画像素材:PIXTA
「採用するなら20代」は過去の話
かつての採用市場では、若さと将来性を重視し、20代~30代前半の人材を積極的に採用していました。若い人材は他社の風習に染まっておらず、伸びしろがありますし、年功序列型の賃金体系では低い給与からスタートできるので、採用側にとってはメリットが大きいといえます。応募者側でも、35歳以下で転職しなければ、定年までに出世・昇進することが困難になると考える「35歳転職限界説」が一般的になっていました。これは、新卒で入社した会社に定年まで勤め上げるという終身雇用・年功序列の仕組みが存在していた時代の名残りと考えられます。
現在の日本社会では、すでに終身雇用・年功序列の仕組みは崩壊しかけており、転職が当たり前の時代を迎えています。「採用するなら20代」「転職するなら20代」は、もはや過去の話になっているのです。
経験豊富なミドル世代の転職が増加
近年は、働き方の多様化により、30~50代のミドル世代の転職が増えています。かつては、ミドル世代の採用を敬遠する飲食店は少なくありませんでした。キャリアがあるぶん今までの自分のやり方に固執したり、高い給与を支払ったりする必要があったからです。しかし、ミドル世代はまだまだ体力がある働き盛りながら、20代の若手人材に比べて経験が豊富です。職場で責任のある仕事を経験している人材も多くいます。新しいやり方になじむ柔軟性さえあれば、頼れる存在になる可能性があるのです。
また、ミドル世代は勤務態度が良好なことも多く、「バイトテロ」などのリスクを減らせます。一般常識や社会生活の中で培うトラブル対応力、コミュニケーションスキルなどを一から教えずに済む人も多いので、教育コストを抑えることもできるでしょう。さらに、人脈を持っていて、リファラル採用(リファラル:紹介、推薦。既存社員に人材を紹介してもらう採用方法)ができる可能性もあります。こうした人材が増えると店の基盤が強くなるため、事業を拡大したいときにも安心です。
採用時に注意しておきたいのは、採用後のポジションの流動性を無くすこと、流動性がある場合はその可能性を伝えておくことです。キャリアも経験もある分、どういった働き方をしたいかの明確なビジョンを持っている人もいます。面接時とは異なるポジションを任せる、短期間で業務内容を変更するようなことがあれば、早期の離職につながりかねません。
元気なシニア世代も戦力に
60代以上のシニア世代も、健康面や体力の心配がなければ心強い戦力になります。シニア世代は若い世代のように転職も簡単ではないため、勤め始めれば強い責任感をもって働いてくれます。また、試験や学校行事がある学生や子育て中の世代などには、シフトに入れない時期や急な休みなどがつきもの。しかし、子育てを終えたシニア世代は、そのような懸念が少ないのもメリットです。
注意すべきは、年齢に対する配慮も必要ということです。デジタル機器は使い慣れるまでサポートする、体力的な疲れが見えたらシフトを再考するなど、活躍してもらえるように環境を整えましょう。
超少子高齢社会を迎える日本では、ますます若手の採用が難しくなっていきます。今からいち早くミドル・シニア層の魅力に気づき、より優秀なスタッフを獲得できる企業こそが、高い競争力を保ち競合に打ち勝つことができるのではないでしょうか。
とはいえ、いきなりすべての求人をミドル~シニア世代に絞るのは不安もあるかもしれません。まずは、選考対象の年齢幅を広げるところから始めてみましょう。実際にミドル~シニア世代の活躍を現場で目の当たりにすれば、そのメリットを強く感じられはずです。
【関連記事】
■ シニア世代の労働力で人手不足を解消しよう!採用のメリットと受け入れ体制の整え方■ 飲食店の中途採用スタッフ、教育の極意。新卒スタッフ教育とは違うポイントと注意点