この記事は、こんな人におすすめです。
- ・初めて外国人の応募があり、対応に困っている
- ・人手不足解消のため、外国人採用を本格的に検討し始めた
- ・在留資格や雇用手続き、採用のメリット・デメリットを正しく理解したい
- ・採用後に「こんなはずじゃなかった」と後悔したくない
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人手不足の切り札? 飲食店で外国人を雇用する現状
厚生労働省の「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によれば、2024年10月末時点での宿泊業、飲食サービス業における外国人労働者は27万3333人に達し、4万8922カ所の事業所が雇用しています。
データからは外国人がすでに現場で重要な戦力となっていることがわかります。
【重要】雇い方が違う!「アルバイト」と「正社員(特定技能)」
「とりあえず」雇うのではなく、まずは「どのような人」を「どのような雇用形態で」雇うかを事前に明確化しなくてはいけません。なぜなら、外国人労働者は、「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」で定められている在留資格の種類によって認可されている働き方が異なるためです。
例えば、留学生、永住者、「特定技能資格」保持者で働ける時間や業務内容などに差が出ます。パート・アルバイトかフルタイムの正社員として雇用できるかどうかもそれぞれ異なります。
さっそく、在留資格の違いから見ていきましょう。
●アルバイトなら「留学」「家族滞在」(週28時間制限)
「留学」とその家族(配偶者と子供)である「家族滞在」の在留資格の場合、原則として就労が認められていません。そのため雇用する場合は、地方入国管理局で資格外活動の認可を受けることが必須です。また、就労が許可されても週に28時間までしか働くことができません。フルタイム勤務ではなく、パート・アルバイトとして雇用するのであれば可能でしょう。
ただし、事前に「旅券の資格外活動許可証印」または「資格外活動許可書」などにより就労の可否及び就労可能な時間数をよく確認する必要があります。
どちらも雇うための条件はそこまで厳しくはありませんが、在留目的はあくまでも学業や留学生の家族として扶養を受けるためのもの。規定の労働時間を超えないように注意してください。
●即戦力のフルタイムなら「特定技能1号(外食)」
パート・アルバイトではなく、フルタイムの正社員には「特定技能ビザ」が必要。飲食店で働くためには「特定技能1号(外食業全般)」を持っていなければなりません。この資格により従事可能となる業務は、飲食物調理、接客、店舗管理と幅広く、ホールとキッチン両方を任せることができます。また、原材料の調達や配達などの関連業務を行うことも支障がないとされています。
同資格は、「外食業特定技能1号技能測定試験(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)」と「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力検定試験」N4以上の合格、もしくは外食業分野の技能実習2号の良好な修了という条件を満たさなければ取得できません。
色々な業務を任せることができるうえ、スキルや言語に関する不安が少ないため、即戦力として期待できるでしょう。
「特定技能1号(外食業全般)」保持者を雇う際には、事業者側が外国人労働者に対し、問題なく業務に従事したり日常生活を送ったりできるように支援するための「1号特定技能外国人支援計画」を作成するように義務付けられています。登録支援機関に委託することも可能ですが、その場合は事業者が委託費用を負担するため、日本人を採用する場合と比べて受け入れ時のコストがかかることも理解しておきましょう。
●日本人と同じように働ける「永住者」「定住者」
「永住者」や「定住者」は「就労活動に制限がない在留資格」を持つため、パート・アルバイトや正社員と幅広い雇用形態で雇って問題がありません。制限を気にせず長期間で働いてほしい場合やフルタイムでの勤務などが期待できるでしょう。ただ、「短期滞在」の在留資格の場合、地方入国管理局において在留資格の変更の許可を受けないと就労することができないため注意が必要です。
※ただしどの在留資格であっても風俗営業法に規定されている店での業務は禁止
雇う前に必ず確認! 在留資格「3つの落とし穴」
在留資格の確認を怠ったり確認すべき所を誤ったりすると、意図せずとも入管法第73条違反となり「不法就労助長罪」を問われ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金など処罰対象になる可能性があります。
「知らなかった」を防ぐための、注意すべき3つのポイントと在留カードの見方について解説します。
●1. 表面だけで判断…「就労制限」の見落とし
在留カード表面の「氏名」や「顔写真」による本人確認、「在留資格」と「在留期間(満了日)」は重要な確認事項です。在留資格と従事できる業務、在留できる期間などは出入国管理庁の「在留資格一覧表」( 在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁 )に記載されているので、こちらと合わせて確認してください。「就労制限の有無」で就労できるかどうかも表面に記載されています。裏面には「資格外活動許可欄」が記載されています。留学生の場合など就労不可とされている人は「資格外活動許可欄」で許可されているかが重要となりますので、忘れずに裏面も確認しましょう。
●2. うっかり雇い続ける…「在留期間」の失効
1で確認した「在留期間」には注意点があります。採用時には在留期間内になっていても、働いているうちに有効期間切れになってしまう場合があります。在留期間失効後も雇い続けていれば、故意でなくても違法行為とみなされる恐れがあります。雇用中は有効期間が更新されているかどうかを管理しなければなりません。また、在留期間の満了日までに、在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請をした場合には、在留カードの裏面に「在留資格許可申請中」と記載されます。申請申し出が拒否されない限り、表面の在留期間の満了日から2カ月を経過する日まで有効です。
なお、オンラインで申請すると、カード裏面に「申請中」の印が入りません。「申請受付番号等が記載された受付完了メール」が申請中の証明になります。
●3. 在留カードのココを見る! 確認義務と偽造の見破り方
雇用主は外国人を面接する際、在留カード原本の確認をする義務があります。ただ、それが偽造カードである場合もあり得ます。本物かどうかを見分けるには、出入国在留管理庁の「 在留カード等失効情報番号照会 」のページを活用しましょう。券面に記載された在留カード番号や有効期限を入力し、カード番号の有効性を確認できます。
また、在留カードには偽変造防止として透かし文字などの対策が施されているため、目視での確認もしましょう。
これらの詳細は、法務省の「 『在留カード』及び『特別永住者証明書』の見方 」で確認できます。「 在留カード等読取アプリ 」も公開されているので、ぜひこちらも参考にしてください。
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飲食店で外国人を採用するメリットとデメリット
メリットは、人手不足解消の解決策になるのはもちろん、若い労働力の確保や、異なる文化が促進する職場の活性化などでしょう。デメリットは、文化や言語の壁がある、日本人を採用するよりコストや手続きの手間がかかってしまうという点です。
良い部分も悪い部分も両方の面を理解してから採用に踏み切ることが大切です。
●メリット:人手不足の解消と職場の活性化
外国人採用を行う第一のメリットは、何と言っても人材不足の解消です。日本人労働者の獲得競争は激しくなっているため、外国人雇用を行うことで、不足分をカバーすることができます。
また、若い留学生や異国でも働くことに意欲的な人、「特定技能資格」保持者のようにスキルを身につけた在留外国人が数多くいます。
雇用することで、「若い労働力が欲しい」「仕事に意欲的な人や即戦力に来てもらいたい」という悩みを解決できる可能性があります。
異文化や言語がメリットになる点にも注目です。外国人労働者の母国語により多言語対応ができるようになれば、訪日外国人客向けのサービスの質向上が期待できます。
さらに、異なる文化や習慣を持つ外国人が働くことで新しい価値観が入り、職場活性化につながります。日本人だけでは思いつかないようなアイデアやサービスが生まれたり、業務が効率化できるかもしれません。
●デメリット:文化・言語の壁と手続きの負担
異なる文化や言語がコミュニケーションの壁となってしまうと、デメリットの原因になり得ます。外国人労働者の日本語レベルには差があり、言語での円滑なやり取りが難しい場合、業務に支障をきたしてしまいます。また、文化や習慣による価値観の違いが、日本人スタッフやお客様とのトラブルの元となってしまうことも。
例えば、日常的に遅刻をする、無断欠勤をする人もいるでしょう。また、宗教上食べられないものがあるなど食文化の違いも想定されます。異文化によるデメリットに関しては、次章で対策を解説します。
失敗しない外国人採用 3つのステップ
そのためには具体的にどのような採用手続きをどのタイミングで行うのか、採用プロセスの流れを把握しましょう。
ここでは、
・面接
・契約
・届出
の3つのステップをご紹介します。
●ステップ1:募集と面接(在留カードの確認)
募集は、採用サイト、ハローワークなどの公的機関のほかに、自社のウェブサイトやSNS、留学生に向けて学校に求人を出すなどの方法があります。面接をする際には、履歴書のほかに在留カードを忘れずに持参してもらいます。コピーや写真などの画像ではなく、必ず原本で確認しましょう。在留期間内であることと有効期間、就労可否など、前章で解説した在留カードの確認ポイントを重点的にチェックしてください。
●ステップ2:雇用契約書の作成
採用が決まったら、雇用契約書(労働条件通知書)を作成し、労働条件となる賃金や勤務時間、業務内容などの必要事項を明記します。この時、可能であれば労働者の母国語で併記したほうが後のトラブルを防ぐことができます。厚生労働省が「 外国人労働者向けモデル労働条件通知書 」を公開しているので、参考にしてください。
●ステップ3:ハローワークへの届け出義務
外国人を雇用した場合は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」に基づき、ハローワークに労働者の氏名や在留カードの情報などを記載した「外国人雇用状況の届出」の義務が生じます。様式は厚生労働省の「 『外国人雇用状況の届出』について 」のページからダウンロードでき、電子申請も可能です。
なお、離職する際にも同様の届出が必要になります。
「外国人」とひとくくりにしない 優秀な人材を見極め定着させる!
「外国籍の人」という枠で見るのではなく、個人として向き合い、本人にどのくらいポテンシャルがあるのかを見極め、お互いが違いを受け入れていくことが定着率を上げるコツです。結果、人材不足の根本的な解消につながります。
●面接で確認したい「日本語レベル」と「働く意欲」
言語が通じないと業務に支障をきたすため、面接時にどの程度理解可能なのかを確認しておきましょう。日本語検定などのような資格保持よりもポジションに応じた実務レベルの日本語力を重視してください。例えば、キッチンで調理補助を担当する場合は指示が理解できるレベルであれば業務は遂行できますが、ホールで接客を担当する場合、基本的な接客用語や敬語を使える、お客様の要望を聞いて適切に対応できるなど、より高度な言語力が必要とされます。
また、日本人労働者同様に働く意欲がなければすぐ辞めてしまう可能性があります。面接時に確認し、本人のやる気を見極めることが必要です。
●文化や習慣の違いを「問題」ではなく「個性」として受け入れる
外国人雇用では、異なる文化や習慣を持つ労働者同士が働くことになるため、お互い戸惑うことも多いと思います。仕事への姿勢や時間の感覚など、意識の違いからトラブルを起こしてしまう可能性があります。その場合は日本の文化や習慣を理解してもらい、店でのルールを明確にし、それを守ってもらった上で相手の文化・習慣を尊重するマネジメントを行います。
宗教によっての違いも大きく、ラマダン期間中の勤務やハラール対応などの配慮も考えなければなりません。
意識の違いから従業員間で孤立してしまうと、職場環境の悪化や離職にもつながります。日本人スタッフへの周知や理解を促し、文化の違いや習慣の違いを一個人の個性として受け入れることで、相互理解できるような環境づくりを心がけましょう。
●分かりやすい「やさしい日本語」と教育体制
外国人向けの教育体制の整備も必要です。難しい専門用語をなるべく排除し、分かりやすくやさしい日本語を使用したマニュアルの作成を行うことをおすすめします。日本特有の「適当に」「いい感じ」などの曖昧な表現は伝わらないため避けてください。言葉ではなく、写真や動画など視覚的に理解できるものだとなお良いでしょう。さらに、現場では周りのスタッフの協力も求め、店全体でフォロー・育成できる体制を整えるようにしてください。
まとめ:不安を解消して、お店の力になる仲間を迎えよう
頼りになる仲間を迎えて、一緒にお店を盛り上げていきましょう。
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