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秋採用のメリット・デメリット
転職市場は通年動いていますが、事業年度から考えたり、周囲に合わせたりして、2〜3月と8〜9月に採用活動に力を入れる傾向にある企業が多くあります。一方、求職者側は、競争が激しくなる時期をずらして10〜11月に転職活動をはじめるケースが増えています。求人件数は減るものの、時期をずらすことでじっくりと面接をしてもらえるけれど、選考は早く進むことにメリットを感じているようです。企業・店舗側には、一般的な知名度が高くなくても、求職者に知ってもらいやすくなるメリットがあります。また、新卒学生においては、採用活動ははっきりとシーズンが区切られていて、なかでも最も活発化するのは、春から夏にかけての時期。これは、政府が主導して「採用広報活動を解禁できるのは3月、採用選考活動を解禁できるのは6月」というルールを定めているためです。
秋採用なら、春・夏採用では内定が出なかった学生、春・夏採用の時期に資格試験などに挑戦していて、秋の時点で就職先が決まっていない学生にも出会うことができます。慢性的な人手不足に陥っている飲食業界においては、人材確保のハードルが下がるという大きなメリットがあります。
ただし、採用活動を行えば、その分コストがかかりますし、研修コストも増加します。採用担当者の負担が大きくならないよう、人員補充やスケジュール調整によって対応することが必要でしょう。
人材獲得のポイントはサポート体制の充実
コロナ禍が落ち着きつつある現在、「コロナの影響で就職先を十分に吟味できず、とりあえず就職したが、今の仕事に不満があり転職したい」という人の動きが加速しているとみられています。こうした求職者の多くは、コロナ禍の混乱のなかで、周囲のサポートや教育を十分に受けられなかったことに不満を感じているそう。また、先行きが不透明な時代を過ごしたことで「手に職をつけて生きていきたい」という思いが高まっている人もいるようです。
サポート体制や教育制度が充実しており、安心して技術の研鑽やキャリア構築に励める企業・店舗であれば、こうした人々も転職先としての魅力を感じやすいはず。今一度、受け入れ体制を充実させ、自社・自店の魅力として積極的にアピールしていくことも大切です。
2023年版最低賃金のポイント
なお、採用活動を行ううえでは必ず知っておきたいのが、最低賃金の最新動向です。2023年度の最低賃金の引き上げ額は、全国平均で過去最大の43円。時給の全国平均は1,002円となり、初めて1,000円台に到達しました。最新の最低賃金は、10月1日から順次発効されます。使用者は、労働者に最低賃金額以上の賃金を支払うことが義務付けられています。これは常用・臨時・パート・アルバイトを問わず、すべての労働者に適用されます。また、最低賃金未満の賃金の場合、たとえ使用者と労働者の間で合意があったとしてもその契約は無効となります。
最低賃金改定と同時に時給アップが見込まれることから、秋にはパート・アルバイトの応募も増える可能性があります。そのタイミングに合わせて採用活動に注力するとともに、地域別の最低賃金額をしっかりと確認し、時給額に反映しておきましょう。
冬は飲食店にとって大切な繁忙期。余裕を持って乗り切るためには、秋の採用シーズンのうちに人材を確保し、冬までに教育を済ませておけるとベストです。今回ご紹介したポイントを押さえ、この秋は積極的に採用活動を行いましょう。
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