コロナ禍で売上減も65%の飲食店が時短協力金で「黒字化」。87%が店舗の運転資金に

2021年9月29日

画像素材:PIXTA
9月下旬現在、国内の新型コロナウイルス新規陽性者数は減少傾向にあるものの、重症者数や死者数は依然として高い水準を示している。政府は9月9日、行動制限緩和に向けた基本方針を発表したが、同時に東京や大阪など19都道府県においては30日まで緊急事態宣言を延長するなど、飲食店にとって未だ厳しい状況が続いている。

そこで今回の「飲食店リサーチ」では、長期にわたるコロナ禍の財政支援と、資金繰り状況について調査するため、飲食店経営者や運営者に対しアンケートを実施。現在の実情をお伝えする。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:433名
調査期間:2021年8月25日~2021年8月26日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:協力金・融資・支援金の活用状況と用途、資金繰りの工夫などに関するアンケート

■回答者について

回答者のうち69.3%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は54.7%(首都圏の飲食店の割合は71%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

飲食店の半数以上が7月の売上5割以上減も、65%は「黒字」に


まず、2021年7月の経営状況について、コロナによる影響を受ける前の2019年同月と比較してもらったところ、最多は「2019年7月より70%以上減った」との回答で32.6%。次いで、「50%減った(12.9%)」、「40%減った(9.7%)」と続いた。この結果によれば、飲食店の52.4%が「2019年同月より50%以上減った」としていることがわかる。
現時点(8月25日~26日)での協力金の支給状況について伺うと、最も多かったのは「2021年6月までの要請期間分が振り込まれている」との回答で30.7%。以降は「5月分まで(24.6%)」、「4月分まで(16.1%)」、「7月分まで(12.8%)」という結果になった。 さらに、これまでに支給された協力金のおおよその総額について、自由回答で尋ねたところ、回答範囲としては400~600万円台が最も多く、約27.3%。続いて、700~900万円台、1000万円台がいずれも約19.9%、100~300万円台が約15.9%という結果になった。
こうした協力金を補填したうえでの7月の収支結果について伺うと、65%が「黒字」だったと回答。
黒字化した理由を複数回答で尋ねると、最も多かったのは「協力金の支給」で87%。次いで「人件費や食材費などのコスト削減による効果(28.3%)」、「テイクアウトやデリバリーの売上利益(20.1%)」との回答が続いた。

協力金・融資金の用途、9割の飲食店が「固定費の支払い」や「食材の仕入れ」などに充当


次に、これまで活用したことのある新型コロナウイルス関連の融資制度について複数回答で聞いてみると、最多は「新型コロナウイルス感染症特別貸付」との回答で、43.6%。続いて「セーフティネット保証4号・5号(29.1%)」、「特別利子補給制度(18.9%)」となった。一方で、「融資を受けたことはない(39.7%)」という回答者も4割近くいた。
加えて、これまでに得た融資金のおおよその総額について尋ねたところ、「5,000万円以下」との回答が最も多く33%。以降は「400万円以下(19.2%)」、「1,000万円以下(18.8%)」、「700万円以下(15.3%)」となった。
続いて、支給された協力金や融資金の主な用途について伺うと、「既存店舗の運転資金(食材の仕入れや固定費の支払いなど)」との回答が86.5%と最多に。次いで「雇用の維持(従業員への給与など)(45.4%)」、「プライベートの生活費(13.7%)」という結果になった。
次に、感染拡大防止協力金を除く給付金・助成金・補助金のうち、これまでに活用したことがあるものを複数回答で聞いたところ、81.1%が「持続化給付金」と回答し、さらに「家賃支援給付金(69.5%)」、「雇用調整助成金(新型コロナ特例)(42.7%)」と続いた。
また、活用したことのある協力金以外の給付金・助成金・補助金のおおよその支給総額について自由回答で尋ねたところ、最多の回答範囲は100~200万円未満で約24.7%。次いで200~300万円未満が約18.2%、300~400万円未満が約13%という結果になった。

「経費削減」と「協力金活用」を徹底。コロナ禍における飲食店の資金繰りの肝に


続いて、長引くコロナ禍において閉業・閉店を検討したことがあるか、または今現在検討しているか聞いたところ、66.3%が「閉業・閉店を検討したことはない」と回答。一方で、26.3%は閉業について考えていることも明らかとなった。

ちなみに、「すでに閉業・閉店した」または「閉業・閉店を検討したことがある」と回答した人のうち、7月の収支結果が「赤字」だった割合は約42.5%(「検討したことはない」の赤字率は約26.1%)、協力金の支給状況については「5月までの要請期間分が振り込まれている」が最多となった(「検討したことはない」では「6月まで」が最多)。
また、閉業・閉店の際に想定する対応を尋ねると、最も多かったのは「居抜き売却(52.1%)」、次点は「スケルトン返し(24.7%)」。また、少数ではあったものの「M&A(株式譲渡・事業譲渡など)(8.2%)」との回答も寄せられ、そのすべてが運営店舗数1~5店舗の小規模な飲食店であることもわかった。 最後に、現在、資金繰りの安定を図るために行っていることや工夫していることなどを伺うと、「固定費や人件費をできる限り削減する」、「協力金などの支援金を徹底的に活用する」といった回答を中心に、以下のような回答が寄せられた。

■あらゆる経費の削減

・ユニフォームのレンタルをやめる、マットの交換を月2回から月1回に減らすなどして固定費を減らしました(東京都/フランス料理/1店舗)

・スタッフィングの縮小、材料費の削減(埼玉県/洋食/1店舗)

・水道光熱費の最小化を目指してます(東京都/イタリア料理/1店舗)

■支援金の徹底活用

・支援金や助成金の情報を常にチェックし、申請漏れのないようにする(東京都/カフェ/3~5店舗)

・雇用調整金・協力金など全て申請し、雇用の安定を図りつつお客様へのコンスタントな連絡を行っている(東京都/バー/1店舗)

・とにかくSNSや知り合いなどを通じて徹底的に支援金を受けられるように情報収集している(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■新たな販路の確立

・冷凍品のWEBサイト販売で売上を作る(東京都/その他/1店舗)

・新たにキッチンカーを導入し、販路拡大を目指す。活用できる支援金は徹底的に活用する(神奈川県/カフェ/1店舗)

・雇用は維持しつつできる範囲の固定費を抑えて、テイクアウトやデリバリーなどでわずかでも売上を作る(大阪府/イタリア料理/1店舗)

■客単価の値上げ

・客単価を上げている(千葉県/カフェ/2店舗)

・売値を上げる(東京都/洋食/1店舗)

■地道な集客活動

・チラシポスティングや、看板設置などに使い、この先もお客さんが途切れないようにしている(東京都/テイクアウト/1店舗)

・コンスタントにお客様への連絡を図っている(東京都/バー/1店舗)

■とにかく耐える

・お客さんたちは来たがってくれているので、とにかく緊急事態宣言等が解除になるのを待つしかない。経費はなるべく抑える(埼玉県/イタリア料理/1店舗)

・「何もしない」が1番の黒字(神奈川県/カフェ/1店舗)

また今後に向け、新事業の立ち上げや、業種転換を検討する人も一定数見られた。

・路線変更の計画。できれば新規事業に参入して、業態変換の補助金も申請したい(千葉県/アジア料理/2店舗)

・これからであるが、事業再構築補助金を検討し、事業転換を検討中(秋田県/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)

・飲食店である必要性が無いのであれば、積極的に業態転換を行っていく事が黒字への近道。今まで通りを捨てたらめちゃくちゃ利益率改善できました(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

今後、緊急事態宣言ならびにまん延防止等重点措置が解除されれば、状況はまた大きく変わってくるだろう。営業時間や酒類提供への制限が「緩和」された場合、協力金などの支援金支給はどうなるのか。政府の発表を注視していきたい。

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