東京五輪に向けた飲食店対策の参考に。ラグビーW杯開催時の取り組みを調査

2020年1月16日

画像素材:PIXTA
2020年7月から開催される東京五輪に向け、何らかの対策を取りたいと考えている飲食店経営者も多いだろう。そこで参考にしたいのが、2019年に日本中で大きな盛り上がりをみせたラグビーW杯開催時の取り組みだ。今回の「飲食店リサーチ」では、飲食店経営者・運営者を対象に、ラグビーW杯開催期間中に行った対策を調査。その結果から東京五輪に向けた飲食店の対策を探っていく。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:336名
調査期間:2019年12月17日~ 2019年12月23日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:東京五輪対策に関するアンケート調査

■回答者について
回答者のうち69.9%が1店舗のみを運営しています。また、東京にある飲食店の割合は59.5%(首都圏の飲食店の割合は75.9%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

TV中継で売上増も、試合中はオーダーが出にくい


まず、ラグビーW杯開催期間の売上について前年の同時期の売上と比較してもらったところ、50%の人が「前年同時期と同じくらい」と回答。一方「前年同時期より上がった」と回答した人は17.9%で、「前年同時期より下がった」と回答した人も32.1%いた。瞬間最高視聴率50%超えをたたき出した試合もあるなど、自宅でラグビーW杯を楽しんだ人も多く、その影響が少なからず出た形だろう。

次に、ラグビーW杯開催期間中に店内でTV中継を行ったかどうかを質問。その結果、78%の人が「いいえ」と回答し、「はい」と回答した人は22%にとどまった。

そこで気になるのが、TV中継が飲食店に及ぼす影響だ。続いては、ラグビーW杯開催期間中に店内でTV中継を行った店舗に対し、良かったことや困ったことについて回答をしてもらった。

■良かったこと
・多くのお客さまにご来店いただいた。特に日本代表戦は通常より価格を上げたにも関わらず毎試合満席だった。(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・まずSNS等を活用して集客活動を図って、集まった方々でラグビー中継を観賞したところ、それなりの盛り上がりで売り上げに繋がったと思います。今後も、他の競技の試合中継を観賞していきたいと思います。(東京都/バー/1店舗)

■困ったこと
・みんなで盛り上がったが、ゲーム中はオーダーが止まってました。常連さんとゆっくり観る感じでした。(東京都/バー/1店舗)
・お客さんが中継に集中してしまい、あまり酒が進まなかった。(神奈川県/バー/1店舗)

良かった点として売上アップや集客につながったという意見が聞かれた一方で、お客さんが試合に夢中になりすぎてオーダーが止まってしまっていたという声もみられた。競技にもよるが、東京五輪では、試合中もお客さんに注文してもらう工夫が必要といえそうだ。

ラグビーW杯期間中に感じた問題点とは?


続いて、ラグビーW杯期間中に起こったトラブルや困りごとについて尋ねた。すると、東京五輪でも起こりうる問題点がいくつかあがったので、ピックアップして紹介したい。

・言葉が判らなくて対応に困ったことがあった。(東京都/その他/11~30店舗)
・外国からのお客様の来店が増えた。英語対応できるスタッフがいない、英語のメニューがないことから対応に困った。(東京都/焼肉/1店舗)

今回のアンケートで多くみられたのが、言葉の問題だ。ラグビーW杯を楽しみに、多くの外国人観光客が日本を訪れたが、当然すべての人が日本語を話せるわけではない。そのため、外国語でコミュニケーションを取るのに苦労したという声が多く聞かれた。東京五輪時も訪日外国人が増えることが予想されるため、店ごとにしっかりと対策を取りたい部分と言えるだろう。

・試合のある日は、お客さんが出てこない。(静岡県/イタリア料理/1店舗)
・TVを設置していないので、放映時間にお客様が減った。(東京都/イタリア料理/1店舗)

また、ラグビーW杯のTV中継をしていなかった店舗からは、客足が遠のいたという声も。東京五輪でも注目度の高い競技はTV放映のある店舗への来店や、自宅での観戦を選択する客が増えるだろう。店でのTV中継を導入するほか、テイクアウトやデリバリーメニューを強化し、自宅での観戦をサポートするのも一つの手だ。

東京五輪に向けた各店の取り組み事情


■約半数がインバウンドを意識した新規ツールの導入を検討
今回のアンケート調査では、東京五輪に向けた取り組みついても調査を実施した。東京五輪開催に向けて新たに導入したいツールを尋ねたところ、「特になし」との回答が50.9%。半数以上の店舗が東京五輪のために、特別なツールの導入はしないと考えているようだ。

何らかのツールの導入を検討している人のなかで最も回答が多かったのが、「多言語対応サービス」で26.2%。次いで「キャッシュレス決済サービス」(14.3%)、「集客メディア」(10.7%)が続く。多言語対応やキャッシュレス決済など、インバウンドを意識したツールの導入を検討している店舗が多い。

■言語や食文化への対応をはじめ、TVの設置やデリバリーサービスの展開も視野に


最後に、ラグビーW杯を踏まえたうえで、東京五輪に向けて力を入れたい取り組みや施策について聞いた。

・メニュー、HP、サービスなど外国語に対応していきたい。(東京都/鉄板焼き・お好み焼/2店舗)
・文化や宗教的理由で、日本人と好みや習慣が違う外国人に対して、ベジメニューやPOP を提供したい。(東京都/カフェ/1店舗)

訪日外国人の増加を見越して、メニューも外国語対応したものを用意したいという回答が目立った。ほかにも、翻訳アプリやベジタリアン向けメニューの導入など、インバウンド需要を取り込むための施策を検討している店舗が多いようだ。

・大きなTVを設置する予定。(滋賀県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・テレビを設置しようかと考えています。(東京都/バー/1店舗)

東京五輪に向けTVを設置しようと考えている店舗も複数見られた。TV中継を行う際は、SNSなどを活用し、しっかりと告知をすることが大切だ。なお、放映方法によっては著作権侵害となることもあるため、TV中継を導入する際は十分注意をしてほしい。

・テイクアウトやデリバリーを取り組みたい(東京都/アジア料理/3~5店舗)
・応援メニュー。自宅でテレビ中継を見ながら食べられるパーティー用テイクアウトメニュー。(神奈川県/お弁当・惣菜・デリ/1店舗)

自宅でゆっくり競技を観戦したい客層に向け、テイクアウトやデリバリーメニューを強化するという店も。軽減税率制度の後押しもあり、中食市場が盛り上がりをみせている今、要注目の取り組みと言えるだろう。

開幕まであと半年ほどに迫った、東京五輪。今回調査したラグビーW杯での対策を参考に2020年のビックイベントを上手く活用し、売上アップを目指してみてはいかがだろうか。

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