の飲み会や接待などの利用が減らないか心配(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

▼その他
  • 分かりやすく説明が欲しいです(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
  • 何から手をつけたらいいか(千葉県/洋食/1店舗)

飲食業界では、インボイス制度の認知は進んでいるものの、対応については店舗間でバラつきがある状況だ。対応の有無を問わず、不安の声もあがっており、制度開始直後は混乱も予想される。インボイス制度に対応する予定の店舗は、しっかりと内容を理解し、準備を進めていきたい。

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