軽減税率の飲食店への影響を調査。設備・機器の対応は8割が完了も本音は賛否両論!

2019年11月8日

画像素材:PIXTA
2019年10月、消費税率引き上げとともに導入された「軽減税率」。飲食店の場合、イートインは税率が10%に引き上げられるが、テイクアウトやデリバリー、ケータリングなどは軽減税率が適用される。消費者にとっては選択肢が増え助かるという声がある一方、異なる税率に対応できるようにレジや経理システムの変更対応を迫られた経営サイドからは悩ましい声も。そこで「飲食店リサーチ」では、飲食店経営者を対象に軽減税率制度についてアンケートを実施。飲食店のリアルな声を聞いた。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:384名
調査期間:2019年10月15日~ 2019年10月25日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「軽減税率制度」に関するアンケート調査

■回答者について
回答者のうち69%が1店舗のみを運営しています。また、東京にある飲食店の割合は52.3%(首都圏の飲食店の割合は70.8%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

軽減税率制度への対応は8割が完了!かかった費用は?


まず、軽減税率の対応が完了しているかどうかを尋ねたところ、調査を行った10月15~25日時点でレジ設備やメニュー表記などの対応が「完了している」と回答したのは、79.4%。税制改正となった10月1日から2週間ほど過ぎたころとあり、多くの飲食店がすでに軽減税率への対応を終えていた。

では、軽減税率制度導入において、必要な機器・設備購入にどのくらいの費用がかかったのだろう。最も多かったのが「0~10万円」で76%。イートインを実施しない飲食店は、税率は一律で10%に変更となるケースも多く、軽減税率に対応するためだけに大きなコストを支払う必要はない。

また軽減税率に対応する飲食店の場合もクラウドPOSレジといった低価格なサービスを利用するなどして10万円以下で収まったケースが多かったようだ。とはいえ、51万円以上の費用がかかったという店も7%近く、大きな負担を強いられているケースもある。

また今回は軽減税率導入にあたり、政府が「軽減税率対策補助金」を用意した。飲食店を含む中小企業・小規模事業者などが対象で、複数税率対応レジの導入や請求書管理システムの改修支援を行うものだ。事前の申請が必要ではあったが、例えばレジであれば1台当たり20万円を上限に補助金が支給される。

この「軽減税率対策補助金」については、およそ4割が「活用した」と回答。上手く補助金を活用して導入費用を抑えた店舗も多かったようだ。

軽減税率制度実施後にトラブルも……


今回初めて導入された軽減税率制度だが、税率10%と8%のものが混在するだけでなく、同じ商品を頼んでもイートインとテイクアウトで税率が異なるため、混乱する人も多くいる。実際に、トラブルにつながったという声も多く聞こえた。

■新しいレジやシステムの作動・操作トラブル
まず多く声が上がったのが、新たに導入したレジやシステムについてのトラブル。具体的には、以下のような自由回答が得られた。

・10月1日の導入初日には、レジのシステムが正しく作動せずに混乱が生じた。未だに、新システムに対応した電子マネー端末が導入できずに不便を生じている(東京都/その他)
・初日のみ10%のものが8%になるようなネットトラブルがあった(千葉県/焼肉)
・税率の違う商品のレジ操作ミス (東京都/アジア料理)

新しいレジに慣れるまでは、普段しないようなミスをしたり、思いのほか手間取ってしまったりした人もいる。そのため「いろいろと煩雑な手間がかかることや、会計をスムーズにしたいため増税分は結局お店でかぶり税込み価格据え置きでやっている。(神奈川県/イタリア料理)」と、あきらめ気味の声もちらほら……。

■お客さまとのトラブル
同じメニューでも、テイクアウトのほうがお得に楽しめるため「持ち帰りの客が増加 (東京都/カフェ)」という声が聞こえるものの、慣れない軽減税率制度に、お客さまとトラブルになってしまうこともあるようだ。

・最初外税表示していたが、お客様さまもレジも混乱したので結局内税表示にし直した(愛知県/カフェ)
・万全の態勢だと思ったら、お客さまと従業員に問題を指摘されました (東京都/専門料理)
・持ち帰りの対応していない商品をどうしても、持ち帰りたいとおっしゃる方に好意で10%消費税にて対応したところ、持ち帰りは8%でしょとクレームをもらった (千葉県/アジア料理)

飲食店側がしっかりと準備をしていても、お客さまが混乱してしまいトラブルにつながるケースもある。慣れていないのは、店側も客側も同じといえるだろう。

軽減税率制度について飲食店の本音は?


最後に、軽減税率制度について導入されて良かった点、悪かった点を教えてもらった。

■良かった点
・良かったことはキャッシュレス・消費者還元制度で顧客に5%還元されること、事業者のクレジット手数料が実質下がること(埼玉県/和食)
・食材の仕入れが8%なのは助かりました(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・キャッシュレス導入して、お客様が増えて、値上げもできた (東京都/そば・うどん)
・POSレジにより定常業務の時間短縮や売り上げ管理がしやすくなったことがよかった(滋賀県/居酒屋・ダイニングバー)
・この機会にメニュー、売価を見直して単価、来店数アップに繋がった(静岡県/イタリア料理)

■悪かった・不安な点
・処理が多いので、非常に面倒。税率は軽減されても労働量が増えているため、利益としては減る印象である。食材仕入れは8%、アルコール類は10%など仕入れ面でも2種類あるので経理の作業量が増え、人材不足の中、細かい事ではあるが非常に意味のない作業が増えている気がする(大阪府/居酒屋・ダイニングバー)
・Uber eatsや出前館などに登録する店が増えているようなので、デリバリーが主流になって、外食する機会が減ってしまうのではないか心配(東京都/イタリア料理)
・会計がやりづらい。店内飲食が主体なので、持ち帰りたい人のために注文をもらってからつくって容器も用意して渡しているが、経費が増えるのに税金は2%少ないのは損した気分になる(千葉県/アジア料理)
・迷いに迷って仕方がないので軽減税率対応レジを買った。一時的に資金が出ていきかなりの痛手。ぎりぎりに購入したため外国人従業員が使える英語対応のものが手に入らなかった。英語のマニュアルを作成するのに時間がかかっている(東京都/アジア料理)

まさに賛否両論である。軽減税率はもちろんだが、同時に導入されたキャッシュレス還元についても、反応はさまざまだ。これを前向きに捉えて、経営の見直しなどを行い新たな集客につなげた店もいるため、不安な点も多くあることは否めないが、上手く自店の経営に活用してもらいたいところだ。

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