「不動産業者との間に信頼関係を築く」 (第3回)

相性のよい業者を選ぶ


 物件探しは不動産業者と二人三脚で進めるもの。それゆえに、パートナーとなる業者とのコミュニケーションをうまくとることが、条件にあう物件を早く探し出すための必須条件となる。今回は、業者に何を、どう伝えるのかを考えたい。
 ビジネス上のつき合いとはいえ、苦手な人や相性が合わない人は存在する。そういった人は極力避け、要望を伝えやすい業者や担当者とつき合っていくのは当然のことだ。苦手な相手でも我慢して頼ってしまう人が意外に多いが、これはあまりいい結果を生まない。不動産業者は、物件契約が仕事であり、その後の店舗経営に責任をもってくれるわけではないので、業者の言うなりになるのは避けるべき。そうならないためにも、自分が意見をいいやすい人を選ぶことが大切になってくるのだ。

イメージは具体的に伝える


 不動産業者に行き、条件を提示すると、それに近い物件を複数紹介してくれる。その中の何軒かは実際に足を運び、自分の目で確かめることになる。条件の中でも、金額面や広さなど、数字で示せるものは伝えやすいが、周辺環境や物件状態などイメージの部分は、口頭だけでは伝えにくい。なんとしても、このイメージを合致しなければ、物件を見つけ出すことは困難になってしまう。
 「もっと大きな窓がほしい」
 「天井の高さはもう少し高めがいい」
 「ファサードのイメージはぴったり」
 このように、物件を見に行った際には、できるだけ細かい部分まで伝えるようにすることで、より具体的にイメージを伝えることができる。さらに、そうであってほしい理由も伝えられれば、もっといい結果につながることもあるだろう。物件には、一見しただけでは分からない部分がある。特に居抜き物件は、すでに造作がされているため、その後ろ側(躯体など物件特性)は分からない。それは不動産に教えてもらう必要があるのだ。
 また、店舗物件を専門に扱う業者の場合、より具体的なイメージを伝えることで、候補物件の幅が広がる。初めての開業者の場合、坪数や平米の数値と営業スタイルにズレがあることも少なくない。席数や営業人数、必要な設備などを伝えれば、「効率を考えてもっと小さな物件の方がいい」とか、「厨房部分のスペースを広くしなければならないため、もう少し広い方が適している」などのアドバイスをもらうことができる。


積極性をアピールする


 物件を探す際、よくあるのが、「待っていれば物件がどんどん紹介されるだろう」という誤解だ。もちろん不動産業者に行けば、いくつもの物件を紹介してくれるし、その後もFAXで情報をもたらすことを約束してくれる。ところが、「気になるものが出てきたら連絡しよう」と、各々に対する返事をまったくしないでいると、いつの間にか物件情報がこなくなってしまう。これは当然のことなのだが、案外多くの人が陥ってしまうミスなのだ。
 不動産業者に行くと、特定の担当者がつく。その担当者は、何人かの顧客を抱えるうちの一人としてあなたを受け入れる。もちろん何人もいるうちの一人だからと軽視することはないが、より契約に前向きな人に積極的になるのは当然なことだ。自分が流した情報に対して反応があれば探しがいもあるが、無反応であれば、「あまり真剣ではないのだろう」と思われても仕方がない。そのため、紹介される物件数はみるみる減少し、そのうちFAXが来ることがなくなるのだ。そうならないためにも、与えられた情報に対する反応はこまめに伝え、信頼関係を築くようにする。


資金は正確に把握してお


 物件を探す際に、最も重視すべきことは、資金にかかわる部分だ。コストを気にしなくてよいのであれば、物件探しに苦労はない。許されたコストの範囲で、よりよい条件のものを探そうとするから大変なのだ。
 ところが、このコストの部分が不明瞭なまま物件探しをスタートする業者泣かせの人が少なくない。主な理由は、「自己資金はないけど、これくらいは借りられると思う」という安易な予測によるものだ。確かに、国民生活金融公庫のパンフレットを見れば、担保や保証人がなくても、数千万円の借り入れができると書かれている。これを目にしてしまうと、数百万円の借り入れは簡単なように思ってしまうのだが、実際にはさまざまな条件を満たしている必要があり、簡単に借りられるものではない。最近は、雑誌やネットで、いろいろな情報が流されている。自分に似た条件の人が、どれくらいの金額を借り入れたのかをよく調べ、安易な希望で動き出さないようにしたい。
 また、「スポンサーが出してくれることになっている」というあやふやなものも多い。もちろん本当に確約されているのであれば問題ないのだが、実際には口約束でしかないことや、金額が明確でないことが多い。いざ契約という段階で、「そこまでは出せない」となると、物件探しがスタートに戻ってしまう。ムダな時間を過ごさないためにも、コストにかかわる部分は明確にした上で物件探しをスタートしよう。


■コラム
思わぬ誤算に泣くに泣けない

 長年勤めたサラリーマンを辞め、その退職金を元に開業を考えた人がいた。綿密に資金計画をたて、物件探しを始めた。たくさんの物件を見て周り、イメージを固め、やっと見つけた物件に手付け金を払った。いよいよ本格始動というところまできて、急に「先の契約はなかったことに……」と言い出した。話を聞くと、「退職金が少なかった」というのだ。
 彼は会社に置かれた就業規則を確認し、退職金の額を自分で計算していた。ところが、そこにはからくりがあり、自己都合退社については、その計算額の6割しか支給されないと書き添えられていた。彼はそれに気づいていなかったのだ。もともとキチンとした計画の基に行動することをポリシーとした人だったために、この誤算に自信をなくし、独立計画は大きくずれ込んでしまった。退職金額を事前に明らかにするのは簡単なことではないのかもしれないが、新たな出発のために、誤算はないようにしたい。

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