“缶切り”は死語?Z世代の従業員を雇用した飲食店のうち81.1%が世代間ギャップを実感

2023年6月12日

画像素材:PIXTA
春は働き手の応募が新たに増える季節。とくに最近は、1996年~2012年に生まれた「Z世代」の従業員を雇う機会が増えてきた飲食店も多いのではないだろうか。そこで今回は、飲食店経営者や運営者に対し、Z世代の従業員との関わり方を調査するためアンケートを実施。飲食店におけるZ世代の従業員の動向や、雇用側がZ世代に期待していることなど、リアルな様子をお伝えする。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:360名
調査期間:2023年4月27日~2023年5月9日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち70%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は51.4%(首都圏の飲食店の割合は67.3%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

76.1%の店舗で、Z世代の従業員が在籍していた経験あり


まず、Z世代の従業員が在籍しているか質問したところ、76.1%が「Z世代の従業員の在籍経験がある」(「在籍している」=53.3%、「現在は在籍していないが、過去に在籍していた」=22.8%)と回答。すでに、多くの飲食店でZ世代が活躍していることがわかった。



次に、「Z世代の従業員の在籍経験がある」(「在籍している」、「現在は在籍していないが、過去に在籍していた」)と回答した方に、自店舗でシフト勤務するZ世代の従業員において、希望する働き方の傾向を尋ねたところ、「学業やプライベートを優先させた方がいい」との回答を50.7%が選び、最多となった。次いで、「週1~2日程度の勤務(37.2%)」、「週3~4日程度の勤務(25.9%)」と続くことからも、Z世代は学業やプライベートを重視した働き方を希望する傾向が見られる。


続いて、「Z世代の従業員の在籍歴がある」と回答した方に、Z世代の従業員を契機として、既存の慣習やシステムを変更した経験があるか尋ねた。すると、75.9%が「ない」と回答した一方、24.1%が「ある」と回答した。


そこで、「ある」と回答した方に具体的に何を変え、どのような効果が得られたか質問したところ、「連絡の取り方を変えた」「シフトの組み方を変更した」などの声が多く寄せられた。

■シフト申請や連絡事項にLINEを導入した
  • シフトの提出や急なシフト変更、連絡事項など店長と従業員の1対1のやり取りだったのを、グループLINEにて情報を共有した(大阪府/イタリア料理/1店舗)
  • シフト申請や連絡など、全てLINEを通じて行うようになった(秋田県/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)
  • シフトの仕組み自体をこれまでのエクセルと希望用紙を使用していたのをLINEを使用したものに変更。シフトのアンマッチやミスがかなり減った(神奈川県/焼肉/11~30店舗)

■シフトの組み方に柔軟性をもたせた
  • 出退勤時間をフレキシブルにした(東京都/イタリア料理/1店舗)
  • シフトを月1回から月2回にして、従業員のプライベートを優先できるやり方に変えた(東京都/イタリア料理/1店舗)
  • シフトの調整を本人の意思優先にして離職を防いだ(神奈川県/アジア料理/3~5店舗)

■雇用形態や労働環境などを整備
  • 社員の枠組みに限定社員制度を作ったところ、応募者数が増えた(神奈川県/焼肉/11~30店舗)
  • ボーナス制度を作って士気があがった(東京都/焼肉/1店舗)
  • 労働環境を変えた。髪型・化粧・ピアスなどの装飾品などスタッフに対して寛容に対応している。それによって離職が減ったのと新規雇用応募が増えた(東京都/バー/1店舗)

「世代間ギャップ」を感じたことがある飲食店は8割超え


また、「Z世代の従業員の在籍歴がある」と回答した方に、Z世代の従業員との間に世代間ギャップを感じた経験があるか答えてもらった。すると、最も多かったのが「ややある」との回答で45.3%。続く「とてもある(35.8%)」との回答を合わせると、81.1%もの人がZ世代の従業員との間に世代間ギャップを感じていることが明らかとなった。


次に、世代間ギャップを感じた経験が「とてもある」、「ややある」と回答した方に、具体的なエピソードを質問したところ、さまざまな体験談が寄せられた。

■電話の受け答えが苦手
  • 電話の受け答えができない。敬語が使えない(千葉県/専門料理/1店舗)
  • 固定電話の取り方がわからなかった。スマホに慣れているためボタンを押すという発想がなかった(福岡県/ラーメン/1店舗)

■缶切りや栓抜きなどが使えない
  • 缶切り栓抜きなど、使えない道具があった(東京都/テイクアウト/2店舗)
  • 瓶の栓が開けられない(沖縄県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■プライベートを優先しがち
  • 仕事が残っていても先に決めている終了時間を優先して帰ってしまう(東京都/フランス料理/1店舗)
  • 休日(プライベート)を最優先する子が多い。収入には、それほどこだわりがない(三重県/その他/1店舗)
  • 社員旅行に一緒に行くのを嫌がる(兵庫県/和食/6~10店舗)

■仕事への姿勢や責任感
  • 指示以外のことは基本的にやりたがらない(神奈川県/ラーメン/2店舗)
  • 責任感の欠如。自分に直接プラスにならないことはやらない等(愛知県/その他/1店舗)
  • 遅刻や欠勤など、責任感に欠ける部分があります(東京都/バー/3~5店舗)

■その他
  • 退職の意志をメールで送ってくる(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 叱られ慣れていないせいか、それによる反省や意識の変化が少ないように感じる(東京都/専門料理/2店舗)
  • SNSの使用時間や知識の量が全く違う(東京都/カフェ/2店舗)

続いて、「Z世代の従業員の在籍歴がある」と回答した方に、Z世代の従業員とコミュニケーションを取る際に気を付けていることを尋ねたところ、最も多かったのは、「フラットな立場でフレンドリーに接する」との回答で40.5%。「仕事へのモチベーションを下げないように配慮する(35.8%)」、「仕事へのモチベーションを上げるように働きかける(34.3%)」も、共に3割を超える人が選んでいる。


さらに、それらの回答について、具体的な内容を答えてもらったところ、Z世代の従業員への接し方や指導方法などの面で、各店さまざまな工夫を行っている様子が明らかとなった。いくつか抜粋して紹介する。

■フラットな立場でフレンドリーに接する
  • 心をひらいてくれるようにフレンドリーに話しかける(神奈川県/ラーメン/2店舗)
  • 仕事以外で食事や飲み会の場を増やしたり休日に催し物を開催(東京都/ラーメン/3~5店舗)
  • 仕事以外で食事や飲み会の場を増やしたり休日に催し物を開催(東京都/ラーメン/3~5店舗)

■仕事へのモチベーションを下げないように配慮する
  • とにかく言葉にして褒める優しく指導する(東京都/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
  • 叱るスタンスは取らず、フランクに状況説明するようにしている(神奈川県/ラーメン/1店舗)
  • 働いてもらっていると考え、厳しいことは言わずに優しく誘導して店のクオリティを上げていけるようにと考えている(千葉県/和食/3~5店舗

■仕事へのモチベーションを上げるように働きかける
  • (従業員の)興味があること、ないことを把握し、可能な限り仕事を主体的に取り組めるような業務をわりふるようにしている(東京都/カフェ/2店舗)
  • コミュニケーションを自分から取り、いいところは褒める(東京都/専門料理/1店舗)
  • テーマを与える、考えさせて仕事に取り組ませる(静岡県/和食/1店舗)

飲食店の5割以上が、Z世代に「任せたいタスクあり」。SNS運用やホール業務など


Z世代の従業員にこそ任せたいタスクがあるか尋ねた質問では、「特別、任せたいタスクはない」との回答が49.7%で最多。一方で、「任せたいタスクがあり、すでに任せている」が21.9%、「任せたいタスクがあるが、まだ任せられていない」が28.3%と、現状の依頼状況に差はあるものの、約半数が「任せたいタスクがある」と回答している。


続いて、「任せたいタスクがあり、すでに任せている」、「任せたいタスクがあるが、まだ任せられていない」と回答した方に、どのようなタスクを任せたいのか尋ねたところ、60.8%の人が「SNS運用によるプロモーションや集客」と回答し、最多に。次いで、「接客・配膳・会計・片づけなどのホール業務(40.3%)」、「店頭店内のメニューボード・POP作成(38.7%)」との回答が続く。


また、回答したタスクを任せたい理由についても答えてもらったところ、ほとんどのタスクにおいて「Z世代ならではの新鮮な発想、価値観を活かしてほしいから」との回答を選択する傾向が目立った。こうしたなか、「調理」、「予約受付・問い合わせ対応」、「人材採用・育成」については「今の文化や流行に関する知識を生かしてほしいから」との理由を選ぶ傾向が比較的高く見られる。これは、今の流行をメニューに取り入れたいとの考えや、SNSを活用した予約導線、人材募集のしくみに注目する飲食店が増えてきているためとも推察される。


最後に、自店舗における現状の課題や悩みについて尋ねたところ、Z世代との関わり方についても多くの意見が寄せられた。そのなかでもとくに目立っていたのが、「人材」に関する悩みで、Z世代をはじめとする若手の人材不足や育成などに苦悩している店舗が多く見られた。

■Z世代の人材が不足している
  • 若者をもっともっと採用したいが、なかなか応募が来ない(東京都/アジア料理/6~10店舗)
  • 若い人の力は借りたいが、今の経営状態では雇用に不安しかない(東京都/フランス料理/1店舗)
  • Z世代含め、バイトが長続きしない(東京都/バー/1店舗)

■Z世代を育成するのが難しい
  • Z世代を育てるのが困難(大阪府/カフェ/1店舗))
  • 若臨機応変な対応が苦手な方が多いので、理由とともに説明するなど工夫して指導しておりますが、習熟まで時間がかかるのでその間のフォローに苦慮しています(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

人材不足が深刻化している飲食店にとって、現在10代~20代であるZ世代の働き手は無視できない存在だ。アンケートを見ると、Z世代との間にギャップを感じている人も多いが、今後さらにZ世代の人材が増えてくることを考えると、若い世代の考え方などを理解しようとする努力も、採用活動を行ううえで重要になってくるだろう。

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