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中途採用者に教育が必要な理由
すでに飲食業を経験している中途採用者は、ある程度のスキルを備えていることが多いため、人事担当者にも「今さら教育する必要はないのでは?」と思われがちです。しかし、業態が前職と違う、業態が同じであっても業務のやり方が違うといった場合も少なくありません。理念や文化の違いに戸惑ったり、社内用語や独自ルールが理解できなかったりすることもあるようです。また、飲食業経験者だからこそ「即戦力としての働き」を期待されるプレッシャーを感じていたり、気軽に相談できる同期がいないために孤立したりしてしまうこともあります。そんな彼らがお店に定着し、戦力として活躍し続けられるようになるには、やはり企業・店舗側が受け入れ体制を整えるとともに、充実した教育を施す必要があるでしょう。
中途採用者に有効な教育とは?
中途採用者には、まずOJT(On-the-job Training)と呼ばれる研修を通して実務を学んでもらいましょう。OJTとは、教育担当者となる上司や先輩と一緒に、実際の業務を進めながら必要な知識やスキルを身に着けていく研修スタイルです。中途採用者の場合は入社後まもなく現場を任されることもありますが、新人であれば、独り立ちできるようになるまでじっくりとOJTを行う店も少なくないはず。中途採用者ができるだけ早く店の雰囲気になじみ、自信を持って業務に取り組めるように、たとえ経験者であっても、ある程度の期間はOJTを続けることをおすすめします。
また、中途採用者用の研修資料を作成し、座学研修を行うのもいい方法。とはいえ、業務内容を羅列したり、衛生管理や食中毒に関する知識をまとめたりするだけでは経験者である彼らには響かず、「読まなくてもだいたいわかる」と思われてしまう可能性があります。中途採用者向けの研修資料では、業務内容よりも企業・店舗の理念や風土、ルールを中心に取り上げましょう。
・自社理念
・社内用語
・企業文化や社内の暗黙の了解
・店舗の独自ルールや業務ルール
こうした「自社・自店独特の文化」というべきものは、どれだけ同じ業界で経験を積んだベテランであっても、教えてもらわなければ身に着けることができません。これらが備わっていない状態で仕事を進めると、周囲とのコミュニケーションがスムーズにいかず、本人も周囲もストレスを感じやすくなります。組織にできるだけ早くなじみ、強みを発揮してもらえるよう、特に力を入れて教育したいポイントです。
業務内容を紹介するときは、ただ羅列するのではなく、中途採用者が自身に求められている役割を理解できるような工夫を凝らしましょう。例えば自店の業務のうち、中途採用者が前職で培ったスキルを活かせるポイントを強調して伝えるなど、メリハリのある研修内容で業務を「自分ごと」化してもらうことが大切です。
また、評価方法、遅刻・休みの際の連絡方法、有給休暇の申請方法などのルールもぜひ研修資料に盛り込んでください。こうしたルールがきちんと明文化されていることで、中途採用者に「きちんとしたお店だな」と信頼感を持ってもらうことができます。自分からは聞きづらい内容でもあるため、事前に共有しておけば安心して働いてもらえるでしょう。
さらに、入社後しばらくの間、定期的に面談をすることも有効です。不安や負担に感じていることを共有できれば、より成果を出しやすい環境づくりができるはずです。
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