全国の平均時給1,004円の今、飲食店の賃金はどう変わった? 従業員の給与額事情を調査

2023年11月29日

画像素材:PIXTA
2023年度の最低賃金の改定を受け、全国の平均時給が1,004円に引き上げられた。平均時給が初めて1,000円台を突破したが、原材料高騰が続いていることもあり、負担が増えることを懸念している飲食店も多いのではないだろうか。そこで今回は、従業員の給与額の状況を調査するため、飲食店経営者や運営者に対しアンケートを実施。賃金の引き上げ状況など、飲食店のリアルをお伝えする。

<本調査について>


■調査概要

調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:333名
調査期間:2023年10月20日~2023年11月3日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち64.3%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は51.7%(首都圏の飲食店の割合は68.5%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>


最低賃金改定を受け、49.2%の飲食店が「賃金を上げた」


はじめに、自店舗の時給が全国平均を超えているか質問したところ、「全国平均を上回る」との回答が74.5%で最多となった。これは、回答者が経営する飲食店の多くが、最低賃金の全国平均を上回る東京や大阪、神奈川などの土地にあることも影響していると見られる。


さらに、2023年10月に最低賃金が引き上げられたことを受け、従業員の賃金を変更したか尋ねたところ、最も多かったのは「最低賃金より上回っている(同額)のため、変更していない」との回答で50.8%。一方で、49.2%は「賃金を上げた」(最低賃金より下回っていたので最低賃金額以上に上げた=26.4%、最低賃金より上回っていたが、更に賃金を上げた=22.8%)と回答している。


次に、どんな雇用形態の人の賃金を上げたか質問したところ、「アルバイトやパートタイマー、派遣社員など」が75.0%に及んだのに対し、「正社員や契約社員など」は、4.9%にとどまった。「雇用形態を問わず当てはまる」との回答も20.1%あることから、95.1%もの店舗が「アルバイトやパートタイマー、派遣社員など」の賃金を上げたことが明らかとなった。


続いて、賃金を上げた店舗に、賃金の増加率を雇用形態ごとに回答してもらった。すると、正社員や契約社員では、「0.4%以下(12.2%)」との回答が最も多く(「賃金は上げていない」、「雇用していない」との回答は除く)、「5.0%以上」との回答は6.1%にとどまった。


一方で、アルバイト、パートタイマー、派遣社員で最も多かった回答は、「5.0%以上」との回答で、24.4%。アルバイト、パートタイマー、派遣社員は、大きな賃金アップに繋がった店舗が多いようだ。


賃金アップにより、64.6%の飲食店が利益率の低下を実感


賃金を上げた店舗に、賃金を上げたことで感じる従業員への効果について尋ねたところ、最も多かったのは「特に効果は感じていない」との回答で、76.2%。効果が得られた店舗は1割程度にとどまった。


さらに、賃金を上げた店舗に、利益率の変化について質問したところ、「利益率は変わらない」と回答したのは30.5%。これに対し、「利益率は下がった」との回答は64.6%にも及んでいる。この結果からは、賃金アップによる人件費の増加が、目下の経営を少なからず圧迫している様子も垣間見えた。


次に、給与を上げるために、自店舗ではどのような工夫ができるか答えてもらった。すると、68.5%もの店舗が「メニュー単価をあげて給与を上げる」と回答。「原価を下げて給与を上げる(28.8%)」、「DXをすすめ人員を減らし、給与を上げる(17.7%)」と回答した店舗もあるものの、7割近くの店舗が価格転嫁による給与引き上げを検討するようだ。


全国平均時給について、飲食店の約41%が「妥当な金額である」と回答


給与額を問わず、現在の従業員の労働環境整備全体における自己評価を100点満点でしてもらった。すると、「80~89点」との回答が34.5%で最も多く、次いで、「70~79点(20.7%)」、「50~59点(12.9%)」と続く。全体では、「80点以上」との回答が半数を超えており、自店舗の労働環境は概ね合格ラインにあると捉えているようだ。


続いて、何故その点数を付けたのか答えてもらったところ、自己評価の高い店舗からはポジティブな声が寄せられた一方、そうでない店舗からは、さまざまな課題と向き合う姿勢をうかがい知ることができた。

【80点以上】

最大限の対応をしている
  • 90点/給与形態だけでなく週休二日制の完全導入、見込み残業代(過去の平均値の1.5倍以上)の設定など、同業態の中でも特にホワイトだと自負しています(千葉県/バー/1店舗)
  • 85点/労働契約以上に休暇を増やすなどより良い環境を作れていると思うから(東京都/和食/2店舗)
  • 80点/できる範囲で最大限の環境整備をしているため(神奈川県/ラーメン/2店舗)

スタッフから不満がない、離職者が少ない
  • 100点/3年ほど退職がでていない(福井県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 99点/誰も不満を持つことなく常に楽しく働いているからです(東京都/イタリア料理/1店舗)
  • 80点/特に不満の声等を聞かないため(東京都/和食/1店舗)

一部、課題が残っている
  • 85点/有給休暇をすべての従業員が全日数使えていないため(東京都/和食/3~5店舗)
  • 80点/賃金や労務環境はある程度合格点と思う。正社員と臨時採用の格差や、魅力的な労働環境で求人増となるには、足りない部分がある(東京都/その他/11~30店舗)
  • 80点/だいぶ労働時間の短縮をしましたが、まだまだ労働環境を変えていかないとと思っています(東京都/そば・うどん/2店舗)

【50~79点】

対応はしているが、課題もある
  • 70点/労務環境は改善していると思うが、上を見ればまだまだやれることはあると思うから(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/11~30店舗)
  • 70点/労働環境は整っているが、処遇に反映できていない(埼玉県/イタリア料理/6~10店舗)
  • 60点/地域的な待遇面では十分だとは思うが、福利厚生や人材不足による残業多などを改善したいと思っている(秋田県/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)

福利厚生に課題が残る
  • 70点/もっと福利厚生などに力を入れていきたいから(千葉県/ラーメン/2店舗)
  • 60点/長期的な観点から従業員の生活や将来設計を保証出来る制度などが未整備。人材の定着が課題と感じている(東京都/イタリア料理/1店舗)
  • 50点/福利厚生をもっと充実させてあげたいけど、コスト面で難しい(熊本県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

労働時間や休暇、給与面で課題が残る
  • 60点/休みやボーナスがまだまだ少ない(東京都/フランス料理/1店舗)
  • 60点/毎日忙しいので、スタッフひとりひとりにかかる仕事量が多く、給与をもう少し上げてあげたいところですが、原材料費や諸経費の高騰で利益が出にくく、実現できていないためです(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 60点/拘束時間について長時間になりがちだから(東京都/フランス料理/1店舗

【0~49点】
  • 45点/慢性的な人員不足と、教育不足(愛知県/和食/1店舗)
  • 30点/昇給が成果に繋がっていない(京都府/その他/31~50店舗)
  • 30点/給料も本当はもっと上げたいし、就業環境がいいとは決して言えないが、現状の売上を考えると、今が目いっぱい(大阪府/カフェ/2店舗)
  • 30点/まだまだ力不足(東京都/焼肉/1店舗)

最後に、2023年の全国平均時給(1,004円)をどのように捉えているか尋ねたところ、「全国平均は妥当な金額である」が41.1%、「全国平均は高いと感じる」が30.0%、「全国平均は低いと感じる(もっと高い時給になるべき)」が28.8%と、意見が割れる結果となった。



ちなみに、東京都だけで見ると、最多は「全国平均は妥当な金額である」との回答で22.8%。続く回答は「全国平均は低いと感じる(17.1%)」となり、最も少ない「全国平均は高いと感じる(11.7%)」との間にわずかながら差が確認できた。

今回のアンケートでは、賃金の引き上げに伴い、利益率に影響が出ている店舗も多く見られた。原材料の高騰や人手不足など、厳しい状況が続いているが、最低賃金は今後も上昇していくだろう。飲食店としては引き続き、利益を出す工夫に焦点を当てていきたい。

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