飲食店の「コロナ融資」利用状況を調査。2割が返済に懸念、うち4割は負担軽減制度を知らず
2023年8月1日

<本調査について>
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)回答数:383名
調査期間:2023年6月19日~2023年6月27日
調査方法:インターネット調査
■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち69.2%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は47%(首都圏の飲食店の割合は64.9%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。<調査結果について>
53.6%の店舗がコロナ融資利用、うち半数超が「家賃」に使用
はじめに、実質無利子・無担保の融資制度「コロナ融資」を受けたか尋ねると、53.8%が「はい」と回答。半数を超える飲食店が、コロナ融資を受けていることがわかった。

次に、コロナ融資金の主な使い道について答えてもらったところ、55.3%が「店舗家賃」と回答し、最多に。続く回答も「店舗運営にかかる食品・消耗品の仕入れ費(49.5%)」、「従業員の給与(43.7%)」、「店舗の水道光熱費・通信費(39.3%)」と、店舗運営に必要な資金が続いており、経営を維持するためにコロナ融資金を使っていた店舗が多いことが読み取れる。

続いて、コロナ融資の返済が始まる時期について質問した。年別では、「2023年(31.6%)」が最も多く、次いで「2020年(24.3%)」、「2022年(21.8%)」と続く。全体を見ると、77.2%もの店舗が「2023年6月まで」に返済を開始している。さらに、今年中に10.7%(2023年7月~9月=7.3%、2023年10月~12月=3.4%)の店舗が返済開始を予定しており、2023年末までに9割近い飲食店が返済を始めることになるだろう。

計画通り返済中は5割、2割は全額返済に懸念あり
また、アンケート回答時点における、コロナ融資の返済割合について尋ねたところ、回答者の6割が「30%以下」と回答。なかでも、「1~10%(28.2%)」との回答が多く、これから返済を進める店舗が多いようだ。一方で、4.4%が「すべて返済済み」と回答しており、すでに返済を終えた店舗も出始めている。

続いて、コロナ融資を全額返済する目処が立っているか質問したところ、最も多かったのは、「計画通り返済中」との回答で53.4%。さらに、「返済前だが返済の目処は立っている(16.5%)」、「全額返済済み(4.4%)」との回答もあり、7割の店舗は順調に返済への道筋を立てている。対して、「返済条件の変更が必要(16.0%)」、「返済することが難しい(5.8%)」との回答も見られ、2割を超える店舗が完済に懸念を示す状況だ。

そこで、「返済条件の変更が必要」、「返済することが難しい」と回答した方に、その理由を詳しく答えてもらった。すると、「利益の回復が遅れている」や「物価高騰や光熱費上昇の影響を受けている」など、各店さまざまな悩みを抱えていることがわかった。
■返済額に対し、利益の回復が追いつかない
- 売上は回復してきていますが、利益はまだ満たしていないため、現状、融資返済は計画変更をしていきたい状況です(東京都/専門料理/3~5店舗)
- 店単体での利益は出るようになってきたが、会社としての利益はまだ確保できない(広島県/カフェ/6~10店舗)
- 元金の増大に対して、売上や利益が追いついてない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
■物価・光熱費・人件費などの高騰
- 仕入れ価格の上昇により、経営状況が悪化している(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 仕入れ、光熱費、人件費などすべてがコロナ前よりも値上がりした(愛知県/洋食/3~5店舗)
- 仕入価格の上昇、人件費増で経営を圧迫しており、事業の立て直しが図れていない(神奈川県/カフェ/1店舗)
■人手不足による事業立て直しの遅れ
- お客様の来客度合いは回復傾向ではあるものの、深刻な人手不足によって、供給体制がとれておらず、営業を制限せざるを得ない状況のため、売上を伸ばすことが事実上難しい(東京都/フランス料理/2店舗)
- 人材確保も急務です(東京都/専門料理/3~5店舗)
■その他
- コロナ融資以外にも想定外に複数の場所から借入してしまっているので、コロナ融資の返済が始まると当初の計画通りの月額ではすべてを同時返済していけない。リスケしないと厳しい(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
- まだまだコロナ禍の影響があるので、何も回復はしていない(東京都/イタリア料理/1店舗)
- 宴会利用が主に収入源だったが、宴会そのもの激減しており、いきなり客層が変わるわけでもないので、客が少ない状況が変わらない(愛知県/洋食/3~5店舗)
「コロナ借換保証制度」の認知度低く、申請意向ありは2割
続いて、コロナ融資の返済目途について、「返済条件の変更が必要」、「返済することが難しい」と回答した方に、「コロナ借換保証制度(※)」の利用予定を尋ねたところ、最も多かったのは「コロナ借換保証制度について知らない」との回答で42.2%。支援制度の認知度が低い現状が明らかとなった。対して、申請の考えがある人は、24.5%(申請済み=8.9%、申請予定=15.6%)にとどまっている。
(※)コロナ借換保証制度:経済産業省が2023年1月から開始しているコロナ融資の返済負担軽減策

最後に、コロナ融資を受けている方に、返済に向けた事業改善のための取り組みを尋ねた。すると、「販路の拡大や強化」、「メニューの絞り込みや改善」などを実施する店舗が多く見られた。また、「業態転換」など思い切った改善に取り組む店舗もいるなど、各店さまざまな改善策を実施している。
■デリバリーや通販など、販路の拡大・強化
- オンライン販売を開始し、販路の拡大を図った(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- テイクアウトとデリバリーにフルマックスの力を込めた(東京都/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)
■メニュー絞り込みや改善
- コロナ後に集客が戻るようにメニューのリニューアルなどを積極的に行った(東京都/和食/1店舗)
- メニューの改善・絞り込みなどを行いコスト削減した(東京都/中華/3~5店舗)
■人件費や仕入れ価格などの見直し
- 人件費や固定費の見直し(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
- 営業時間短縮により人件費を削減した(鹿児島県/寿司/1店舗)
- 仕入れ価格の見直し。小規模店なので、品物によっては、楽天市場やYahooショッピングで比較購入。ポイントゲット(大阪府/フランス料理/1店舗)
■営業時間や業態を変更
- 営業時間を昼にシフトして、ランチ特化型の営業に変更。集客は以前の3~4倍になり、売上もランチだけでなんとかなるようになった(宮崎県/和食/1店舗)
- テイクアウト専門店やラーメン店に変更した(新潟県/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
■その他
- 1日だけのONE DAY企画(テイクアウトだったり、店丸ごと違う業態にチェンジしたりなど)を実施。通常営業では届かない売上の日を作る(奈良県/アジア料理/1店舗) ・店舗の移転(大阪府/イタリア料理/1店舗)
- DMをホテルに置かせてもらうなど宣伝に力を入れた(京都府/バー/1店舗)
- コロナ禍で家賃が非常に安い優良物件を2件抑えてオープン。現状、しっかりと利益を上げられる店舗となっている(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
コロナ禍が明け、飲食業態も回復傾向にある。アンケートでは、順調に返済を進めている店舗が多いが、物価高や人手不足などもあり、まだまだ油断ができない状況だ。返済に不安を感じている店舗は、「コロナ借換保証制度」なども上手く活用しながら、返済を進めてほしい。
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