月別売上のアンケート調査から飲食店の繁忙期・閑散期が明らかに。閑散期の対策は?

2018年7月26日

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飲食店を経営していると、猫の手も借りたいほど忙しい時期もあれば、時には閑古鳥が鳴く時期も訪れる。「ニッパチ」という言葉がある通り、一般的に2月・8月は暇な時期だとされているが、実際のところはどうなのだろう。今回の「飲食店リサーチ」では、「月別の売上状況」に関するアンケート調査を実施。一年間の売上の波とともに、閑散期の対策を聞いた。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:284名
調査期間:2018年5月21日~2018年5月27日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「飲食店の月別売上状況」に関するアンケート調査

■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち63.7%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は58.5%(首都圏の飲食店の割合は74.7%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

売上が高いのは「12月」「3月」「4月」。定番の宴会期と重なる時期


はじめに「それぞれの月の売上について、月平均売上よりも高いか低いか」を聞いたところ、「12月」(81.7%)、「3月」(59.9%)、「4月」(47.5%)が「月平均より高い」という回答が得られた。12月は忘年会、3月、4月は歓送迎会が多い時期であり、一般的な宴会シーズンが繁忙期と重なっていることがわかる。

最近は宴会の需要も多様化しており、女子会やママ会、昼間の宴会などさまざまな切り口が求められるようになってきた。12月や春の宴会シーズンはもちろんだが、こうした宴会需要に応えられるようにしておくと集客もしやすいだろう。


売上が低いのは「2月」「1月」「8月」。「ニッパチ」は本当だった!?


一方で「月平均より低い売上」という回答が多かったのは、「2月」(61.6%)、「1月」(50.0%)、「8月」(38.7%)という結果になった。2月と8月は売り上げが他の月と比べて落ちることを意味する「ニッパチ」という言葉があるほど。当てはまる業界と当てはまらない業界があるといわれるが、アンケート調査結果は飲食業界も例外ではないことを示した。

しかし8月の売上については28.2%の飲食店が「月平均より高い」と回答しており、8月に売上を伸ばしている飲食店も一定数あることがわかった。これは、エスニック料理や焼肉、ビールなど夏に好まれるメニューを主力とする飲食店、もしくはお盆休みに集客が見込める行楽地の飲食店の回答が影響していると推測できる。

ちなみに「一年の中で最も売上が低い月」について質問したところ、やはり「2月」が31.0%と最も多く、「1月」(25.0%)、「8月」(13.4%)という結果になった。


6割以上の飲食店が、「12月の売上が最も高い」と回答


次に、「1年の中で最も売上が高い月」について聞いたところ、最も回答が多かったのは「12月」(65.5%)だった。次いで、「8月」(7.0%)、「3月」(6.7%)、「4月」(4.2%)と続いた。低い月は「10月」(1.1%)、「11月」(1.1%)、「2月」(0.7%)という回答が得られた。1位の「12月」(65.5%)と2位の「8月」(7.0%)では、パーセンテージに大きく差が出ており、12月売上の高さが際立っていることがわかる。

売上が低い月の施策はさまざま。売上対策以外の取り組みも


売上が低い月への対策を自由形式で聞いたところ、各店舗がさまざまな観点から対策を練り、工夫を凝らしていることがわかった。まず、閑散期に行っている集客対策としては、以下のような意見が挙げられた。

「ぐるなび、食べログ等のレストラン紹介サイトの露出を増やす。売上が低い月の2ヶ月位前からクーポン配布」 (東京都/洋食)

「SNSなどを活用して情報発信。お値打ちなコースの打ち出し。会社様への営業」 (愛知県/和食)

「イベントを行うなどして売上を支えている。割安感のあるイベントや体験型のイベントだとある程度集客できるので売上を支えられる」(東京都/フランス料理)

「暑中お見舞いのハガキと一緒に、8月のキャンペーン内容を記載して顧客様に郵送」 (大阪府/バー)

「期間時間限定でビールの低価格販売、ワインとおつまみセットの前売りチケットを販売」(大阪府/イタリア)

また、閑散期には繁忙期ほどの従業員を必要としない場合も多く、シフトの調整を気にかけている店舗も多かった。

「経費の節約。まずは人件費。身内で店を回し、従業員さんは休み、または遅く出勤してもらい早く帰ってもらう。幸い、喜んでもらえるので助かっている」(東京都/ラーメン)

「アルバイトのシフト調整をすることで人件費を下げる」(千葉県/専門料理)

「従業員は全てアルバイトなので、当人と相談してスタッフに負担がかからない程度に人件費を削減」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

一方で閑散期を利用して、繁忙期に向けた準備を行っている店舗の意見も寄せられている。

「繁忙期に向けた商品開発や販促計画を立てる。売上の低い月の売上を上げるのではなく、良い月にきっちり売上と利益を作る」(東京都/アジア料理)

「閑散期はある意味、時間にゆとりのできる貴重な機会。グランドメニューを見直して刷新したり、店を閉めて大清掃を実施したり、汚れた店頭看板を新しいデザインに交換したり、全スタッフに交代でリフレッシュ連休を与えたりと繁忙期にはできない取り組みをする。それらの行動が結果的に販促として作用し、集客に繋がることも多い」(大阪府/居酒屋・ダイニングバー)

「売上が低い月は季節的要因が大きいので、通常できないメンテナンスやスタッフに対する勉強会などに時間を割くようにしている」(奈良県/その他)

「毎年のこと」で片づけないために。自店に必要な施策は?


自由回答からは閑散期を“捨て月”にしないよう、それぞれ目的を持ち取り組んでいる店舗が多いことがわかった。売上への対策を講じる店舗は、新規客へのアプローチより、既存客を離さない工夫をしているようだ。ただ、既存客の母数がなければ、閑散期の来店は見込めない。普段の積み重ねがあってこそできることだろう。

また、店舗のメンテナンスや改善、スタッフへの労いなど、繁忙期にはできないことに時間を有効活用するという回答も目立った。経営には短期の取り組みと長期の取り組みが欠かせない。「時間に余裕がある期間」と捉え、有効に活用することも一つの手だろう。

どんな視点で施策を打つにせよ、自店の売上がなぜ下がったのか理由を考えることは重要だ。「閑散期は毎年のことだから」などとやり過ごしているのであれば、好調な月にもマイナスの影響を及ぼしかねない。

例えば8月が閑散期であるなら、店休があり稼働日数が少ない、立地がオフィス街なのでお盆には人が少ない、店に寒い時期の料理のイメージが強くあるなどが考えられるだろう。売上の下がる理由に目を向けてはじめて、集客すべきか、店づくりのために時間を使うべきかなど必要な施策が見えてくるはずだ。閑散期を有効に活用できれば、売上アップや店の改善にも繋がるのではないだろうか。

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