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人的資本経営とは?
これまでの日本型の組織では、それぞれの従業員のマイナス面を補うような人材育成の方法がとられてきました。凸凹があって当たり前な人間の性質の凹みを埋め、できるだけ多くの人材を“組織が求める平均値”に到達させることを目指してきたのです。ところが、時代の流れとともに、産業構造の急激な変化、個人のキャリア観の変化など、労働者を取り巻く環境は一変しました。こうした背景から多様性が重んじられるようになり、個人のマイナス面よりも、得意や強みにフォーカスをする傾向が社会全体で強まってきました。
そんな中で台頭した経営・組織づくりの考え方が「人的資本経営」です。経済産業省の定義するところによると、人的資本経営とは「人材を“資本”として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営」のこと。一人ひとりの従業員の個性を大切にし、強みを伸ばすような育成を行うことで、企業価値をより高める経営の方法と言い換えることができるでしょう。
飲食業で人的資本経営を採用するメリット
飲食業界は人の流入や流出が多く、特に人が定着しにくい業界です。そのため、それぞれの従業員の弱点を補強して全体のスキルを平均化する人材育成方法は、効率が良いとは言えません。人は弱点を克服するよりも、強みを伸ばす方が即戦力となるためです。また、弱点にフォーカスする人材育成方法は従業員のやる気や自尊心を損ないやすいため、より人材が定着しにくくなります。従業員みんなが自身の強みを活かして働ける人的資本経営を採用した方が、従業員のモチベーションも上がって「ここで働き続けたい」「お店に貢献したい」という気持ちは強くなるでしょう。さらに、それぞれの人材がバラバラに弱点を補強するよりも、強みのある従業員同士で仲間の弱点を補い合う方が、効率よく成果を上げられる可能性もあります。
従業員の強みを把握する方法
人的資本経営は飲食業界に合った経営のあり方ですが、実際の現場では「従業員の強みが見えにくい」ということもあるでしょう。そんなときにぜひ活用したいのが「スキルマップ」というツールです。スキルマップとは、従業員のスキルや業務遂行能力を把握するために作成する一覧表のこと。自店の人材にどのようなスキルがあるかを把握することで、彼らの強みをより適切に活かせるようになります。
スキルマップをどのように作成すればいいかわからない場合は、厚生労働省のウェブサイトにあるテンプレートを活用してみましょう。ただし、厚生労働省のテンプレートでの評価項目は「わが国の『職業能力評価制度』の中心をなす公的な職業能力の評価基準」とのこと。どの組織にも当てはまるとは限らないため、項目は自店にあったものにカスタマイズして構いません。
強みとは、調理スキルなどの目に見えやすいものだけでなく、コミュニケーション力やお客様の心を掴む接客態度、仕事を効率よくこなす段取り力など、可視化されにくいものも含みます。ぜひ、自店オリジナルのスキルマップを作成してそれぞれの従業員の強みを見出し、人的資本経営に活かしましょう。
従業員は日々仕事をする中で、スキルを高めたり、他の従業員と協力関係を築いていったりします。そのため、経営者や人事担当者は、従業員の変化にアンテナを張っていくことも大切です。アップデートしていくスキルや業務遂行能力を把握するとともに、資質や能力に一早く気付くことができ、最大限に強みを引き出していけるはずです。
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