アピールができない!? 黒板NG物件の苦悶 (第58回)

【看板設置の制約あり物件】


 売上アップを狙い、看板を作り替える店舗は多い。これは、外へのアピールがいかに大切かということの表れだ。どんなアピールをして、どうやって魅力を伝えるかは、売上げを左右する重要なポイント。
 ところが、看板を出すのに大きな制約を設けている物件も多い。看板を付け替えてアピールするにも、そもそも看板を出すことすら許されていなければ対策のしようがない。今回は、看板が出せず、苦労を強いられた例を紹介したい。




【設置済みの看板を再活用】


 サラリーマン経験のあるAさんは、オフィス街での居酒屋の開業を考えていた。サラリーマンのニーズは熟知しており、それを店舗運営に活かせると思ったからだ。そこで、都内いくつかの駅に的を絞り物件を探すことに。いずれも典型的なオフィス街。当然駅前は飲食店がひしめき、賃料も高いため、道を一本入った、路地裏物件を中心に探した。
 候補の一つだった日本橋兜町に、条件を満たす物件が見つかった。1階に牛丼チェーンが入る物件の2階。3階以上はオフィスという物件だった。
 契約日、大家に「看板は付けてもいいが、共用の入口のため、前店の看板があるところだけにして欲しい」と言われた。それはビル入口の壁面にあり、腰から頭上まで、高さは約1m、幅約50?が2面のものだった。店舗の看板にしては小さいが、すでに内照式の看板がついていて、新たな設置も不要。専門業者にシートを発注すればそのまま使え、むしろ喜ばしいほどだった。
 店舗は黒を基調に、シックに仕上げ、看板も黒が基本。そこに赤と白でロゴを入れた。デザイン画を確認した時はイ
メージ通りだったが、実際に取り付けてみると暗い。透過しないタイプの黒シー
トを使ったため、せっかくの内照効果も薄く、急きょ再発注。透過タイプの赤いシートで作り直し、存在感をアピールした。




【設置した黒板の撤去命令】

 オープン後、Aさんがビルの外に立っていると、気になる会話が聞こえてきた。
 「この看板の店って、このビル内にあるの?」「そうだと思うけど、何階だろう?」
 看板にあるのはロゴと店名のみ。確かに、店の場所は分からない。そこで店が2階にあることを知らせる黒板を用意し、店頭に置くことにした。
 さらに「興味あるけど、高そうで入りにくいよね」という会話を耳にする。そこで今度は、メニューを書いた黒板を用意し立てることにした。
 気づけばビルの入口には、3枚の黒板を設置するようになっていた。このままでは無機質だと、小さな鉢植えやスポットライトも置き、ちょっとした演出を施した。
 ところがそこは、店の専用入口ではない。3階以上の事務所との共用スペースだ。ある日、大家から連絡が入る。
 「上階のテナントからクレームがきているから、黒板をなくしてくれ」
 必死に黒板の必要性を説いたが「最初に、看板は1つと約束したはず」と言われると、返す言葉がない。結局、泣く泣く黒板は撤去。何とか内照式看板の下に、印刷物を貼ることだけは許可をもらったが、それを照らすライトの設置はNGとなってしまった。
 Aさんはその後、新たな商品や企画を立てる度に「もっと店頭でアピールできれば」と、後悔ばかりしている。
 看板に限らず、店舗の存在をアピールすることは、売上げ確保に欠かせない。これは、店舗経営の基本中の基本と言ってもいい。
 チェーン店とは違い、興味があってもなかなか入りにくいのが個人店。だからこそ固定看板の設置だけでなく、黒板やその他のアピールができるかどうかを
チェックしておくことも、大切なポイントだと言えるだろう。




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