不動産屋に行く前に、イメージを具体化し、自信をつける (第17回)

夢を現実に近づける


飲食店は誰にとっても身近な存在で、アルバイトも含めれば、実に多くの人がその仕事を経験している。そして、「いつか自分の店を持ちたい」と思っている人も実に多い。でもほとんどの人にとってそれは夢に終わってしまいがち。「いつか実現できたらいいなぁ」と思いつつ、実際に行動に移せる人は少ない。
でもそれを身近な目標ととらえ、開業のための準備をはじめたのなら、夢見てきたイメージを具体化し、実現に向けて動き出さなければならない。もちろん、その作業は多岐にわたるが、中でも重要なことのひとつに物件探しが挙げられる。どんな店を作るにしても、それを形にする物件がなければ、実現することはできないのだ。
ところが初めて開業を考える人で、物件探しの経験がある人はほんのひと握り。多くは、まったくの手探り状態からスタートすることになる。
では、物件探しをするために、まず何からはじめればいいのだろうか。今回は、不動産屋に行く前にやるべきポイントを整理しよう。


お客の支持を得られるかが鍵


物件を探すには、不動産屋の手を借りる。それは誰もが知っていることだ。不動産屋は駅前や商店街、住宅地など、身近なところに多くある。中には物件を探すには、とにかく不動産屋に行き、物件を見て回るのが手っ取り早いと思う人もいるが、店舗探しにおいては、行き当たりばったりではうまくいかない。
中には、「これまで何度も引っ越しをしているから、不動産屋には慣れている」という人もいるが、住宅探しとはまったく違う基準を必要とするので注意が必要だ。
たとえば、住宅を探すには、支払可能な家賃と広さ(部屋数)、駅からの距離、築年数などの条件が挙げられる。ところが、実際には思い通りの物件は見当たらないため、何らかの妥協をすることとなる。駅から遠い物件にするとか、古い物件にするなどだ。そしてこの妥協は、「自分(や家族)が我慢すればいい」こととなる。
ところが店舗となると、話は違う。駅から遠い、古いなどの悪条件を我慢するのはオーナーではなくお客だ。当然ながら、そんな我慢をしてまで行きたいと思う店はそう簡単にできない。つまり、悪条件を抱えた店は客数が伸びず、経営が立ち行かないことになる。
では逆に、高い賃料を払ってでも、好条件の物件を選ぶ方がいいか?というとそうもいかない。賃料などの経費が上がれば、それをまかなうだけの売上が必要となる。最初から順調に売れる保証はないから、それだけ経営リスクが高くなってしまう。最悪のケースでは、経営を断念しなければならないこともあるだろう。
店舗は、そこにお客を呼び、料理とサービスを提供し、対価をもらう経済活動の場となる。自分がどう思うかだけでなく、いかに多くのお客に支持される店作りをするかが重要になる。その基盤となる物件選びでは、妥協点も広い視野で判断する必要があるのだ。


あやふやな回答が誤解を生む


さてもうひとつ、具体的なイメージがない状態で不動産屋に行き、失敗するケースをあげたい。
不動産屋に行くと、希望の条件や予算などを聞かれる。この作業は、開業希望者と不動産屋が二人三脚で物件を探すための共通認識作りで、とても重要なステップだ。ところがココで具体的なイメージがなければ、明快な回答ができない。中には、「まだ決めていない」と言い出しづらく、適当なことを言ったり、不動産屋の言うことを鵜呑みにしてしまうこともある。
もちろん不動産屋に悪気はない。あやふやな答えが誤解を生み、条件の幅が広がり、優先順位に狂いが生じてしまうのだ。
また不動産屋は、たくさんの物件を見て回るのではなく、今ある物件で契約してくれた方が時間もかからずありがたいと思っている。質問に対する明快な答えがなければ「真剣に探しているのではないのかも」と思われ、相手も真剣にはなってくれないのだ。
店舗物件は、そう簡単に見つかるものではない。少しでも好条件の物件を、予算内で見つけようと思うから、みな時間がかかっている。焦らずじっくり腰を据えて、冷静に判断するようにしたい。そして、誤解を生まないように、自分の意見はきちんと伝える。後で「しまった…」と思っても、すべては自分の責任となるのだ。そのためにも、まずは自分のイメージを具体化し、数字を伴った計画に高め、自信を持って不動産屋の門をたたくようにしてもらいたい。


【コラム】

夢を叶えるのは楽じゃない。


ある男性は、人前で自分の意見を言うことができず、とりあえずうなずいてしまうクセがあった。そんな性格を変え、自分に正直に生きたいと独立することを決めたのだが、そういう人に限って、不動産屋で担当についたのは強気で早口な女性。遠慮がちに条件を伝え、物件を見て回り、その日のうちに契約書を交わしてしまいそうになったが、最後の最後で「明日まで待って」といった。
翌日、不動産屋に現れたのは、その担当者にそっくりの強気な女性。
「うちの主人は、気の強い担当者の前で自分の意見が言えなかったようですが、この契約はなかったことに」と吐き捨てた。
担当者は、「でも昨日はかなり気に入っていたようですが・・・」と言ったが、まったく聞く耳を持たない。不動産屋の社長が割って入り、話を聞くと、「私が問い詰めたら、あまりいい物件ではなかった気がすると言った」という。
男性の本心はどこにあるのかは誰もわからない。実はその物件を本当に気に入っていたのかもしれないが、真実は闇の中。結局彼は、2人の女性の間で振り回され、前途多難な船出となった。彼が夢を現実にできる日はくるのだろうか。自分の意見を言えるようにならなければ、その日は遠いことだろう。


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