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「失敗者に学ぶ。自己判断の大切さとバランス感覚。」 (第11回)

経験者だから分かること


今回は、一度は飲食店オーナーとなり、わけあって店をたたんだ経験をもつ2人の実体験を元に、物件探しの落とし穴を紹介したい。

彼らは、飲食店の調理担当として10年以上の経験を積んだ40代の男性と、専門学校を卒業してすぐビジネススクールに通い、いきなりオーナーとなった20代の女性。
年齢やこれまでの経験は違うが、共通している点が2つ。
ひとつは、飲食店オーナーとして、苦い経験をもっていること。
もうひとつは、その経験をもとに、もう一度飲食店オーナーとなる夢を持っていることだ。

彼らは、店舗物件探しについて大きな注意点を話す。
それは、「不動産業者の言葉に左右されない」ということ。
決して不動産業者を嫌っているわけではないが、経営者として自信を持って自己判断することが必要だという。


自分で判断しなかった


「飲食店を始めるまでには、資金を貯めたり料理の経験を積んだりと、長い道のりがあるのに、経営に関することを学ぶ機会は意外に少ないもの。そのために、今から考えると、とても基本的な部分で失敗してしまうんです」

そう語るのは、中野区で焼き鳥店を開業し、1年で閉店してしまった片岡勝一さん。

「自分で店を持つなら賃料が高い駅前より、安い住宅地といろいろな人に言われ、不動産屋に勧められた格安物件に飛びつきました。坪単価で考えれば駅前の約半分。『路面店だし、固定客がつけば長く商売ができますよ』といわれました」

ところが、夜になるとシーンと静まり返る住宅地では、肝心の夜の客足が伸びなかった。
駅から住宅街に入る前にいくつかの居酒屋があり、多くの人はそこでしっかり飲んで帰宅する。
自宅近くで再び店に寄る人はいなかった。

片岡さんが一番反省しているのは、「不動産業者が言ったことを鵜呑みにし、自分で何の判断もしなかった」こと。

「プロが言うんだから間違っているはずがないと決めつけてしまい、そのまま流されてしまいました。他にやるべきことも多く、少しでも作業が減るならありがたいとさえ思ってしまい、誰に決定権があるのかすら分からなくなっていたように思います」

結局、開業1年を待たずに撤退という決断をする。
資金的に泥沼になる前に自分で閉店を決断した。
現在は、再び開業する日を目指して、経営の勉強をしている。


見失った判断基準


苦い経験をした例をもう一つ紹介したい。
江口幸枝さんは、栄養士を目指して専門学校に通っていたが、自分で作った料理を人に食べさせることに喜びを感じるようになり、卒業後、カフェ開業のビジネススクールに通った。
スクールでは、卒業と同時に開業が可能なように、自分の店舗計画を具体化していくようカリキュラムが組まれていた。
自分の作りたいカフェのイメージが固まったところで、実際に不動産業者を訪ね、物件探しもスタートした。

「いくつかの業者に行き、そのうち一人の担当者さんが、スクールの講師と同じことを言ったんです。それで『この人に物件を探してもらおう』と決めました」

物件探しは、スクールと同時進行だったため、急いでいたわけではなかった。
いくつかの物件を見て周り、イメージに近い物件を見つけたのは、カリキュラムの途中だった。

「何度も不動産屋に行くうちに、スクールの講師よりその担当者の方が親身になってくれているような気がして、いろいろな相談をもっていくようになりました。夢のような話で盛り上がり、『そうなったら次は渋谷のど真ん中に店をだすから、そのときもよろしく』などと冗談みたいに本気で話したり。いつのまにか、不動産屋ではなく、コンサルタントのような存在に思ってしまっていました」

スクールの講師には、何度も「その物件でいいのか。もっと他も見た方がいいんじゃないか」と言われたが、自信をもって「ここが私の夢を叶える場所です」と答え、21歳でオーナーとなった。

ところがカフェをオープンしても、売上は伸びなかった。
地域に愛される店作りを目指したが、路地裏で視認性が悪く、なかなか認知が上がらなかった。

「いつか何とかなるとがんばっていたのですが、だんだんと家賃が遅れるようになり、その不動産担当者から『大家さんが怒っているから早く振り込むように』と催促の連絡があり、現実を知りました」
その後、江口さんは、カフェを知り合いに譲渡した。


判断には時間をかけて


2つのケースは、つらい結末に至ったが、決して不動産業者が悪いわけではない。
彼らが伝えたのは、あくまでも彼らの見解であり、地域の一般的な見方だったに違いない。
ただ、一つひとつの店には、それぞれの個性があり、それが地域に合致しないためにうまくいかなかっただけだろう。
業者が親身になってくれるのは、彼らの誠意のあらわれであり、ありがたいことだ。
でも、それに流され、経営者としての判断をしなくなっては意味がない。

物件探しは、経営者として、最初に判断しなくてはならない大きな事例だ。
自分で情報を収集、整理し、冷静に判断する経験を持たなかった新米オーナーは、正しい判断ができないことも少なくない。
でもそれは、開業後、長く苦労することにつながる。

慣れない判断をしなければならないからこそ、時間をかけてゆっくりと、自分なりの答えを出してもらいたい。


■コラム
父親のような不動産業者

飲食店に個性があるように、不動産屋にも個性がある。

ある青年がラーメン店を開業するためにアルバイトとして資金を貯め、物件を探しはじめた。
その金額は100万円。
彼にとっては苦心の末貯めた大金だったが、事業資金にしては少なすぎた。
物件は出てくるものの、若く、社員としての経験がない彼は、しっかりした保証人がなければ国金からお金を借りることができなかった。
実家も自営業だったため、実親も条件を満たすことができない。
夢の実現を前に、現実の壁が大きく、自力では超えられないことを知った青年は、途方に暮れていた。そんな時、彼の誠実さを認め、自ら保証人を名乗りでた人がいた。
それは不動産屋の社長。
彼のまじめな性格と惜しみなく努力をする姿勢を信用し、毎月経過報告をしにくること。
1年経って経営が安定しなければ、店を居ぬきで手渡すことなどを条件に、保証人になったのだ。

彼のラーメン店は今年6月にオープンした。
彼と不動産屋社長の勝負の1年が始まった。

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