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人手が足りない…深刻化している外食産業の労働時間問題
●外食産業は過労死ラインの残業時間が多い
2025年10月に厚生労働省が発表した『令和7年版 過労死防止対策白書』には、国内の過労死等についての概要と、それに関連する調査が掲載されています。この中の「過労死等に係る調査・研究労災事案の傾向の分析(重点業種等②)」では、「1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行った」という過労死ラインを超える残業を行っている割合が、外食産業は18.4%であり、他の業種と比較して圧倒的に多いことが明らかになりました。さらに同白書にあるアンケート調査結果によると、「過去1か月の平均的な1週間当たりの労働時間(職種別)」は、外食産業全体で14.9%が週60時間以上でした。その割合は「店長」が29.0%と最も多く、次いで「エリアマネージャー・スーパーバイザー」が24.0%と、店舗責任者及びそれに近い役職ほど長時間労働を行っている傾向が見られました。
●長時間労働の改善には人手不足の解消が必要
「過労死等防止対策大綱」によると、長時間労働を是正するために国以外が取り組む重点政策として、事業主は勤務終了後から次の出社時までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」の導入や、年次有給休暇の取得率を上げるなどの対応が求められています。飲食店も過労死防止に向けて、積極的に対策に取り組んでいく必要があります。ただ、長時間労働是正のための対策を取るにしても、飲食業界で深刻化している人手不足が実現を難しくしています。
前述のアンケート調査結果では、「ストレスや悩みの内容(職種別)」に「ワンオペでの対応」と回答した「エリアマネージャー・スーパーバイザー」が27.0%、「欠席した他の従業員の埋め合わせ」は37.0%と高い数値でした。これらのことからも、人手不足の状況が労働時間削減の大きな枷となっているケースが多いと考えられます。
労働環境を改善して過労死防止対策に取り組むためには、まずは人手不足を解消することが根本的な解決につながるといえるでしょう。
早めの策定が鍵!人手不足解消に役立つ採用計画の立て方・立案ポイント
飲食業界においてワンオペなどによる長時間労働を解決するためには、まずは人手不足の状況から脱却することが望まれます。ただ、募集してもなかなか人が集まらない、ミスマッチですぐ辞めてしまうことが課題になりがちでしょう。
人材確保を効果的に行うには、採用計画を立てることがおすすめです。早めの策定を行うことが、他店より有利な採用活動を行うための鍵となります。
ここからは、採用計画を立てる方法やポイントを解説していきます。
●採用活動をスムーズにする採用計画とは
人材を確保して人手不足を解消するためにも、来年の綿密な採用計画を立てることから始めましょう。採用計画とは、年間を通してどの時期にどれだけの人数が必要か、また、どのような人材が必要であるかなどについて、店舗の経営方針や事業計画に沿って策定するものです。
自社に合った人物像を明確にして採用のミスマッチを防ぐ、採用活動の進捗を正確に管理できる、採用コスト・予算を事前に把握し無駄な出費をなくすなど、メリットが多くあります。
●採用計画の立て方
1 採用市場・競合の調査を行う常に人手不足の飲食業界では、他店も人材の獲得に熱心。よって、採用市場は競争が激しいため、給与や労働条件の魅力が他店より薄いと、募集をかけても応募が来ない場合もあり得ます。まずは事前準備としてのリサーチが必要です。
市場の給与相場や他店と差別化できる点、人気がある求人の傾向などの実態を把握し、自店の立ち位置を知ることで、どのような計画を立てれば他店に差をつけられるかが見えてきます。
2 採用する目標人数やターゲットを明確にし、採用方針を決定する
まずは、現在のスタッフや店舗の状況、売上目標などを把握して、必要となる人数を決めます。ある程度目標数を決めておくことで、採用人数の過不足を防げます。
また、募集対象となる職種やボジションに求めるスキルや経験を持っている、経営理念や店舗に合う人物、雇用形態など、ターゲットとなる採用基準を明確化しておきます。具体的な採用方針を決定することで、募集時や選考する際スムーズに進めることができるでしょう。
3 採用チャネル、スケジュール、コストの設定
基本方針が決まったら、採用体制を整えます。ターゲット層に効果的な求人媒体などの採用チャネルも比較検討して決めましょう。
年間スケジュールは、さまざまなイベントを考慮して組みます。例えば学生アルバイトが主力の場合、就職活動や3月の卒業シーズンで辞めてしまうことが多いです。また、転職者であれば新年度の始め3~4月や下期始めの9~10月、ボーナス時期の6、12月あたりに求職者が増えます。こうした時期を見越して採用を強化することや、募集人数を増やすことを検討します。
採用チャネルやスケジュールが決まれば、強化したい時期にコストをかけるなどの戦略を立てることができます。
●採用計画立案のポイント
・早めに採用計画を立て、実行する繁忙期に「人が足りない」と人手不足を実感してから慌ててその場しのぎで求人を出すよりも、あらかじめ余裕を持って来年の採用計画を策定しておけばスムーズな採用活動ができます。また、飲食店の採用は競争が激しいため、早めに計画して実行することが他店に差をつけるポイントです。
・繁忙期を考慮した採用スケジュールを組む
繁忙期では、ただ人員が十分なだけでは乗り切れない場合があります。現場が忙しいと新人に教える余裕がないため、即戦力の人材が必要不可欠だからです。
飲食店の場合、一般的に年末年始や春先が繁忙期とされることが多いため、育成する期間を計算して採用スケジュールを組む必要があります。自店の閑散期を利用して人材育成を行うのもおすすめです。
・採用活動の振り返りを行い、改善点を次年度に活かす
応募数や内定人数などの採用実績やスケジュール、かかったコストなど年間の採用活動全体を振り返ることで、上手くいかなかった部分を課題として把握し、次年度の採用計画に反映させることができます。採用競合とスケジュールをずらしてみたり、募集媒体を変えるなど、改善点を盛り込んだ戦略的な計画を練ることが可能になります。
まとめ:来年の採用計画で人材を確保し、過労死を未然に防ぎ労働環境の改善を
飲食店における長時間労働は、常態化してしまうと過労死などの深刻な事態につながりかねません。労働時間削減の対策を行うためには、まずは人手不足の問題を解決することが重要です。そのために今回ご紹介したポイントを踏まえつつ、来年の採用を計画的に行ってみてはいかがでしょうか。早めの策定で他店より有利に、かつ効率的に優秀な人材を確保することができます。労働環境を改善して、健康経営を目指しましょう。
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