コスト増や原価率調整に悩まされた飲食店が、2024年に目指すこと

1月24日

画像素材:PIXTA
新型コロナウイルスが5類に移行し、脱コロナに向けて動き出した2023年。インバウンド需要も回復し、日常が戻りつつある一方、物価高騰やインボイス制度の開始などにより、飲食店が対応を迫られる場面も多く見られた。そこで今回は、飲食店の2023年の経営状況と2024年の目標について調査するため、飲食店経営者や運営者に対しアンケートを実施。どんな1年だったか振り返ってもらった。

<本調査について>


■調査概要

調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:361
調査期間:2023年12月11日~2023年12月25日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち67.3%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は51%(首都圏の飲食店の割合は67.6%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>


2023年の総売上、6割超の飲食店が前年より「増加」


最初に、2023年11月の売上を2022年の同時期と比較してもらった。すると、半数以上が「前年同月(2022年11月)より増えた(52.8%)」と回答。一方で、「前年同月と変わらない(21.1%)」、「前年同月より減った(25.9%)」との回答も一定数見られた。


また、2023年における年間総売上についても2022年と比較してもらったところ、「2022年の総売上より増えた」との回答は、64.4%。「2022年の総売上と変わらない(16.6%)」、「2022年の総売上より減った(19.1%)」といった回答よりも多く、売上が上向きとなっている飲食店が多いことがわかる。


2023年は58.4%の店舗が「原価率の調整」に苦労


続いて、2023年で特に印象的だったトピックスについて尋ねた質問では、「原価の高騰」が78.9%で最多に。次いで、「インボイス制度の開始(38.8%)」、「来店客数の回復(34.3%)」との回答が続いた。2023年は、インボイス制度の開始や5類移行、インバウンド回復などさまざまな出来事があったが、記録的な値上げが続いた年ということもあり、原価の高騰が印象に残っている店舗が多いようだ。


さらに、2023年のお客様の動向について答えてもらったところ、特に目立ったのが「客単価が上がった」との回答で40.4%。原材料高騰によるメニュー価格の値上げの影響も考えられるが、長く続いたコロナ禍が明けたことで、消費が拡大していることも客単価上昇の要因となっているのではないだろうか。


次に、コロナ明けの飲食店経営で苦労したことについて質問したところ、最も多かったのは「円安、原材料費の高騰などを背景とした原価率の調整」との回答で58.4%。値上げラッシュを受け、原価率のコントロールに悩んだ店舗が多いことがわかる。「売上の減少(46.5%)」も5割近くの店舗が選んでおり、コロナが明けた後も売上の減少に悩まされた店舗は多いようだ。また、「新たな人材の確保(34.9%)」や「従業員の雇用維持やシフト調整(31.3%)」との回答も目立っており、人材不足が再び問題となっている。


続いて、コロナ明けで新たに始めたサービスや工夫したことがあるか尋ねたところ、最も多かったのは「特にない」との回答で41.3%。一方で、「SNSによる宣伝、集客(23.8%)」、「座席の消毒など衛生管理の徹底(16.3%)」、「テイクアウトサービス(12.5%)」に取り組んでいる店舗も見られた。


コロナ明けも、原材料高騰や人材確保などに苦労した1年

さらに、2023年を振り返っての感想を教えてもらったところ、客足や売上の回復を喜ぶ声が上がる一方で、食材や賃金等のコスト増加、人材の確保、客足の変化などに苦労したという声も多く寄せられた。

※本調査は、2023年12月に実施したため、以降の回答内容に記載されている「今年」は2023年、「来年」は2024年のことを意図しています。

客足や売上などが回復してきたと感じる
  • 大変な年でしたが、売上も少しずつ回復してきています。来年につなげたいですね(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 全てがやっと回復の感。物価高騰のための単価アップも理解感があり成功(東京都/フランス料理/3~5店舗)
  • コロナ明けで以前の様な客足に戻るか心配していたが、9割位回復し、まずまずであった(愛知県/イタリア料理/1店舗)

回復の傾向を感じられていない
  • コロナの影響で来店数が戻らず。ローカルタウンなのでインバウンドの影響もない(神奈川県/専門料理/2店舗)
  • コロナが5類になってもお客さんが戻らないです。コロナ前の7、8割というところでしょうか(東京都/和食/1店舗)
  • コロナ禍が終わったにも関わらず売上が戻らなかった(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

食材や賃金などのコスト増加に苦労した
  • 今年は食材高騰や賃金上昇による原価率や固定費の上昇で頭を悩ませた1年だった(大阪府/イタリア料理/1店舗)
  • 原価や人件費の高騰が続き、非常に厳しい一年だったと思います。10年以上続いているうちのお店だからこそ、日頃からのお客様が多く乗り切れたかと…(神奈川県/イタリア料理/1店舗)
  • とにかく材料費の高騰に振り回された。業者経由、小売店経由どちらの仕入れも「気がついたら上がっている」という状態だった。いままで付き合いのない業者や小売店の動向を小まめに調べてなんとか対応した(福井県/洋食/1店舗)

アフターコロナにおけるライフスタイルの変化を実感した
  • コロナが明けたが客足の動向がわからず、来客予想がわかりにくかった(東京都/その他/1店舗)
  • GW明けの5類移行後、順調に客足は戻ってきているが、団体の予約、21時以降の来店は厳しい(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
  • 深夜帯のお客様がかなり減ってしまい、街全体に歩いている人も減り、施策でどうにかっていう感じではなくなってしまった(千葉県/焼肉/3~5店舗)

人材の確保や教育に苦労した
  • 予想以上の客足の戻り。ただ、その一方で採用が難しくなってきている結果、採用と教育が上手くはまればもっと売上を取りきれたと思っている(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
  • 売上回復は順調ではあったが、反面、人材確保は今現在も頭が痛い課題です。人件費の上昇と求人広告費の増加や原材料高騰に見舞われ、売上増でも利益の伸びが乏しく、モチベーションが上がらない状況のまま23年が終わってしまうイメージです(東京都/ラーメン/2店舗)
  • 店舗スタッフの安定が困難になった。短時間非正規従業員でなんとか運営できている(東京都/イタリア料理/1店舗)

最後に、2024年に向けた目標やスローガン、同業者への応援メッセージなどを尋ねたところ、各店からさまざまな意見が寄せられたため、いくつかを抜粋して紹介する。

集客を頑張りたい
  • 客足が少しでも増えるよう努力し値上げに対抗するよう新メニュー開発をする。近くの店も辞めたところや同じように苦労している店が多いので情報交換などして頑張りたい(京都府/焼肉/2店舗)
  • リピーターを増やし、テーブル単価を回復させて完全黒字化を目指す(大阪府/カフェ/1店舗)
  • 地域密着型で常連さんがいるのは強みだが、高齢化して亡くなる方もいるので新規客の呼び込みをしないといけない(大阪府/洋食/1店舗)

人材確保や教育に力を入れたい
  • コロナ明けで収益を戻すことを最優先に行ってきたので、人材確保、人材教育を再度行っていく中で強固な組織づくりを行っていく(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
  • 従業員の採用を強化したい。飲食店の価値を上げたい(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 多少のお金を使っても良い人材の確保と雇用の継続を考えています。AIの台頭で人間がいらなくなる業種に比べ飲食店(特に専門職店舗)はAI・ロボットに代替えがきかない業態になっていくと思うので、あと10年頑張れば買い手市場になると思います(千葉県/バー/1店舗)

その他
  • 2024年はもうさすがにコロナコロナと言ってはいられない(関係がない)年になると思う。そういう意味では本来の飲食店の底力が試される年になりそうなので、より一層お客様に選ばれるお店づくりを心がけていきたいと思います(神奈川県/イタリア料理/1店舗)
  • 来年は、客単価を上げる方向で値段の見直しをしたい(大阪府/バー/1店舗)
  • 2024年は、システムの導入などを含めオペレーションを改善。簡略化できるところはしつつ、他との差別化のところに力をいれて、来年以降も選ばれるお店づくりをしていく!(長野県/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)

応援メッセージ
  • 飲食業は色々叩かれ、原価も高騰し、辛いですが生き残れれば天国と思って頑張ろう!(東京都/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
  • コロナによる外食制限により、今まで以上に外食の価値を消費者は感じていると思います。外食市場を盛り上げられる様に頑張りましょう!(大阪府/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
  • 仕入れ価格は下がらない(業者が下げない)し、人件費は上がり続けるだけだと思います。我々も値上げが必要ですが、ただ値段を上げるのではなく、お客様にさらに満足いただけるような形でより多くの料金を頂けるように頑張りましょう!(東京都/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)

現在も新型コロナウイルスの影響が完全になくなったとは言えない状況だが、回復傾向にある店舗は多い。一方で、今回のアンケートでは、原材料費の高騰や客足の変化などに「苦労した」という声が本当に多く寄せられた。2024年も円安や物価高の影響は少なからず続くとみられる。各店、工夫をして乗り越えていってほしい。

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