飲食店の43.8%が接種証明等の活用に概ね賛成。 コロナ禍の行動制限緩和について調査

2021年10月27日

画像素材:PIXTA
新型コロナワクチンの接種が進むなか、政府は経済の回復を目指し、本格的な行動制限緩和に動き出している。すでに行動制限緩和に向けた実証実験も始まりつつあるが、飲食店はこのような動きをどのように見ているのだろうか。

そこで今回の「飲食店リサーチ」では、新型コロナワクチン接種の進捗に伴う行動制限緩和に関するアンケート調査を実施。行動制限緩和にまつわる飲食店のリアルな声をお届けする。なお、本調査の実施時期(2021年9月27日~9月28日)は、緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が適用されていた期間であることを留意してほしい。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:486名
調査期間:2021年9月27日~2021年9月28日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:新型コロナワクチン接種の進捗に伴う行動制限緩和についてのアンケート

■回答者について

回答者のうち69.5%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は53.1%(首都圏の飲食店の割合は70.1%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

約7割の飲食店が行動制限緩和に「概ね賛成」の一方、懸念の声も


まず、2021年8月の売上をコロナ禍前(2019年)の同じ時期と比べてもらった。すると、最多となったのは、「2019年8月より70%以上減った(38.7%)」という回答。これに、「50%減った(10.3%)」、「40%減った(9.1%)」という回答が続く。

「50%以上減った」と回答した飲食店は56.8%にも及んでおり、半数以上の飲食店が依然として厳しい状況であることがうかがえる。7月に同様の質問をした際も52.4%の飲食店が「2019年7月より売上が50%以上減った」と回答しており、8月に入ってからも経営状況が改善していない様子が明らかとなった。
冒頭でも触れた通り、政府はワクチンの接種状況などを踏まえた上で、行動制限緩和に動き始めている。こうした、飲食店に対する時短営業や酒類販売停止を見直す動きについての賛否をうかがったところ、最も多かったのが「賛成(40.5%)」という回答。次いで、「どちらかといえば賛成(28%)」が続いており、合わせると68.5%もの飲食店が行動制限緩和に「概ね賛成」であるという結果が得られた。

一方、「どちらかといえば反対」は6.2%、「反対」は3.5%となっており、合わせると9.7%の飲食店が「概ね反対」であることがわかった。なお、「どちらともいえない」は、19.8%だった。 また、政府は行動制限の緩和に伴い、ワクチン接種歴やPCR等の検査結果を確認する「ワクチン・検査パッケージ」の導入を検討している。そこで、「ワクチン・検査パッケージ」の活用についての考えを尋ねたところ、「概ね賛成」だという飲食店は、43.8%(「賛成(21.4%)」、「どちらかといえば賛成(22.4%)」)。一方、「概ね反対」の飲食店は29.9%だった(「反対(16.9%)」、「どちらかといえば反対(13%)」)。
続いて、先ほどの「ワクチン・検査パッケージ」の活用に関する質問の回答理由を自由回答形式で尋ねた。賛成派から「店やお客様にとって安心材料になる」という声が上がる一方、反対派からは「店側の負担が増えることへの心配や差別への懸念」などが見られた。以下にその一部を抜粋して紹介する。

※「概ね賛成」とする理由

■経済回復の施策として期待

・安全性が証明されることで、経済の回復が期待できるため(東京都/カフェ/2店舗)

・許容の範囲内で少しずつでも経済を回していくべき(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■感染対策として期待

・従業員を感染から守るため(埼玉県/イタリア料理/6~10店舗)

・店側に対しては緩和とはいえ制限が与えられているのに、反発で人流は増えるだろうから、コロナ感染に対して意識している人でないと店側も怖いです(神奈川県/バー/1店舗)

■わかりやすい判断材料になるため

・わかりやすい指標になると思うから(東京都/洋食/1店舗)

・何か基準を設けた方が経済的にも良いと思うから(宮崎県/バー/1店舗)

■安心材料になるため

・お客様に対して安心感を与えられるから(大分県/テイクアウト/1店舗)

・来店される側のお客様と迎える側のお店との双方での安心材料となるため(石川県/その他/1店舗)

※「概ね反対」とする理由

■店側の負担が増えることを懸念

・個店がそこまで確認しながらの営業は難しい(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・人手が不足しているなか、手間が増えることになるので、対応しきれない。本当に意味があるのか疑問(東京都/1店舗/中華)

■差別になりかねないため

・管理が大変。差別につながる(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・お客様に対して証明を確認することの負担。また、接種の有無等の差別化はしたくないです(東京都/バー/1店舗)

■ワクチン接種は強制ではないから

・接種できない人もいるし、強制すべきではないから(東京都/バー/1店舗)

・検査はともかく、ワクチン接種は個人の自由であるべきと思うため(新潟県/フランス料理/1店舗)

■お客様とのトラブルを不安視

・店頭での確認作業におけるトラブルの可能性が非常に高いと感じる。活用する場合は、事前に行政からのガイドライン(不測の事態が起きた場合などの)、責任の所在や行政窓口なども全て明確になり、国民が理解した上での活用・導入が必須と考えています(東京都/カフェ/6~10店舗)

■導入の効果に疑問を感じている

・負担が増えるだけで、効果があるとは思えないから(兵庫県/カフェ/1店舗)

・あまり安全を保証するものには思えないから(大阪府/カフェ/1店舗)

緩和後の感染再拡大、客足の回復などに不安を感じる店多数


次に、2021年内に一定の条件下で飲食店の時短営業や酒類提供の停止、人数制限の緩和が行われた場合の営業方針について尋ねた。(※9月末で宣言が解除され、現在は段階的な緩和措置が取られている)

最も多かったのが、「制限緩和の方針に従い営業を行う(86%)」という回答。約9割の飲食店が提示された方針に従いながら営業をするとしている。一方で、「制限緩和に関係なく、時短営業などの自粛に努める」と回答した飲食店も5.6%あった。
そこで、制限緩和に関係なく、自粛に努める理由をうかがった。以下に一部の回答を抜粋して紹介する。

■先行きが不透明なため

・状況が読めない。開けたり閉めたりそんなに簡単にできるものじゃない。現在、休業中(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・またいつ逆戻りするかわからない。更なる安心感が持てるまでは判断が難しい(東京都/そば・うどん/1店舗)

■感染が拡大しないか不安だから

・クラスターを出さないように努めたいので(東京都/バー/1店舗)

・今はまだ感染拡大の状況をつくりたくないので…。今後の状況判断で決めていきます(東京都/洋食/1店舗)

■感染対策を徹底できない

・小規模な経営なので、感染防止の徹底ができづらい(東京都/アジア料理/1店舗)

最後に、今後、行動制限が緩和されるにあたり、不安に思っていることや期待していることを自由回答形式で答えてもらった。すると、来店客の増加に期待する店舗がある一方、感染の再拡大や客足回復への懸念など、不安の声が多く寄せられた。

※行動制限緩和にあたり不安に思うこと

■客足が回復するのか不安

・かなり長期に渡り休業していたので、お客様が戻るのか、また体力が持つか心配(東京都/バー/1店舗)

・外食に対するマインド自体が変わってしまったので、これまでとは違うやり方をしていかないと通用しないであろうという不安はある(愛知県/専門料理/3~5店舗)

■感染が再拡大し、営業が制限されないか心配

・解除後、しばらくしてまた緊急事態宣言が出ないか不安(京都府/テイクアウト/1店舗)

・緩和されると昨年と同様に年末の忙しい時期に営業制限されないか心配です(愛知県/和食/1店舗)

■お客様がルールを守ってくれるのか心配

・ルールに従わない人もいる。お酒が入ると騒ぐ人も増えるのでは? どうなるか心配です(東京都/ラーメン/1店舗)

・店側のルールに従わない人が増えて対応に手を取られそう(兵庫県/カフェ/1店舗)

■協力金が支給されなくなるのではないか

・緩和されることで協力金のはしごを外されるのではないかという不安(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・行動制限が緩和されても、コロナ前までの水準にどこまで戻るかが心配。行動制限の可否ではなく、あくまでコロナ前の売上との比較に連動する形で、しばらくは協力金の支給が続くことを願う(埼玉県/イタリア料理/6~10店舗)

■店内でのクラスターを心配

・自分の店からクラスターが出るのが心配(東京都/ラーメン/2店舗)

・店内で感染があったら怖い(東京都/アジア料理/1店舗)

※行動制限緩和にあたり期待すること
・ワクチンパスポート等が普及し、一定の対策がなされた客のみ入店が可能になる仕組みづくりを期待している(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・制限緩和によって、来客が増えることを期待している(京都府/カフェ/2店舗)

・酒類提供の再開による経済活性化に期待(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

今回のアンケートでは、今後の行動制限緩和について「概ね賛成」とする飲食店が多い一方、期待よりも不安を感じている飲食店の方が目立っていた。11月頃から本格的な行動制限緩和が始まると見られているが、具体的にどのような内容となるのか、今後も注視していく必要がありそうだ。

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