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「家賃は交渉するものと心得る」 (第7回)

予算内でも一度は交渉


 物件探しの難しさは、「広さや立地条件」と「コスト」のバランスにある。希望の条件を満たす物件は、大抵予算をオーバーしている。

仮に、立地などの条件はまったく気にせず、単純に格安物件を探すのなら、時間をかけずに物件を見つけることができるだろう。
ただし、そこは開業して成功する可能性が低いのは言うまでもない。

 では、「とても気に入ったが予算に合わない」という場合はあきらめるしかないのだろうか?

 もちろん、その差が大きい時は他の物件を探すしかないだろう。
しかしその差が少ないのであれば、交渉という選択肢が出てくる。
自分の予算内におさまるよう賃料や保証金を値下げしてもらうのだ。

 いや、仮に予算内の物件が見つかったとしても、「ダメ元」で家賃下げを依頼してみる。
少しでもコストカットができれば、安定経営に一歩近づくことになる。
つまり、家賃は交渉して少しでも安くしてもらうものと思ったほうがよい。


周辺の相場を調べることから


 家賃交渉をする際、やみくもに「予算がないから安くしてほしい」といっても、どうにかなるものではない。
不動産業者の心象を悪くすれば、交渉はおろか、他の物件探しまで難しくなってしまう。
そうならないためには、ある程度の下調べと不動産業者を見方にする姿勢が重要となる。

 まずは、近隣の相場観を掴むことから始める。
その地域の各物件の賃料や保証金を調べるのだ。
近隣の物件に比べ高ければ、まわりの物件と同じくらいまで下げてもらえる可能性が高い。
もちろん、物件そのものの築年数やその他の条件もあるので、必ずしも相場通りが妥当とはいえないが、ひとつの切り口であることは確かだ。

 この比較をする際には、坪単価で考える。
それぞれの家賃を物件の坪数で割るのだが、こうすることで物件の大きさが違うものでも比較しやすい。

また、あくまでもお願いするというスタンスを崩さないのも重要なポイントとなる。
物件契約は、成立すれば、そのまま関係が長く続く。
最初に無理難題を押し付けた強引な人と思われるのは決してプラスにならない。
「この人のために……」と前向きに取り組んでもらえるようにしたい。

 さらに、不動産業者の立場を理解しておきたい。
不動産業者は、開業希望者と物件オーナーの仲介をすることで利益を得ている。
つまり、家賃交渉の窓口として、開業希望者の要望を物件オーナーに伝え、指示を仰ぐ役割を果たす。家賃を下げる決定をするのは、あくまでも物件オーナーなのだ。

 そして不動産業者は、開業希望者との関係より、物件オーナーとの関係の方が蜜であり、期間が長いことが多い。
つまり、一方的に無理なことを言って、物件オーナーに敬遠されることは避けたいのだ。
これを理解して交渉にあたればよい結果を得やすくなるだろう。

 家賃は、毎月発生するコスト。
月に2万円の差は、年間で考えれば24万円になる。
これは決して小さくない額だ。さらに、家賃を元に算出される保証金や仲介手数料も一緒に安くなり、イニシャルコストも下げることができる。


居抜きは造作の値下げ交渉も


 さらに、居抜き物件の場合は、店舗造作の譲渡金を下げることも考える。
 造作は、前の持ち主が設定するものであり、明確な基準があるわけではない。
特に、経営がうまくいかず、開業からあまり期間がたたない状態でのクローズの場合、この価格は高めに設定されていることが多い。
しかし、できるだけ早く現金化したいのも心情だ。
これも交渉の余地が十分にあるといえる。
自分の目でひとつひとつを確認しながら値付けをし、自分なりの見積りをたて、交渉にそなえる。

 購入当時の価格を基準にするのではなく、「これから何年使えるか?」「使用状況はどうか?」「修理歴はあるか?」など、これからを見極める必要がある。
買い取ってみたものの、すぐに故障して使えなくなったという場合、それを廃棄して新しい什器を購入することになる。
什器をはずすにも廃棄するにも費用がかかるため、それだけコスト高になる。
造作は言い方を変えれば、中古品の購入であることを理解し、万が一そうなっても後悔しない設定が理想だろう。


店舗コンセプトを見直す


 また、気に入った物件が見つかったが、家賃交渉ができなかったということもあるだろう。
そのような場合は、その物件をあきらめるのが無難だが、思い切って店舗のコンセプトを見直し、物件にあった売り上げを上げられるように、ブラッシュアップするという選択肢もある。

 売り上げは、単価×客数。つまり、単価をあげれば同じ客数でも売り上げは高くなる。
何の策もなく単価を上げるのは得策ではないが、コンセプトを磨きなおし、商品のレベルを高め、付加価値をつければ、単価が高くても集客を狙える。

 家賃交渉に限らないが、何かを交渉するためには、多くの人を見方につける必要がある。
不動産業者の担当者や物件オーナーはもちろん、その後の成功を考えれば、取引先や近隣店舗の店主まで巻き込む必要があるだろう。
物件探しは、その後続く長い道のりの入り口に過ぎない。
人の輪を広げ、有効な人脈を作るように心がけたい。


■コラム
めぐりめぐって最良物件

 店舗を長くやっていると、近隣の店舗や同業者との間に独自のネットワークができていく。
ある開業希望者が物件探しに難航している話を中華料理屋のマスターに愚痴った。
それを聞いたマスターが、「それじゃぁ、隣の店に行ってみな。来年引退するらしいから」と言った。
実際にたずねてみると、確かに引退の予定だと言う。
ただ、店が古く、手を入れるのにコストがかかりそうだった。
それを伝えると、「隣の駅でよかったら」と同時期に引退する店主を紹介してくれた。
ここにも足を運ぶと純和風建築の古い料亭で、十分に手入れが行き届いた味のある雰囲気の物件だった。

 結局、その物件で和風カフェを開いたのだが、その話を聞きつけた前の店の常連客が、「これからはこの店をひいきにするよ」と来るようになった。
夜は若者が、昼はセレブな老人たちが集う店になり、10年経つ今も人気の店となっている。
人の輪がつないだサクセスストーリー。
きっかけは意外に近くにあるものなのだ。

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