「路地裏だから実現できる、ローコストな安定経営」 (第5回)

居心地のいい空間を目指す


 ここ数年、プライベート重視、好みの多様化により、外食に対する期待が大きく進化している。さらに、今年からはじまる団塊世代の退職。彼らは「会社帰りに仲間と一杯……」と夜のアルコール市場を支えてきた。これを牽引してきた彼らが第一線を退くこと で、若い世代を中心とした、仕事仲間との“飲みニケーション”離れに拍車がかかることは間違いないだろう。
 さらに、飲食店を利用する機会が増え、生活の一部として受け入れる人々は、店を選ぶ目も厳しくなっている。プライベートの充実のために利用する外食は、気に入らない部分があれば、二度とその店は利用せず、次の店を探す。これが今時の常識となっている。
 ところがこれは、新しい感覚も生んでいる。利用しやすい場所にあること以上に、自分が気に入る店かどうかが重視され、これがクリアできれば店の場所に関係なくお客は何度も足を運ぶ。“隠れ家バー”がもてはやされるのはこのためだ。多種多様な価値観を持った人がたくさん集まる大容量な空間より、同じものを求める仲間が集うプライベートスペースに自分の居場所を求めるのだ。これをきちんと理解していれば、立地の悪さはあまり問題にはならない。
 今回は、こういった意外な場所にある物件の魅力について考えてみたい。

保証金・賃料はできるだけ安く


 物件を探すときに一番のキーになるのは物件取得費となる。「コストを気にしなくていいのであれば、いくらでもいい物件は見つけられる」と言われる。多くの人が物件探しに苦労するのは、自分が準備できた資金の中で、できるだけ高いコストパフォーマンスを実現できる物件を探そうとするからだ。
繁華街や駅前の好立地では、保証金が驚くほど高額だ。保証金は、何の利益も生まないコストであり、単純に開業資金を減らすことになる。そのため、これは可能な限り低く抑えたい。
 さらに、こういった物件は、当然ながら月々の賃料も高い。安定した店舗経営を実現するためには、できるだけ固定費を抑えておかなければならない。
 「ちょっと家賃が高いけど、気に入ったから、まぁ大丈夫だろう」と安易な考えは、毎月自分の首を絞めることになるので、注意したい。

説明しやすい場所を探す


 路地裏への出店で成功している渋谷区の居酒屋オーナーの話を紹介したい。彼は、元々音楽関係の仕事をしていたが、一念発起して飲食店を開業した。彼の店は、駅と駅の間、住宅地の中の裏道脇にある。
 「駅からどんなに遠くても、とにかく場所の説明がしやすいところを探した」というのが、彼の物件探しの絶対条件だった。
 「自分の店作りには自信があり、一度来てくれたお客さんを常連にできると信じていました。それに、それまでの人脈やいろいろな仕掛けで、最初に足を運ばせる方法もいくつか持っていました。一方で、たくさんのお客さんにどんどん来てもらうほどではないことも分かっていました。スタッフをたくさん抱える気もなく、共同経営者と2人、それにアルバイトを1人か2人くらいの規模で考えていたのです。そうなると、いろいろと必要になる経費をできるだけ低く抑える必要がありました。物件探しをはじめてみると、シミュレーションして算出した家賃に見合う物件は、立地的に条件がよくないか、建物が古い、汚いなどの問題があるところばかりでした。お客さんに気持ちよく過ごしてもらうために、建物の悪条件は問題外。そのため、立地の悪いところを選ぶしかありませんでした。そこでポイントにしたのは、場所を説明しやすいこと。『店に行きたいんだけど』と電話ももらったとき、『○○を目印に1本目の角を右に入ってまっすぐ』といえば、迷わず来られるようにしたかったんです」
 彼の店は、オープン当初は苦戦したが、徐々にクチコミでお客が増え、まもなく2号店をオープンしようとしている。もちろん今回も路地裏だ。

アピールのしやすさを考える


 路地裏の物件を探す際に注意したいのは、店の存在をアピールできるかどうかだ。もちろん、看板も出さず、ひっそりと常連客だけを相手にする店舗もあるが、最初からそんな店を持つのはあまりにもリスクが多い。まずは、できるだけ多くのお客に利用してもらうためにも、大通りに看板を出せるなど、まず店があることをわかってもらえるようなところを選びたい。そのためにも、通りから2回曲がるところは不利と言われる。奥まったところにある店舗は、説明もしにくく、「通りかかって見つけた」ということも期待できない。単に距離ではなく、場所で選ぶのが賢明といえるだろう。
 店はオープンすることが目標ではない。開業して、長期に継続することが大切だ。先々のことを考え、『継続するための物件』を探すという発想を忘れてはならないのだ。

■コラム
究極のコストカット=自宅開業

 家賃をゼロにできる方法に、自宅開業がある。多くの人は、「分かっているけど、実際にはムリ」。そう思うことだろう。ところが自宅での開業は、店舗経営の最大のコストである家賃がないため、たくさんのお客に利用してもらわなくても経営が成り立つ。たとえば、ラーメン屋で客単価が800円とすれば、家賃20万円は250人分の売り上げになる。さらに、原価が30%と考えると357人分だ。この人数は決して少なくないことは一目瞭然だろう。
 さらに、契約時の保証金や礼金もない。自宅の状況にもよるが、改装も一から店を作るのに比べ安くすむケースが多い。また、通常は一人で運営し、忙しい時間だけ家族の手を借りることもできる。他店舗展開をもくろんでいるなら別だが、自分サイズでの開業を目標にしているのなら、自宅開業をひとつの候補にするのも悪くない選択だ。

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