飲食店バックヤード業務の実態を調査。 2割がシステム導入で効率化、うち5割超で工数減の効果

2023年9月1日

画像素材:PIXTA
飲食店スタッフの仕事には、接客やオーダーテイクのほか、仕入れや売上管理、在庫管理といった客席以外のスペース(バックヤード)で行う業務が数多くある。煩雑で手間がかかる一方、飲食店を経営していく上で重要な業務だ。そこで今回は、飲食店経営者や運営者に対し、バックヤード業務の現状について調査をするためアンケートを実施。業務効率化のために導入しているシステムの名称や金額など、リアルな飲食店のバックヤード業務事情をお届けする。

<本調査について>

■調査概要

調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:342名
調査期間:2023年8月1日~2023年8月8日
調査方法:インターネット調査

■回答者について

本調査にご協力いただいた回答者のうち69%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は52.6%(首都圏の飲食店の割合は68.4%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

<調査結果について>

飲食店で最も工数がかかるバックヤード業務は「在庫管理と発注・仕入れ」


まず、一か月のバックヤード業務において、最も工数(人員×時間)を割いている作業を尋ねたところ、最多は「食品・備品などの在庫管理と発注・仕入れ(29.2%)」との回答。次いで、「売上額の記録・集計・分析(17.8%)」、「新メニューの検討・開発(16.4%)」と続く。全体では、食材の管理や仕入れ、メニュー開発など、調理関連の作業がやや目立っている。


続いて、前問で回答したバックヤード業務のメイン担当者について答えてもらったところ、最も多かったのは「店長・統括マネージャー」との回答で64.9%だった。


さらに、工数がかかる具体的な理由について尋ねると、さまざまな要因があることがわかったため、作業別にいくつか紹介する。

<食品・備品などの在庫管理と発注・仕入れ>に工数がかかる理由
■仕入先まで出向いているため
  • 複数の仕入れ先に現地まで行って、その時の安くていいものを選んでいるので、どうしても手間がかかる(大阪府/イタリア料理/2店舗)
  • 市場まで仕入れに行く(東京都/その他/1店舗)

■ワンオペで行っているため
  • 全部一人でやるので(福岡県/その他/1店舗)
  • 当店は自分以外がアルバイトのため、責任が重い仕事(営業に支障が出そうな仕事)は極力自分で行うようにしています(東京都/カフェ/1店舗)

■扱う食材の数が多いため
  • 食材の種類の多さ(東京都/その他/1店舗)
  • デリバリーを始めたので、取り扱う食材・備品などが格段に増えた(東京都/バー/1店舗)

<売上額の記録・集計・分析>に工数がかかる理由
■手作業で管理をしているため
  • 全て手作業で打ち込んでいる(石川県/その他/1店舗)
  • レジがPOSでないため、集計、記録等は手作業の為(大阪府/その他/101店舗以上)

■一人で作業を行っているため
  • すべての事務作業を個人でやっているため(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 従業員がいないので、その仕事がメインになる(静岡県/和食/1店舗)

<新メニューの検討・開発>に工数がかかる理由
■試作を何度も繰り返すため
  • 何度も試行錯誤するため(大阪府/カフェ/1店舗)
  • 配合を細かく変えた複数のレシピを試作して比較試飲するためが主な理由です(大阪府/カフェ/1店舗)

■ニーズの調査に時間がかかるため
  • 必要なニーズがコロナ後で変わってきているので調査などに時間がかかるため(愛知県/カフェ/2店舗)
  • ニーズの読み取り、予測が相当に難しい(東京都/バー/1店舗)

21.3%の飲食店が、バックヤード業務を効率化するためシステム等を導入


次に、バックヤード業務を効率化するために、システム等を導入した経験があるか質問した。すると、最も多かったのは「現在活用しておらず、今後導入する予定もない(48.0%)」との回答。システム等を使った効率化に、消極的な店舗が半数近くを占める結果となった。一方で、21.3%は効率化のために、システム等を導入した経験が「ある」と回答。また、「現在は活用していないが、今後導入する予定」との回答も11.7%見られることから、約3割の店舗はバックヤード業務のシステム化に前向きだと言える。


続いて、バックヤード業務のシステム化に前向きな店舗(=「ある」、「現在は活用していないが、今後導入する予定」)に、具体的にどのような作業にシステムやサービスを導入しているのか(またはする予定なのか)尋ねたところ、「売上額の記録・集計・分析」との回答が46.9%で最多に。続く、「食品・備品などの在庫管理と発注・仕入れ(38.9%)」、「従業員の勤怠管理から給与支払いの手続きまで(31.0%)」も3割を超える店舗が選択している。


また、バックヤード業務の作業を効率化するために利用している(または今後利用予定の)ツールやサービスの名称を回答してもらったところ、さまざまな回答が得られたため、目的とする作業ごとにいくつか抜粋して紹介をする。

<売上管理>
Airレジ(エアレジ)・square(スクエア)・クロジー

<発注管理>
CO-NECT(コネクト)・クロスオーダー・TANOMU(タノム)

<勤怠・シフト管理>
KING OF TIME(キングオブタイム)・Airシフト(エアシフト)・らくしふ

<予約管理>
トレタ・テーブルチェック・エビカ

ツールやサービスを導入する決め手は、機能性よりも費用


次に、システムやサービスを導入したことが「ある」と回答した方に、ツールやサービスを導入する決め手となったポイントを尋ねた。すると、最多は「ランニングコストの安さ」との回答で63.0%。次いで、「操作性、使い勝手が良さそうだと感じた(52.1%)」、「初期費用の安さ(47.9%)」と続いた。「機能性の高さ、充実度」は39.7%となっており、機能性よりも費用面が決め手となる傾向が高い。


その上で、ツールやサービスの導入効果について答えてもらったところ、最も多かったのは「作業工数が減った」との回答で56.2%。さらに、31.5%は「作業工数は変わらないが、進めやすくなった」と回答しており、87.7%の店舗がツール等の導入により何らかのメリットを感じていることがわかった。


また、導入しているツール等の月額費用について質問したところ、「1万円未満」との回答が42.5%で最多に。続く「1~5万円(32.9%)」との回答と合わせると、「5万円以内」との回答が7割を占めている。


さらに、今後ツール等を導入する予定の人に、導入する際のおおよその月額予算を尋ねたところ、最も多かったのは「1万円未満(45.0%)」との回答で、半数近くが1万円以内を想定しているようだ。


最後に、バックヤード業務に限らず、今抱えている課題や悩みについて教えてもらった。すると、「深刻な人材不足」に悩む店舗の多さが浮き彫りに。またほかにも、「コロナ禍からの回復の遅さ」や「原材料費の高騰」など、各店舗いろいろな悩みを抱えているようだ。

■求める人材が不足している
  • 人員不足、正社員がなかなか雇えない(兵庫県/フランス料理/1店舗)
  • 欲しい人材が確保できない(東京都/和食/1店舗)

■長引くコロナ禍の影響
  • コロナが5類になったが、お客さんの戻りがまだ良くない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 夜の来店人数がまだ減っているので増やす方法を考えています(東京都/ラーメン/1店舗)
  • 集客。暑くて客足がかなり落ちている(千葉県/イタリア料理/1店舗)

■その他
  • キャンセルポリシーを守らない人間からのキャンセル料の回収(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
  • 国の最低給与の引き上げによる負担増(東京都/イタリア料理/3~5店舗)
  • インバウンドをうまく取り込めていない(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
  • 毎月何かしらの物の値段が上がるので売上と利益の予想が立てにくい、また安易に販売価格も上げることができない(石川県/その他/1店舗)

今回のアンケートでは、一部の店舗ではツール等を使ったバックヤード業務の効率化が図られているものの、多くの店舗では新たな環境の整備に消極的な様子が見られた。しかし、システムを導入している店舗の約8割以上が何らかのメリットを感じていることから、その効果自体は高いと言えるだろう。

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