飲食店の解雇や退職理由、64.5%がコロナ関連。 コロナ禍の雇用状況・人材管理を調査

2021年4月14日

画像素材:PIXTA
2度目となる緊急事態宣言が解除されたものの、感染者数は全国的に増加傾向にあり、依然として多くの飲食店が厳しい状況にある。閉店や休業を決意する飲食店も少なくなく、雇用や人材管理にも影響が出てきている。

そこで「飲食店リサーチ」では、飲食店経営者や運営者に対し、コロナ禍における飲食店の雇用状況や人材管理についてアンケートを実施。今回は、その結果をお届けする。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:503名
調査期間:2021年3月23日~2021年3月25日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:コロナ禍の雇用状況・人材管理に関するアンケート

■回答者について
回答者のうち67%が1店舗のみを運営。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は55.1%(首都圏の飲食店の割合は71.6%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測される。

飲食店における従業員の退職・解雇理由、コロナ影響が6割超え


まず、2021年2月の売上について、コロナ禍以前の2019年2月と比べてもらった。すると、最も多かったのが「2019年2月より70%以上減った(26%)」という回答。次に、「50%減った(14.5%)」、「30%減った(13.9%)」という回答が続く。

1月に同様の調査をし、2020年1月の売上と比較してもらった際には、「前年同月より50%以上減った(55%)」という回答が最多となり、これに「40%減った(13.6%)」、「30%減った(12.9%)」という回答が続いた。なお、2021年2月の売上で「2019年2月より50%以上減った」と回答した人は合わせて51%となっており、1月からの経営状況はほぼ横ばいの状態で推移していることがわかった。

続いて、2020年10月以降、従業員(正社員・アルバイト)の雇用状況に変化があったか聞いたところ、半数以上が「正社員もアルバイトも変わらない(52.5%)」と回答。一方、雇用の変化が生じている店舗では、「正社員は変わらないが、アルバイトは減った(25.8%)」、「正社員もアルバイトも減った(18.5%)」という回答が目立っており、正社員よりもアルバイトの方が減っている現状が明らかとなった。
さらに、先ほどの質問で「従業員が減った」と回答した人に対し、従業員の雇用が減った理由について尋ねたところ、「従業員の都合(コロナの影響)による退職者が出たため」が33.5%と最も多かった。「店舗側の都合(コロナの影響)により解雇したため(31%)」と合わせると、従業員雇用が減少した理由の64.5%がコロナの影響であることが判明した。

従業員の希望に沿いたい思いはあれど、シフト調整や給与の捻出に苦悩


現在募集中の雇用形態、またこれから採用したい雇用形態について聞いたところ、「正社員・アルバイトどちらも不要」が40.6%で最多となり、次いで「アルバイトのみ採用したい(31%)」、「正社員・アルバイトどちらも採用したい(22.9%)」が続く結果となった。募集中または採用検討中の店舗では、正社員よりもアルバイトを求める声が大きいようだ。

また、コロナ禍でとくに重視する採用基準について、自由回答形式で回答してもらったところ、「飲食業に関わったことのある人」、「調理経験者」など、即戦力を求める声が多くみられた。そのほかにも様々な回答が得られたため、一部を抜粋して紹介する。

■幅広いポジションを任せられる

・オールマイティな人材(千葉県/アジア料理/2店舗)

・シフトをタイトにせざるを得ないため、キッチン、ホール、両方できる人材が貴重である(福岡県/和食/1店舗)

■SNSやPCのスキルがある

・SNSなどに詳しく、マネージメント全般できる人(埼玉県/和食/1店舗)

・PCをさわれる方を重要視して採用予定(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

■シフトの融通が利く

・勤務時間の融通性(埼玉県/カフェ/1店舗)

・シフトにフレキシブルに対応いただける方(東京都/ラーメン/1店舗)

■一般的な衛生管理の知識があり、丁寧な接客ができる

・飲食店経験者で、衛生面の対応がきちんと理解できている人材(京都府/お弁当・惣菜・デリ/1店舗)

・マスクをして接客するため、より笑顔がお客様に伝わる方、また声のトーンを気にできる方など、より接客重視になりました(大阪府/イタリア料理/1店舗)

しかしながら、時短営業や外食自粛による客数の減少、営業スタイルの変化などにより、コロナ禍の飲食店ではこれまで以上に従業員のモチベーション維持が課題となっている。そこで、従業員のモチベーションを保つために、各店舗が実際に工夫・実施していることについて自由回答形式で答えてもらったところ、様々な努力の様子が見えてきた。

■個別のコミュニケーションを大切にする

・個々人との会話で、モチベーションを保つようにしています(東京都/居酒屋・ダイニングバー/6~10店舗)

・一人一人の従業員と定期的にコミュニケーションをしていることです。直接会えない時もありますのでチャット等を活用しています(東京都/バー/1店舗)

■成果に合わせた評価を行う

・成果報酬導入(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)

・時給アップなど、評価すること(東京都/専門料理/1店舗)

■給与額・シフト量の維持に努める

・勤務時間をできるだけ減らさない(神奈川県/洋食/1店舗)

・給料を下げない、無理な勤務時間削減をしない(愛知県/カフェ/1店舗)

■研修実施や資格取得のサポートを行う

・客足が減ったこの時期を逆に利用し、従業員希望の資格習得をサポート。習得するためにかかる費用や参加費の支払い(福岡県/洋食/1店舗)

・休業を利用し、サービス研修や生産者見学。コロナ後のワンランク上のサービスに向けて、モチベーションUPと共に実施(埼玉県/和食/3~5店舗)

■その他

・各々の希望するメニュー開発を採用し、商品化する(京都府/カフェ/3~5店舗)

・こちらが腐っては今を乗り越えられないので、誰よりも元気に楽しく仕事をする(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

・以前よりお客様が減っているので、手が空かないよう、常に仕事や刺激を与えるよう努力しています(大阪府/イタリア料理/1店舗)

・毎月、個々の目標設定を確認、アドバイスを与え自己啓発を促す(東京都/和食/3~5店舗)

最後に、コロナ禍における雇用や従業員に関する悩みについて尋ねたところ、最多となったのは「従業員の希望に沿ったシフトを組めない(40.8%)」という回答。これに、「従業員の希望額を満たす給与を出せない(32.8%)」という回答が続いており、人件費の捻出には多くの飲食店が苦悩していることがわかった。その反面、「人材が不足している(23.3%)」という声も一定数あり、コロナ禍での雇用維持と人材確保の難しさも明らかとなった。
長引くコロナの影響は、従業員の雇用やシフト(給与)、モチベーションにも大きな変化をもたらした。今後も飲食店の厳しい状況は続くとみられるが、本調査に寄せられた声などを参考にしながら、この苦難を乗り越えていってほしい。

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